日本地球惑星科学連合2015年大会

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口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気水圏科学複合領域・一般

[A-CG30] 陸域生態系における水・炭素・窒素などの循環に関する研究

2015年5月25日(月) 09:00 〜 10:45 301B (3F)

コンビーナ:*加藤 知道(北海道大学農学研究院)、平野 高司(北海道大学大学院農学研究院)、佐藤 永(海洋研究開発機構 地球表層物質循環研究分野)、平田 竜一(独立行政法人国立環境研究所)、座長:平野 高司(北海道大学大学院農学研究院)

09:00 〜 09:15

[ACG30-01] エネルギー収支の比較観測に基づく都市化に伴う地域的昇温量の定量化

*安藤 智也1植山 雅仁1小杉 緑子2 (1.大阪府立大学大学院生命科学研究科、2.京都大学大学院農学研究科)

自然生態系が都市などの人工被覆に変化することは、地域的昇温をもたらす。都市域ではヒートアイランド現象が重要な環境問題となっているが、その詳細なメカニズムは十分に明らかになっていない。本研究では、都市と森林におけるエネルギー収支の比較解析から、都市の表面温度が森林と比べて上昇する要因とその寄与を定量化し、自然生態系を都市に改変した場合の地域的気候への影響を評価した。
都市サイトでの観測は堺市を対象とし、堺市役所高層館屋上で、顕熱フラックス、潜熱フラックス、微気象を測定した。堺市の地中熱流量を、都市の土地被覆率を考慮してObjective Hysteresis Modelにより推定した。森林サイトの微気象データは、滋賀県の桐生水文試験地におけるヒノキ植林地のデータを用いた。森林が都市化された場合の地表面のアルベド、空気力学的抵抗、ボーエン比、地中熱流量の変化が寄与する表面温度の変化量を、放射収支式と熱収支式を連立させて算出した。
日中では、夏季 (6~8月)と冬季 (1、2、12月)で都市の表面温度は森林より5.5 K、3.8 K高かった。それに対して空気力学的抵抗の変化に起因した昇温は夏季で4.4 K、冬季で3.7 Kと、4つの要素の中で最も大きかった。都市は建物が密集することで地表面の粗度が低下し、熱が上空に輸送されにくく、森林と比べて地上付近に熱が溜まりやすいと考えられる。そのことが日中の都市表面温度が森林と比べて上昇する最も大きな要因であることが明らかとなった。夜間では、夏季と冬季でそれぞれ都市の表面温度は森林より1.9 K、2.5 K高かった。この夜間の昇温に対して地中熱流量の変化に起因した昇温は夏季で4.2 K、冬季で5.2 Kと、4つの要素の中で最も大きかった。都市は建物や舗装された道路などの存在により、日中受け取った熱を貯めこむ性質がある。日中に貯熱された熱が夜間に放熱されることは、夜間の昇温に最も大きく寄与することが明らかとなった。正味の昇温量は日中、夜間ともにバルクモデルにより推定された昇温量よりも小さかった。これは、各放射量やフラックスのもつ不確実性や、都市域の人工排熱の影響を考慮していないことなどが原因と考えられる。