日本地球惑星科学連合2015年大会

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セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS29] 断層のレオロジーと地震の発生過程

2015年5月24日(日) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*谷川 亘(独立行政法人海洋研究開発機構高知コア研究所)、飯沼 卓史(東北大学災害科学国際研究所)、三井 雄太(静岡大学大学院理学研究科地球科学専攻)、向吉 秀樹(島根大学大学院総合理工学研究科地球資源環境学領域)

18:15 〜 19:30

[SSS29-P11] 震源及びメカニズム解分布に基づいた本震断層と余震との関係

*行竹 洋平1飯尾 能久2 (1.神奈川県温泉地学研究所、2.京都大学防災研究所)

キーワード:余震, 震源分布, メカニズム解, 本震断層

1.はじめに
 大地震発生後の余震の発生過程を理解するために、余震が本震時に破壊された断層(本震断層)のすべり残しの破壊であるのか、あるいはその周辺に存在する破砕帯の破壊なのかを明らかにする必要がある.Liu et al. (2003)では、1992年Landers地震の余震位置とメカニズム解から、本震断層上で発生した余震は5%程度にすぎないと推定している.しかし、この研究で用いた余震の震源決定精度が最大で1kmに及ぶため、より高精度な震源位置やメカニズム解データに基づいて議論することが不可欠である.そこで本研究では、2000年鳥取県西部地震(Mw6.8)域に展開された稠密地震観測データから余震の震源位置およびメカニズム解を推定し、上記の問題について解明を試みた.
 2000年鳥取県西部地震域では、本震発生後1週間から約2か月間にわたり、59点の稠密地震観測が実施された.行竹ほか(2005)では、本震断層を1枚の断層面に近似し、稠密地震観測から推定された震源位置及びメカニズム解をもとに、多くの余震は本震断層の周辺で発生したことを推定した.しかし、本震断層は複数のセグメントに分かれていることから(例えば、Fukuyama et al., 2003)、厳密に議論するにはより複雑な断層形状を考慮した解析が必要となる.

3.震源及びメカニズム解決定
 本研究では稠密余震観測により取得された地震波形データを使用し、2000年10月15日から11月31日までに発生した、約4,700イベントについて震源決定を試みた.最初に、Shibutani et al., (2005)により決定された一次元速度構造と観測点補正値を用い、hypmh法(Hirata and Matsu'ura, 1987)によって初期震源位置を求めた.次に、Double Difference法(Waldhauser and Ellsworth, 2000)を用いて、これらの震源の再決定を行った.各イベントの走時差を相互相関処理並びに手動検測走時から求め、約4,100イベントの余震の震源位置を得ることができた.このうち90%の地震について相対誤差が水平方向に0.08km、深さ方向に0.12km以内に求まった.
 メカニズム解については、Imanishi et al., (2011)の手法を参考に、P波初動極性に加えてP波及びSH波の振幅値を用いて決定した.その結果、震源再決定された余震の8割にあたる、約3,300イベントの余震のメカニズム解について節面方向の精度が15度以内に決定できた.

4.本震断層の推定
鳥取県西部地震では明瞭な地表断層があらわれなかったため(上田ほか、2002)、余震分布に基づき本震断層を推定した.本震時に主要な破壊が生じた北緯35.35度より南側(例えば、Iwata and Sekiguchi, 2002)の領域を解析対象とした.この領域内でメカニズム解の節面方向が類似しているいくつかの地震群(クラスター)を見ることができ、余震及びメカニズム解分布をもとに5つのクラスターを抽出した.それぞれのクラスターでの余震の震源位置から、主成分分析を用いて(例えば、Shearer et al., 2003)、5つの最適な断層面の方向と位置を推定した.

5.結果
本震震源周辺及び余震域南部では、最適な断層面はほぼ鉛直で、その走向は本震初動解の節面に近いN142oE及びCMT解の節面に近いN149oE方向にそれぞれ推定された.一方、本震震源の北側では、走向がN80oEの共役断層系に対応する断層面が推定された.最適な断層面と余震位置との距離を調べると、すべてのクラスターにおいて余震は最適な断層面からおよそ1.2kmの幅を持って分布している。また、この分布幅は本震時に大きく滑った余震域南部で拡がる傾向が見られた.次に、最適な断層面の走向・傾斜からリファレンスとなるメカニズム解を求め、余震メカニズム解との類似性についてKagan角(Kagan, 1991)を用いて評価した.リファレンス解のすべり方向は、本震の滑り方向を考慮し左横ずれ(共役断層は右横ずれ)を仮定した.その結果、メカニズム解誤差の上限である15度を上まわるKagan角を持つ余震は全体の90%をしめ、Kagan角の分布の幅は最大で100度に及ぶことが分かった.以上の結果は、余震の多くは本震時に破壊された断層面上ではなく、その周辺の破砕帯で起きていることを示している.またメカニズム解のばらつきは、破砕帯内の複雑な構造を反映していると考えられる.

謝辞
本研究では、鳥取県西部地震合同稠密余震観測により取得された地震波形データを使用させて頂きました.F. Waldhauser博士からhypoDDプログラムコードを提供して頂きました.