日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC45] 活動的火山

2015年5月28日(木) 16:15 〜 18:00 304 (3F)

コンビーナ:*青木 陽介(東京大学地震研究所)、座長:森 俊哉(東京大学大学院理学系研究科地殻化学実験施設)、寺田 暁彦(東京工業大学火山流体研究センター)

16:15 〜 16:30

[SVC45-23] 桜島・黒神観測井における温泉ガス濃度の検討

*井口 正人1平林 順一2 (1.京都大学防災研究所、2.東京工業大学名誉教授)

桜島では2009年以降,昭和火口においてブルカノ式噴火が多発している.黒神観測井は昭和火口の東4kmにある深度120mの井戸であり,深さ60mには温泉水がある.黒神観測井からの温泉ガスを1日に1回,毎分1リットルの流量で5分間吸引してCO2濃度およびH2濃度を測定している(井口・平林,2010)。
CO2濃度は, 2009年2月~4月から増加しはじめ,7月には16%に達した後急激に減少し,9月には4%まで低下した。その後は,1年程度の年周変化に近い変動を示しつつも,予想される年周変化が現れないときもある.通常,夏季にはCO2濃度は低下するが,2013年4月~7月には減少は見られず,3~4%の濃度を保ったまま,2014年6月に減少し,1.3%まで低下した。H2濃度はCO2濃度と同様に2009年2月~4月から増加し,2009年7月中旬には3,000 ppmのピークに達したが,10月ごろから急激に,その後は緩やかに減少を続け2015年1月時点では,400ppmまで低下している.2009年10月以降の減少傾向の中にも夏季に増加,冬季に減少する.
2009年後半以降爆発回数,火山灰放出量も増加したが,噴火活動活発化に先行してCO2およびH2濃度とも顕著な増加を示した.2010年以降には,顕著な増加が見られないが,年周変化的な特徴もみられるので,それについて考察する.
温泉水からのCO2濃度は天水の影響を受けている。2009年以降,降水量が多かった時期が,2010年,2011年,2012年,2014年の6月の梅雨時期に現れている。この時期には温泉水の温度が低下しており,天水が温泉水に混入したものと考えられる。降水量が増加すると2~3週間後にCO2濃度が低下し始める。CO2に乏しい天水が温泉水に混入し,CO2に富んだ温泉水が希釈され,CO2濃度が減少したものと考えることが可能である。2013年の梅雨時期は降水量が少ないので,温泉水の温度も低下せず,CO2濃度が低下しなかったと考えられる.降水の影響の少ない1月のCO2濃度は2010年が6%,2011年と2012年が5%,2013年と2014年が4%程度であり,長期的に低下傾向にあると言える。
H2ガス濃度は2007年の8月ごろと2009年3・4月ごろに濃度が増加した点で,CO2と似た傾向を示すが,2009年7月以降はCO2濃度とは異なる変化を示す。H2ガス濃度は2009年7月以降,長期的な減少傾向にあり,2009年7月17日以降の水素ガス濃度は指数関数で減衰する曲線で近似できる。時定数は247日となる。水素ガス濃度の指数関数からの残差は振幅が約200ppmの年周変化を示す。これを黒神における気圧と比較すると,気圧の高い冬季において減少し,気圧の低い夏季において増加する季節変動であることが分かる。
Hirabayashi et al.(1986)は,桜島南西部にある持木観測井のH2濃度が南岳の爆発回数増加に先行して急激に増加することを指摘し,マグマ中の揮発性成分に含まれるH2ガスがマグマ本体に先行して上昇した結果と解釈している。2006年以降の昭和火口における噴火活動期において桜島へのマグマ供給量が最も増加したのは2009年後半から2010年前半である.これに先行する2009年3月から7月にかけて深部マグマから脱ガスしたH2およびCO2が温泉水を含む桜島浅部へ上昇,10月以降,マグマ本体が遅れて上昇したものと考えられる.その後CO2では天水の温泉水への混入,H2では大気圧の変化の影響をうけながら指数関数的に減少していると解釈できる。