15:54 〜 15:57
[SIT04-P04] Griggs型高温高圧変形試験機の応力測定値の較正
ポスター講演3分口頭発表枠
キーワード:レオロジー, 岩石変形実験, 固体圧変形試験機
1. はじめに
岩石のレオロジー特性を定量的に明らかにするためには,地球内部に相当する温度・圧力下で変形実験を行う必要がある.岩石変形試験機には,使用する圧媒体の違いから固体圧変形試験機,油圧変形試験機,ガス圧変形試験機がある(例えば,Tullis and Tullis, 1986).油圧試験機は高温での油の変質を防ぐため,500 ℃以下に実験が制限される.ガス圧試験機は荷重計測器が圧力容器内にあるため,力学データの精度が最も高いが,国内では高圧ガスの規制法規のため封圧200 MPa以下に制限されている.固体圧試験機は柔らかい固体の圧媒体を用いているため,比較的容易で長期間安定的に高封圧(~2 GPa,下部大陸地殻~70kmに相当)を得られる.しかし,圧媒体と試料や載荷ピストンの間に生じる摩擦を主な原因として,実際の試料の強度よりも高い応力値が測定されてしまう(例えば,Tullis and Tullis, 1986).
近年,固体圧試験機とガス圧試験機の応力測定値の比較から,固体圧試験機の較正則が示されている(Holyoke and Kronenberg, 2010).この較正則によって,固体圧試験機を用いて定常領域の差応力を±30 MPaの誤差で求めることができるようになった.しかし,この較正則は定常領域に当たる歪5%における応力値を比較することで求めているため,弾性領域や遷移領域,降伏後の歪硬化や歪軟化といった挙動を再現することはできない.また,ガス圧試験機の実験結果と比較可能な低封圧(~300 MPa)の実験結果がほとんどであるため,固体圧試験機の長所である高封圧下での応力測定値の精度に関してよく分かっていない.地殻深部・最上部マントル及び沈み込み帯深部を構成する岩石の詳細なレオロジー特性を明らかにするために,高圧を長期間安定的に発生できる固体圧試験機において,広範な変形挙動を再現可能な較正則が必要である.本研究では,マスターカーブ法を用いて固体圧試験機における応力測定値の較正則の導出を行った.
2.軸圧縮実験とマスターカーブ作成
本研究では,東北大学所有のGriggs型固体圧変形試験機(固体塩アセンブリを採用)を用いて,ニッケルやモリブデンといった金属試料に対して軸圧縮実験を行った.実験は,様々な温度・封圧・歪速度条件下(封圧:~300 MPa,~1200 MPa,~1500 MPa.温度:600 ℃,700 ℃,800 ℃,歪速度:2×10-4 /s,2×10-5 /s,2×10-6 /s)で行った.低封圧の応力測定結果は,先行実験(Holyoke and Kronenberg, 2010)の同条件での結果とよく一致していた.しかし,高封圧の実験ほど,応力測定値が大きくなる傾向があった.今回の封圧範囲内では,定常状態における応力測定値の対数は封圧とほぼ線形の関係を持つことが示唆された.得られた力学データを嶋本(1987)において示されている粘弾性構成則に基づいて解析し,様々な温度・歪・封圧の異なる力学データを規格化したマスターカーブを得た.Holyoke and Kronenberg (2010) のガス圧試験機による力学データについても同様の解析を行い,マスターカーブを得た.
3.較正則の導出と適用
固体圧試験機とガス圧試験機の実験には同じ金属試料を用いて,温度・歪・封圧を規格化しているため,両者のマスターカーブの差はそれぞれの試験機システムを構成する様々なレオロジー要素の差異に由来するものと考えられる.二つのマスターカーブの差から固体圧試験機の応力測定値の較正則を導出した.本研究で導出された較正則を固体圧試験機によって得られた金属の応力測定値に適用したところ,ガス圧試験機による応力測定値を定常領域だけでなく,弾性領域や遷移領域も±30 MPa程度の誤差で再現することができた.降伏後の挙動も以前の較正則よりよく再現することができた.また,1500 MPaまでの高封圧の実験結果も較正することが可能となった.炭酸塩岩の応力測定値にも較正則を適用したところ,比較的大きな誤差(~70 MPa)があったが,弾性変形領域から降伏後の挙動まで再現することができた.
