日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

インターナショナルセッション(口頭発表)

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS05] Mars

2015年5月28日(木) 09:00 〜 10:45 A03 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*佐藤 毅彦(宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究本部)、石渡 正樹(北海道大学大学院理学院宇宙理学専攻)、佐々木 晶(大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻)、高橋 芳幸(神戸大学大学院理学研究科)、松岡 彩子(宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 太陽系科学研究系)、宮本 英昭(東京大学総合研究博物館)、座長:高橋 芳幸(神戸大学大学院理学研究科)

09:45 〜 10:00

[PPS05-06] 火星生命探査の意義と計画

*山岸 明彦1佐藤 毅彦2宮川 厚夫1吉村 義隆3本多 元4佐々木 聡5今井 栄一4臼井 寛裕6宮本 英昭7藤田 和央8 (1.東京薬科大学生命科学部、2.宇宙科学研究所、3.玉川大学農学部、4.長岡科学技術大学、5.東京工科大学、6.東京工業大学、7.東京大学、8.宇宙航空研究開発機構)

キーワード:蛍光顕微鏡, 蛍光色素, 生命の起源, 進化系統樹

近年の探査により火星の描像は大きく変化し, 現在も動的な火星という描像が誕生した.そして火星で液体の水の存在が確実視される場所として, リカリング・スロープ・リニア(RSL)と呼ばれる場所がある.本計画は, 火星史における現在も動的な火星という描像を検証し, 特に現存する生命の最も可能性の高い場所で生命の存否を検証する.
1970年代のバイキング探査では, 3つの生命代謝反応を測定する実験を行った.3番目の実験では,生命が存在するかもしれない反応が検出された(Levin and Straat 1977).しかし, 有機物が検出限界以下であったため, 火星表面には生命は存在しないと結論された.2000年代に入って, バイキングの有機物分析装置の再検討が進んだ.バイキングの有機物分析装置は, 1g土壌あたり106~107細胞の検出感度しか無い事が明らかとなった(Glavin, et al.2001; Navarro-Gonzalez, 2006).これは地球上であっても, 深海底, アタカマ砂漠, 南極砂漠等の微生物濃度が極めて低い場所(1g土壌あたり104細胞)では, 生命を検出できない感度である.
MSL: CuriosityがGale craterで検出した有機物は, 火星由来かどうかは分からないが, 検出されたCH3Clの量は1g土壌あたり4μgであった(Ming et al.,2014).これを総有機炭素量で有ると考え, アタカマ砂漠で検出された総有機炭素量と土壌中微生物量との比率(Connon et al.2007)を考えると, 1g土壌あたり4×104細胞の微生物がいる事になる.本計画では最も水の存在の確実視される場所をターゲットとしている.ゲールクレータで検出されたCH3Clが細胞由来であれば, 確実に検出できる感度で探査を行う.
 生命が発見された場合, 火星生命を対象として分析が行われ, 新(真)生物学が誕生する.
第二段階の生命探査では遺伝物質DNAとアミノ酸の分析を行う。もし、火星生命がDNAを持たないあるいは、持っていてもAGCTを用いていないことがわかれば、地球とは独立した生命であることがわかる。同じDNA(AGCT)を用いていることが明らかとなった場合には、第三段階の生命探査では遺伝子の系統解析を行う。遺伝子を調べて地球生物との類似性が無ければ、独立に誕生したDNA生物であることがわかる。類似性がある場合には、系統関係をしらべ、地球だけで生命が誕生し地球から火星へ移動したのか,逆に火星だけで生命が誕生し火星から地球に生命が移動した可能性があるのかを系統解析で判別することが可能である
仮に火星に生命が検出されなかった場合,生命誕生に多くの課題を与える.A.もし火星と地球の双方で生命が誕生したのであれば, 地球でのみ生命を存続させた条件は何なのか.B.生命が地球でだけ誕生したのであれば, 火星で生命が誕生し得なかった決定的条件は何なのか.C.火星でのみ生命が誕生したので有れば, 火星で生命が絶滅した理由はなにか.D.地球と火星以外から生命が飛来したのであれば, 火星で生命が定着しえなった要因は何なのか.いずれの場合にも, 生命誕生モデルの大幅な再検討が必要になる. 火星で生命が誕生しなかったにせよ, 地球から生命が移動する可能性が十分あることを考えるならば, 火星に移動した生命は今日までに絶滅したことになる.火星にはどのような条件が生命存続に欠けていたのか.
火星に置ける前生命環境探査は惑星科学会の工程表の中に含まれ, 生命探査はアストロバイオロジーネットワークと宇宙生物学会の工程表に位置づけられている.
参考文献
1.Levin G. V. and Straat., P. A. 1977, J. Geophys. Res., 82, 4663-4667.
2.Glavin, D. P. et al. 2001, Earth Planet Sci. Lett. 185, 1-5.
3.Nabarro-Gonzalez, R. et al. 2006, Proc. Natl. Acad. Sci. 103, 16089- 16094.
4.Ming, D. W. et al. 2014, Science, 343, DOI:10.1126/science.1245267
5.Connon, S. A et al. 2007, J. Geophys. Res. 112, G04S17, doi:10.1029/ 2006JG000311