12:30 〜 12:45
[SCG57-23] 三重県中央構造線沿いのカタクレーサイト化に伴う 流体を介した元素移動
キーワード:中央構造線, 物質移動, カタクレーサイト, アイソコン図, 溶解沈殿反応, 反応軟化
断層帯を構成する脆性断層岩(カタクレーサイト)中では岩石内に流体が流れ,流体を介して溶解・沈殿反応が起き,岩石の軟化・硬化が引き起こされると考えられている.本研究は,産総研の松阪飯高観測点で得られた深度473.9 mで中央構造線を貫通するボーリングコア試料に見られるカタクレーサイトについて,断層帯における流体を介した元素移動を明らかにした.
三重県の中央構造線においては,上盤の領家帯構成岩石中にマイロナイトとカタクレーサイトが発達している.本研究では得られたボーリングコアのうち,トーナライトを原岩とカタクレーサイト試料(深度439-473 m)と未破砕な試料(深度87 m・88 m・317 m・358 m)を研究対象とした.
偏光顕微鏡下での微小剪断割れ目密度に基づき,試料のカタクレーサイト化の程度を4段階,「未破砕岩」,「弱破砕岩」,「中破砕岩」,「強破砕岩」に分類した.蛍光X線分析による全岩化学組成結果に対してアイソコン法(Grant, 1986)を使用し,質量変化と元素移動を明らかにした.また,多変量解析の主成分分析を使用して,分散が最大となるように新たな指標を設定することで,元素の挙動の原因を明らかにした.さらにX線回折法結果に対してRockJock(Eberl, D.D., 2003)を使用して鉱物モード組成を明らかにし,破砕の進展に伴う鉱物組み合わせの変化を詳細に明らかにしたほか,鏡下観察では同定できない微細粒部について,エネルギー分散型X線分析により鉱物同定を行った.
本研究では,Zrを不動元素とし,質量変化を(質量変化) = [(1/S)-1] × 100として見積もった.Sはアイソコン図の原点と不動である Zrのプロットを結んだ直線の傾きである.密度の変化がないと仮定したとき,質量増減は体積増減と一致する.アイソコン法による解析に基づくと,「未破砕岩と弱破砕岩」,「弱破砕岩と中破砕岩」,「弱破砕岩と強破砕岩」の組み合わせのそれぞれについて, 質量増加は21%・33%・52%である.SiO2・Na2O・K2Oは同じような挙動を示し,未破砕岩から弱破砕岩では増加,弱破砕岩から中破砕岩・強破砕岩ではほぼ一定であった.SiO2の増加は割れ目への石英の沈殿による石英脈の形成,K2Oの増加は斜長石とカリ長石の白雲母化により引き起こされたと考えられる.また,斜長石はアルバイト成分が主であることから,Na2Oの増加は,斜長石についてオリゴクレースのアルバイト化によるものであると考えられる.TiO2・FeO*・MnO・MgO・CaOに関しては主に同じ挙動を示し,未破砕岩から弱破砕岩では減少,弱破砕岩から中破砕岩・強破砕岩では増加した.また,LOI・Al2O3は破砕度に関わらず一方的に増加した.CaOの増加は濁沸石・ぶどう石,FeO*の増加は硫化鉄・緑泥石,MgO・MnOの増加は緑泥石,TiO2の増加はスフェーンの形成によるものであると考えられる.さらに,Al2O3の増加は緑泥石・白雲母・濁沸石の形成, LOIの増加は白雲母・緑泥石の形成によるものであると考えられる.中破砕岩・強破砕岩になると摩擦係数の低い雲母・粘土鉱物(白雲母・緑泥石)や軟らかい鉱物である方解石が大量に形成している.したがって,中・強破砕岩中では,軟らかい鉱物の形成により,岩石が著しく軟化したことが推定される.
三重県の中央構造線においては,上盤の領家帯構成岩石中にマイロナイトとカタクレーサイトが発達している.本研究では得られたボーリングコアのうち,トーナライトを原岩とカタクレーサイト試料(深度439-473 m)と未破砕な試料(深度87 m・88 m・317 m・358 m)を研究対象とした.
偏光顕微鏡下での微小剪断割れ目密度に基づき,試料のカタクレーサイト化の程度を4段階,「未破砕岩」,「弱破砕岩」,「中破砕岩」,「強破砕岩」に分類した.蛍光X線分析による全岩化学組成結果に対してアイソコン法(Grant, 1986)を使用し,質量変化と元素移動を明らかにした.また,多変量解析の主成分分析を使用して,分散が最大となるように新たな指標を設定することで,元素の挙動の原因を明らかにした.さらにX線回折法結果に対してRockJock(Eberl, D.D., 2003)を使用して鉱物モード組成を明らかにし,破砕の進展に伴う鉱物組み合わせの変化を詳細に明らかにしたほか,鏡下観察では同定できない微細粒部について,エネルギー分散型X線分析により鉱物同定を行った.
本研究では,Zrを不動元素とし,質量変化を(質量変化) = [(1/S)-1] × 100として見積もった.Sはアイソコン図の原点と不動である Zrのプロットを結んだ直線の傾きである.密度の変化がないと仮定したとき,質量増減は体積増減と一致する.アイソコン法による解析に基づくと,「未破砕岩と弱破砕岩」,「弱破砕岩と中破砕岩」,「弱破砕岩と強破砕岩」の組み合わせのそれぞれについて, 質量増加は21%・33%・52%である.SiO2・Na2O・K2Oは同じような挙動を示し,未破砕岩から弱破砕岩では増加,弱破砕岩から中破砕岩・強破砕岩ではほぼ一定であった.SiO2の増加は割れ目への石英の沈殿による石英脈の形成,K2Oの増加は斜長石とカリ長石の白雲母化により引き起こされたと考えられる.また,斜長石はアルバイト成分が主であることから,Na2Oの増加は,斜長石についてオリゴクレースのアルバイト化によるものであると考えられる.TiO2・FeO*・MnO・MgO・CaOに関しては主に同じ挙動を示し,未破砕岩から弱破砕岩では減少,弱破砕岩から中破砕岩・強破砕岩では増加した.また,LOI・Al2O3は破砕度に関わらず一方的に増加した.CaOの増加は濁沸石・ぶどう石,FeO*の増加は硫化鉄・緑泥石,MgO・MnOの増加は緑泥石,TiO2の増加はスフェーンの形成によるものであると考えられる.さらに,Al2O3の増加は緑泥石・白雲母・濁沸石の形成, LOIの増加は白雲母・緑泥石の形成によるものであると考えられる.中破砕岩・強破砕岩になると摩擦係数の低い雲母・粘土鉱物(白雲母・緑泥石)や軟らかい鉱物である方解石が大量に形成している.したがって,中・強破砕岩中では,軟らかい鉱物の形成により,岩石が著しく軟化したことが推定される.