日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT53] 地震観測・処理システム

2015年5月24日(日) 16:15 〜 18:00 202 (2F)

コンビーナ:*中村 洋光(防災科学技術研究所)、座長:木村 武志(防災科学技術研究所)、松岡 英俊(気象庁地震火山部)

17:45 〜 17:48

[STT53-P04] 下北半島周辺における微小地震観測網の構築(その2)

ポスター講演3分口頭発表枠

*野口 科子1関根 秀太郎1澤田 義博1笠原 敬司1佐々木 俊二1田澤 芳博1矢島 浩1 (1.(公財)地震予知総合研究振興会)

キーワード:地震観測網, 下北半島

日本国内では,防災科学技術研究所による高感度地震観測網Hi-netをはじめとする稠密な微小地震観測網が整備されている.しかしながら,東北北部から北海道南西部にかけての地域では,他地域に比べて観測点密度が低く,地震活動などを他地域と同様の精度で捉えることは難しい状態であった.そこで,下北半島,津軽半島,北海道南西部に高密度の微小地震観測網(AS-net)を整備し,地震活動の常時モニタリングを開始した(関根・他,2014).本発表では,AS-netの整備完了とデータ公開を踏まえ,観測網の紹介とデータ処理の状況を報告する.
 AS-netは36観測点を擁し,2013年度に20観測点,2014年度に16観測点が整備され,2014年8月に全点運用を開始した.観測データはJDX-netを介して,全国の地震観測網ネットワークにリアルタイム配信される.この配信は2014年1月より,整備された観測点から順次開始されているが,2015年1月には,防災科学技術研究所による地震観測データ公開サービスからの一般利用が開始された.以上のリアルタイムのデータ共有により,地震モニタリングや研究活動への貢献が可能になっている.
 地震検知能力を確かめるため,各観測点の常時微動データからノイズレベルを推定した.ノイズレベル値として,1時間分の微動データの振幅の自乗平均(RMS)値を用いた.その結果,昼間(13~14時)にノイズレベルが50μcm/sを超える点が11点あった一方,昼間でも約10μcm/sかそれ未満の点は14点であった.また,ノイズレベルの大きい点では,0.5-1 Hz程度の脈動成分が卓越していた.AS-net観測点では,地震計は深さ約20 mの孔底に設置されているが,2014年度整備の16観測点では,板たたき法により地表と孔底間の平均弾性波速度を推定している.そこで得られた平均S波速度とノイズレベルを比較したところ,平均S波速度が300 m/s以上の観測点でノイズレベルが小さく,300 m/s未満の点ではノイズレベルが大きい傾向がみられた.したがって,各観測点のノイズレベルは地盤の特性に大きく影響されているといえる.
 さらに,得られた観測データに周囲の他機関の観測点のデータを合わせ,2014年の1年分のデータについて自動震源決定を行ったところ,周辺領域内で4616イベントと,気象庁一元化震源カタログの1846イベントに比べ約2.5倍の数のイベントが決定された.これは人工震源等を含む結果である.例えば,領域内の数か所において,発破とみられるイベントのクラスタがみられる.2014年5月には,下北半島東方沖で389イベントが決定されているが,このうちほぼすべてが当該地域での地震波探査の人工震源によるものとみられる.一方,自然地震については,2014年1月に十和田湖周辺で起こった群発活動について,一元化カタログでは1月20日~31日に287イベント,自動震源では375イベントが決定されている.これらのイベントを区別し精度を上げるため,今後,手動検測による精査を行う.なお,イベントの規模別頻度分布をみると,一元化カタログではM1付近で頭打ちになるのに対し,自動決定イベントではM0.6付近で頭打ちとなっており,検知能力の向上が示唆される.

参考
関根 秀太朗・澤田 義博・笠原 敬司・佐々木 俊二・田澤 芳博・矢島 浩,下北半島周辺における微小地震観測網の構築,日本地球惑星科学連合2014年大会,横浜,STT57-P09,2014年4月.