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[SCG64-42] オンデマンド地殻変動観測ブイシステムの開発と現状の課題
キーワード:地殻変動観測, ブイ, オンデマンド, リアルタイム, 南海トラフ
(独)海洋研究開発機構(JAMSTEC),東北大学,(独)宇宙研究開発機構(JAXA)は共同で津波と地殻変動をリアルタイム観測するためのブイシステムの開発を2011年から進め、2回の海域試験を実施してきた。これまでに、強潮流域下でのブイ係留、海底局での水圧観測と津波モードの実装、ダブルパルスを用いた海底局から吊下局への音響伝送、洋上ブイから陸上への衛星通信によるデータ伝送には成功した。今年度から戦略イノベーションプログラムの一環として、これまでのノウハウを用いて、オンデマンドで地殻変動を観測するシステムとして開発する。海底水圧計から上下方向の地殻変動を求め、6基の海底トランスポンダーとの音響測位を用いて水平方向の地殻変動を求める。これまでの海域試験から判明した課題もいくつかある。まず、海底局と吊下間のダブルパルスを用いた音響データ伝送である。海底局のロガーで記録されたデータと吊下局で記録されたロガーを比較すると、直達波の音響信号ではなく、海底反射波や海面反射波を信号と誤認しているケースがあった。また、ダブルパルス間の時間差の吊下局での読み取りに1msec以上の誤差を含むことも明らかになった。この1msecの誤差を下げることが音響伝送のダイナミックレンジを広げることになるため、今後検討を進める。吊下局と洋上ブイの間の伝送は、これまでワイヤーロープを使用して行ってきた。しかし漁具による損傷をうけることもあり、また、今回の海域試験でブイの回転により、ワイヤーロープにねじりが入ることが確認された。オンライン伝送と電磁モデムを用いた2系統のデータ伝送手法を用いて冗長化を図るとともに、ねじりを解消する機器開発を進める。このシステムは、定常的な観測の他に、陸上局からの地殻変動観測の要求を受けて、音響信号を発出し、リアルタイムで地殻変動観測データを陸上に伝送する形をとる。そのため、ブイの精密な位置を実時間で知るために、リアルタイムprecise point positioning (PPP) 測位を採用し、JAXAによるMADOCA暦を用いた測位と商用PPPサービスであるStarFireを並行して導入する。本講演では、現状の取り組みと課題について紹介する。