日本地球惑星科学連合2015年大会

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ポスター発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-PT 古生物学・古生態学

[B-PT26] 地球ゲノム学

2015年5月26日(火) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*遠藤 一佳(東京大学大学院理学系研究科)、小宮 剛(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)、大河内 直彦(海洋研究開発機構)

18:15 〜 19:30

[BPT26-P01] 白亜系双葉層群の炭化小型植物化石の抵抗性高分子分析:結合態アルキル脂質組成による植物化石の化学分類

*宮田 遊磨1沢田 健1池田 慧1中村 英人1高橋 正道2 (1.北海道大学大学院理学研究院、2.新潟大学理学部 自然環境科学科)

キーワード:化学分類, アルキル脂質, 植物化石, 白亜紀, 抵抗性高分子, 多変量解析

陸上高等植物の生体組織を構成する抵抗性高分子は微生物分解や続成作用に対して抵抗性があり、植物化石や陸上植物由来の堆積有機物の主要な成分を占めていると考えられている。また、それらの構成モノマーは植物の分類群や生育環境、器官、続成作用などによって特徴的に変化することが知られている。したがって、これらの高分子の分析を行うことで古植物学的な研究のための新たな手法の確立が期待される。しかしながら、特に中生代や古生代のような古い地質時代の堆積物においては、これらの高分子を研究した例は限られている。本研究では、化石高分子の化学分類的な特徴を評価するため、白亜紀の炭質物濃集層から産出した植物化石の分析を行った。
試料は白亜紀コニアシアンの双葉層群芦沢層から産出した炭化した小型化石を用いた。分析した小型化石はHironoia fusiformisArchaefagacea futabensisを含む被子植物の花および果実の小型化石、裸子植物の種子・シュート・材の小型化石など16試料を用い分析を行った。粉末化した試料を有機溶媒で抽出後、残渣を高温reflux抽出処理し、さらにその残渣をKOH/メタノールを用いアルカリ加水分解を行った。分解抽出された成分をGC/MSで分析・定量した。また、SPSSを用い多変量解析を行った。植物の部位や種類において似たような脂質組成をもつ化石をグループ化するため階層クラスター分析を行った。
遊離態の抽出成分としてn-アルカン、ステラン、ホパンおよび芳香族炭化水素が主に検出された。芳香族炭化水素はジテルペノイドおよびトリテルペノイドの種々の誘導体が含まれ、一般的に、これらはそれぞれ裸子植物および被子植物の化学分類マーカーとして知られている。しかしながら、裸子植物化石の抽出成分から多量のトリテルペノイドが検出された。これは遊離態の脂質が堆積物中を移動していることを示唆していると考えられ、これらの成分が化石植物の化学分類には不向きであることがわかった。一方、加水分解性成分からはC6-C28の飽和脂肪酸およびC8-C28のn-アルカノールが主として検出された。それぞれの化石試料におけるこれらのアルカリ加水分解性アルキル脂質の炭素数分布を多変量解析によって詳細に分析した。階層クラスター分析によって、化石種によるアルカリ加水分解性脂質の炭素数分布の違いがみられることが明らかとなった。すべての木質組織の化石は非木質組織の化石を含まない一つのクラスターに分類された。さらに、Juniperusを除けば、被子植物化石と裸子植物化石もそれぞれ別のクラスターに分かれ、分類群によって脂質組成に明瞭な差があることが示された。これらの結果から、エステル結合態のアルキル脂質を含む様々な脂質を網羅的に解析し、総合的に評価することで化石植物のpaleolipidomicsともいえる詳細な化学分類的情報が得られる可能性があることを指摘する。