日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

インターナショナルセッション(ポスター発表)

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS06] Landslides and related phenomena

2015年5月27日(水) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*千木良 雅弘(京都大学防災研究所)、王 功輝(京都大学防災研究所)、今泉 文寿(静岡大学農学部)

18:15 〜 19:30

[HDS06-P03] 付加体中の低角スラスト沿いに発生した豪雨による深層崩壊について

*荒井 紀之1千木良 雅弘1 (1.京都大学防災研究所)

キーワード:深層崩壊, 付加体, スラスト

近年、世界各地で地球温暖化に関係すると考えられる異常気象が発生している。台風の巨大化により、これまでの観測記録を塗り替える豪雨が多発するようになった。それとともに、2006年にフィリピンレイテ島で発生した山体崩壊、台湾では2009年に台風モラコットの豪雨による小林村の斜面災害など、豪雨に伴う大規模な深層崩壊が多発している。しかしながら、それらの発生場所予測手法は未だに確立されておらず、また、その地質構造的原因も必ずしも明らかになっていない。
 日本の西南日本外帯には、広く白亜紀から新第三紀の付加体堆積物が分布している。これらの地域では、豪雨に伴う深層崩壊が多発している。紀伊半島では、2011年に台風12号の豪雨により50箇所以上の深層崩壊が発生した。そこで、著者らは、2×106mと8×106mの崩壊が発生した紀伊半島中央部の赤谷地域を中心として地質調査を行い、深層崩壊と地質特性との関係を調査してきた。
 その結果、二つの崩壊は、大規模な低角断層沿いに発生したものであることがわかった。この低角断層は、北西から北北西の29°~40°傾斜をなし、水平方向に少なくとも5km以上にわたり連続している。この断層を川原樋衝上断層と名付けることにする。この断層の最大幅は1.5mで、粘土質断層角礫中にガウジが主剪断面沿いに数条含まれている。この低角衝上断層は、厚い粘土質の破砕帯を伴い、その傾斜角が30°~40°であることから、付加体中の連続性のよい弱面を容易に構成しやすい。さらに、水理地質学的に不透水層として機能し、豪雨時に地下水流を遮水し、高間隙水圧を発生させる原因になっている可能性も高い。この低角断層は長期間の河川侵食作用により河岸に露出したもので、スラストの上盤をなす流れ盤斜面が不安定化して重力変形を起こし、豪雨を誘引として最終的な深層崩壊に至ったことが示唆される。また、低角衝上断層に加えて、赤谷の崩壊では、崩壊部の両サイドが高角断層により切断されていたことを発見した。このような高角断層は、赤谷東の崩壊でも存在している可能性がある。
 深層崩壊の発生しやすい場所を抽出し、そのランク付けを行うことは、災害を軽減する上で非常に重要である。重力変形斜面を抽出することに加え、大規模な低角断層とそれを切断する高角断層を調査することにより、より精度の高い発生場所の予測が可能となると期待される。上記の知見は、紀伊山地のみならず、西南日本外帯の付加体に共通する可能性が高い。