日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-TT 計測技術・研究手法

[M-TT40] 地球惑星科学データ解析の新展開:データ駆動型アプローチ

2015年5月28日(木) 11:00 〜 11:45 201A (2F)

コンビーナ:*桑谷 立(東北大学大学院環境科学研究科)、駒井 武(東北大学大学院 環境科学研究所)、宮本 英昭(東京大学総合研究博物館)、小池 克明(京都大学大学院工学研究科 都市社会工学専攻地殻環境工学講座)、堀 高峰(独立行政法人海洋研究開発機構・地震津波海域観測研究開発センター)、長尾 大道(東京大学地震研究所)、座長:中村 謙吾(東北大学大学院環境科学研究科)

11:00 〜 11:15

[MTT40-14] 疎性モデリングを用いた余効すべりのインバージョン

*中田 令子1桑谷 立2岡田 真人3堀 高峰1 (1.海洋研究開発機構、2.東北大学大学院環境科学研究科、3.東京大学大学院新領域創成科学研究科)

本研究では、沈み込むプレートとその上のプレートとの境界面上で、将来大地震を起こす可能性のある固着域を、地表の地殻変動データから高分解能で抽出するための手法を開発することを目指す。そのために、地震後に生じるゆっくりしたすべり(余効すべり)の時空間分布をターゲットとする。余効すべりとは、大地震後に数カ月~数年間かけて、地下の断層がゆっくりと(地震波を放出せずに)すべる現象であり、GPS等によって地表で観測された地殻変動から、断層上のすべり量を推定できる。海域で発生した過去の大地震による余効すべりを解析した結果、余効すべりが起きている間、大地震の震源域はほとんどすべっていないことが知られている。
我々は、地震や余効すべりを含むプレート境界面上のすべりの時空間変化の数値シミュレーションによって、大地震とその後の余効すべりを計算した [Nakata et al., 2012]。数値シミュレーションでは、大地震の震源域には、予め、周囲よりも不安定な摩擦条件を与えているため、周囲とは異なる挙動(普段は周囲よりもすべり速度が遅く、地震時には、周囲よりも高速ですべる)を示す。数値シミュレーションで起こした大地震後の余効すべりは、地震時のすべり域(震源域)を取り囲むように分布していた。
この余効すべりに伴う地殻変動を計算し、それを模擬データとして、プレート境界面上のすべり分布を推定したところ、すべり分布に対して観測点分布に偏りがある場合だけでなく、直上に観測点がある場合でも、すべりが0であるべき震源域内において、無視できない大きさのすべりが推定されていた [Nakata et al., 2014]。これは、データ(地殻変動観測点数)に対して推定すべき変数(プレート境界面を分割したセル数)が多い問題設定のため、すべり分布のなめらかさを仮定することで拘束条件を増やしていることによる。もし、大地震後の余効すべり域とすべっていない領域が時空間的により高分解能で分離できれば、地震後のプレート境界面上の応力分布をより高い精度で推定できる。この知見は、地震後の応力蓄積・解放過程や強度回復過程の理解を助け、大きな余震発生の可能性が近い将来にある場所の推定にもつながる。
本研究では、数値シミュレーションで得られた余効すべり(真の物理量)による地殻変動の模擬データ(観測物理量)を用いて、プレート境界面上のすべり分布を推定した。評価関数はKuwatani et al. [2014]の手法を改良し、Markov random fields (MRF)モデルに基づいたすべりの不連続性およびなめらかさを規定する項と、スパースモデリングに基づいたモデルパラメタのスパース性を規定する項を導入した。評価関数を最小にするモデルパラメタセットは、従来の手法よりも高い解像度で、余効すべり域と固着域を分離できていた。講演では、評価関数による結果の違いについても紹介する。