日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS23] ジオパーク

2015年5月25日(月) 16:15 〜 18:00 101B (1F)

コンビーナ:*尾方 隆幸(琉球大学教育学部)、渡辺 真人(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、有馬 貴之(帝京大学 経済学部 観光経営学科)、平松 良浩(金沢大学理工研究域自然システム学系)、大野 希一(島原半島ジオパーク協議会)、藁谷 哲也(日本大学大学院理工学研究科)、植木 岳雪(千葉科学大学危機管理学部)、座長:藁谷 哲也(日本大学大学院理工学研究科)、有馬 貴之(帝京大学 経済学部 観光経営学科)

17:39 〜 17:42

[MIS23-P06] 新聞連載のキーワードで読み解く四国地方のジオ鉄の世界

ポスター講演3分口頭発表枠

*藤田 勝代1横山 俊治1加藤 弘徳1上野 将司1今尾 恵介1安田 匡1須賀 康正1 (1.深田研ジオ鉄普及委員会)

キーワード:ジオ鉄, 四国地方, 新聞連載, ジオ鉄の旅, キーワード

1.ジオ鉄とは
「ジオ鉄」(加藤ほか,2009)は、鉄道を利用しながら沿線に広がる自然を楽しむ旅を通して、地球の成り立ちと大地の変化に想いを馳せることである。鉄道を通じて「見る」「触れる」「感じる」ことのできる地質・地形遺産や、鉄道と深く関わる文化遺産、ルート選定の苦難のエピソードを読みときながら、沿線の見どころを「ジオポイント」として発掘している(藤田ほか,2013)。現在、深田研ジオ鉄普及委員会が主体となり鉄道を利用したジオツアーの楽しみ方の提案を続けている(http://fgi.or.jp/geo-tetsu/)。

2.新聞連載によるジオ鉄の新しいアプローチ
高知新聞社から依頼を受け『ジオ鉄(R)の旅-列車で楽しむ四国の地質と地形』のタイトルで四国地方のジオ鉄の魅力を伝えてきた。毎月第3土曜日「土曜ネーチャー」枠の連載で2013年4月から2015年3月まで計24回(第24便)で一区切りを終えた。マーケティングデータ(高知新聞社2013年1月発表)によると、同新聞の朝刊発行部数は198,350部(推定総読者数539,156人、県内占有率86.3%)とされる。今回の連載により、自然科学や鉄道へ興味の有無に関わらず、ジオ鉄が多くの人の目に触れる好機となった。ひと駅あるいは一区間を単位として身の回りにある風景を「ジオ鉄」のフィルターを通して語るスタイルは、ジオ鉄の新しいアプローチとなった。

3.「ジオ鉄(R)の旅」新聞連載紙面の構成
第1便から第24便まで、新聞の約1/2面(ほぼA3サイズ)に、主題・副題・本文、地質図と路線図、メインを飾る大きなカラー写真1枚と他の写真1~2枚、必要に応じ周辺地図、地質構造の図解等が割付された。駅周辺のジオポイントをじっくりと味わってもらうため、記事は毎回読み切りとした。執筆は深田研ジオ鉄普及委員会委員1名が交代で担当し、最終校正は同委員会内で行い内容充実と向上に努めた。毎回のテーマと対象の駅は、同委員会の意見を参考に執筆者が決定した。

4.新聞連載のキーワードで読み解くジオ鉄の世界
新聞連載で取り上げた路線は、JR土讃線、JR予土線、JR徳島線、JR予讃線、JR瀬戸大橋線、土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線、土佐くろしお鉄道中村・宿毛線、魚梁瀬森林鉄道、土佐電鉄伊野線の9路線にのぼる。地質・地形,鉄道施設はもとより、その土地に関わりの深い人物、歴史、産業、特産品などに関する多くのキーワードが挙がった(下記一例)。新聞連載にちりばめられているキーワードを読み解くと地質・地形と鉄道が融合した四国ならではのジオ鉄の世界がジオ鉄ストーリーとなって見えてくる。
≪困難な条件を克服するための鉄道施設≫ 四国地方の厳しい地質・地形条件が反映された災害や鉄道施設に関わるキーワードは多い。「阿波池田駅:中央構造線で遠回り(第5便)」「坪尻駅:秘境の駅に秘密あり(第6便)」では中央構造線の断層運動がもたらしたJR土讃線の急坂の難所を克服する鉄道技術に迫り、「大杉-土佐北川駅:廃線跡が語る防災史(第20便)」ではJR土讃線の旧路線を紹介した。「八幡浜駅:地すべり地厄介なり(第12便)」ではJR予讃線安全運行の苦労と大規模地すべり克服の今昔を追い、「繁藤駅:静寂が包む大規模崩壊地(第15便)」では1972(昭和47)年繁藤災害の記録を辿った。四国が抱える水害との戦いは「自然堤防と水害と(第14便)」「高架には理由がある(第17便)」で仁淀川と四万十川の宿命的な河川地形を取り上げた。
≪車窓を楽しむ景観≫ 「大歩危:大地と大河、攻防の果て(第2便)」では大地の躍動を感じる名勝・大歩危が舞台となったのほか、「半家:四万十川、蛇行のなぞ(第3便)」「土佐大正駅:蛇行と共に生きる(第21便)」ではJR予土線を訪ね四国山地の隆起と浸食による蛇行地形を考察している。「鬼無-讃岐府中駅:ミニ富士群を眺める(第18便)」では讃岐平野のメサ・ビュート・火山岩頸の浸食地形を楽しんだ。
≪ジオの恵み≫ 「伊予西条駅:断層崖、そして名水(第7便)」では扇状地と湧水群「うちぬき」を紹介。「安芸市の赤野駅:浜堤の丘をゆこう(第8便)」では沿岸流による浜堤の発達と後背低地の農業と暮らしに目を向けている。
≪地質研究史と鉄道史≫ 「西分駅・西分漁港:四万十帯のルーツを知る(第9便)」では四万十帯のメモリアルサイトを訪ね、「佐川駅:ナウマンが来た化石の町(第16便)」では地質学の黎明期の研究と鉄道誘致の歴史を紐解いた。
≪地名の由来≫ ボケ(歩危)、ハゲ(半家)、ドメキ(百笑)、スクモ(宿毛)、ダバ(駄馬)、キナシ(鬼無)といった興味深い珍地名の由来も解説している。