岩石のレオロジー特性を定量的に明らかにするためには,地球内部に相当する温度・圧力下で変形実験を行う必要がある.岩石変形試験機には,使用する圧媒体の違いから固体圧変形試験機,油圧変形試験機,ガス圧変形試験機がある(例えば,Tullis and Tullis, 1986).油圧試験機は高温での油の変質を防ぐため,500 ℃以下に実験が制限される.ガス圧試験機は荷重計測器が圧力容器内にあるため,力学データの精度が最も高いが,国内では高圧ガスの規制法規のため封圧200 MPa以下に制限されている.固体圧試験機は柔らかい固体の圧媒体を用いているため,比較的容易で長期間安定的に高封圧(~2 GPa,下部大陸地殻~70kmに相当)を得られる.しかし,圧媒体と試料や載荷ピストンの間に生じる摩擦を主な原因として,実際の試料の強度よりも高い応力値が測定されてしまう(例えば,Tullis and Tullis, 1986).
近年,固体圧試験機とガス圧試験機の応力測定値の比較から,固体圧試験機の較正則が示されている(Holyoke and Kronenberg, 2010).この較正則によって,固体圧試験機を用いて定常領域の差応力を±30 MPaの誤差で求めることができるようになった.しかし,この較正則は定常領域に当たる歪5%における応力値を比較することで求めているため,弾性領域や遷移領域,降伏後の歪硬化や歪軟化といった挙動を再現することはできない.また,ガス圧試験機の実験結果と比較可能な低封圧(~300 MPa)の実験結果がほとんどであるため,固体圧試験機の長所である高封圧下での応力測定値の精度に関してよく分かっていない.地殻深部・最上部マントル及び沈み込み帯深部を構成する岩石の詳細なレオロジー特性を明らかにするために,高圧を長期間安定的に発生できる固体圧試験機において,広範な変形挙動を再現可能な較正則が必要である.本研究では,マスターカーブ法を用いて固体圧試験機における応力測定値の較正則の導出を行った.
2.軸圧縮実験とマスターカーブ作成
本研究では,東北大学所有のGriggs型固体圧変形試験機(固体塩アセンブリを採用)を用いて,ニッケルやモリブデンといった金属試料に対して軸圧縮実験を行った.実験は,様々な温度・封圧・歪速度条件下(封圧:~300 MPa,~1200 MPa,~1500 MPa.温度:600 ℃,700 ℃,800 ℃,歪速度:2×10-4 /s,2×10-5 /s,2×10-6 /s)で行った.低封圧の応力測定結果は,先行実験(Holyoke and Kronenberg, 2010)の同条件での結果とよく一致していた.しかし,高封圧の実験ほど,応力測定値が大きくなる傾向があった.今回の封圧範囲内では,定常状態における応力測定値の対数は封圧とほぼ線形の関係を持つことが示唆された.得られた力学データを嶋本(1987)において示されている粘弾性構成則に基づいて解析し,様々な温度・歪・封圧の異なる力学データを規格化したマスターカーブを得た.Holyoke and Kronenberg (2010) のガス圧試験機による力学データについても同様の解析を行い,マスターカーブを得た.
3.較正則の導出と適用
固体圧試験機とガス圧試験機の実験には同じ金属試料を用いて,温度・歪・封圧を規格化しているため,両者のマスターカーブの差はそれぞれの試験機システムを構成する様々なレオロジー要素の差異に由来するものと考えられる.二つのマスターカーブの差から固体圧試験機の応力測定値の較正則を導出した.本研究で導出された較正則を固体圧試験機によって得られた金属の応力測定値に適用したところ,ガス圧試験機による応力測定値を定常領域だけでなく,弾性領域や遷移領域も±30 MPa程度の誤差で再現することができた.降伏後の挙動も以前の較正則よりよく再現することができた.また,1500 MPaまでの高封圧の実験結果も較正することが可能となった.炭酸塩岩の応力測定値にも較正則を適用したところ,比較的大きな誤差(~70 MPa)があったが,弾性変形領域から降伏後の挙動まで再現することができた.