12:15 〜 12:30
[SCG64-28] 巨大津波を発生させる弱いプレートカップリングの琉球海溝西端部
キーワード:巨大地震, 琉球海溝, プレート間カップリング, 1771年八重山津波, 津波堆積層, GPS速度
琉球海溝西端部には、1771年八重山津波のような巨大津波が過去に何回か発生した。従来、この種の津波の規模、発生時期やメカニズムの研究は、「津波石」を用いて行われてきた。その結果、大津波発生間隔では異なる考えが提起された。発生場所についても、プレート間地震、プレート内地震+地すべりなどの異なるモデルが提起されている。このため、津波石に基づく研究は、津波の発生時期、津波石の移動の起点と到達点、津波の規模等の推定には曖昧さを残すため、信頼性の高い津波堆積層に基づく研究が望まれてきた。
我々は、石垣島で、完新世の堆積物の掘削を行い、津波堆積層の調査を行った。石垣島では5カ所掘削し、そのうち1カ所で連続的に津波石が堆積する地点を見つけることができた。この地点では、津波到来方向に平行に、100m以上連続的にトレンチ掘削することができた。この結果、過去2500年間に4回の巨大津波が発生したことが明らかになった(Ando et al., 2015)。これらの津波は、1771年八重山津波とほぼ同様の規模と推定された。また、津波の波高分布から、プレート境界の地震によるものと推定された。琉球海溝沿いのプレート相対速度を12cm/yrとすると(Heki and Kataoka, 2008)、seismic coupling rate (SCR, 地震によるスリップ/プレート相対運動)は、15x40%程度と推定された。ただし、SCRはプレート間カップリングの幅に依存する。
最近、琉球海溝西端部では、slow slip や超低周波地震、splay faultが見つかり、南海トラフと似た現象が生じていることが明らかになってきた。このような現象に基づき、西琉球海溝プレートは強くカップリングしているとも考えられている。そこで、我々は、GPSデータを用いて、琉球海溝沿いの地殻変動を調べた。琉球海溝では、島々はほぼ海溝に沿って線上に並ぶため、プレートのカップリング状態をGPSデータから調べるのは難しい。この中で、西表島と波照間島は、琉球海溝の走向に垂直に40kmほど離れて並ぶ。そこで、両島の基線長を調べると、定常的な変動を示すことが分かった。2001年以前、および2002年後半以降の約15年間は、1mm/y の割合で安定した伸びを示す。strain rateは +2.5x10E-8である。2001年1月および2000年3月 にMw6.8と7.1の地震が発生し、若干の乱れが生じているので、この間は除外した。
南海トラフや日本海溝沿岸では、通常、海溝の走向と直交方向に圧縮されるが、琉球海溝は明らかにこれらとは異なる。海溝軸から両島までの距離は、85-125kmに過ぎないことを考えれば、南海トラフや日本海溝沿いに比べ、strain rateの絶対値は1桁以上小さい。琉球海溝西端部では、津波を起こす程度はプレート間カップリング存在しつつも、その強度は極めて小さい。琉球海溝は後退(retreat)しながら、海陸プレート間カップリングを保っている。このため、500年に1回程度の割合で、巨大津波地震を引き起こすと考えられる。上記のカップリング状態を説明するには、固着域の幅は30km程度と狭いものと推定される。
我々は、石垣島で、完新世の堆積物の掘削を行い、津波堆積層の調査を行った。石垣島では5カ所掘削し、そのうち1カ所で連続的に津波石が堆積する地点を見つけることができた。この地点では、津波到来方向に平行に、100m以上連続的にトレンチ掘削することができた。この結果、過去2500年間に4回の巨大津波が発生したことが明らかになった(Ando et al., 2015)。これらの津波は、1771年八重山津波とほぼ同様の規模と推定された。また、津波の波高分布から、プレート境界の地震によるものと推定された。琉球海溝沿いのプレート相対速度を12cm/yrとすると(Heki and Kataoka, 2008)、seismic coupling rate (SCR, 地震によるスリップ/プレート相対運動)は、15x40%程度と推定された。ただし、SCRはプレート間カップリングの幅に依存する。
最近、琉球海溝西端部では、slow slip や超低周波地震、splay faultが見つかり、南海トラフと似た現象が生じていることが明らかになってきた。このような現象に基づき、西琉球海溝プレートは強くカップリングしているとも考えられている。そこで、我々は、GPSデータを用いて、琉球海溝沿いの地殻変動を調べた。琉球海溝では、島々はほぼ海溝に沿って線上に並ぶため、プレートのカップリング状態をGPSデータから調べるのは難しい。この中で、西表島と波照間島は、琉球海溝の走向に垂直に40kmほど離れて並ぶ。そこで、両島の基線長を調べると、定常的な変動を示すことが分かった。2001年以前、および2002年後半以降の約15年間は、1mm/y の割合で安定した伸びを示す。strain rateは +2.5x10E-8である。2001年1月および2000年3月 にMw6.8と7.1の地震が発生し、若干の乱れが生じているので、この間は除外した。
南海トラフや日本海溝沿岸では、通常、海溝の走向と直交方向に圧縮されるが、琉球海溝は明らかにこれらとは異なる。海溝軸から両島までの距離は、85-125kmに過ぎないことを考えれば、南海トラフや日本海溝沿いに比べ、strain rateの絶対値は1桁以上小さい。琉球海溝西端部では、津波を起こす程度はプレート間カップリング存在しつつも、その強度は極めて小さい。琉球海溝は後退(retreat)しながら、海陸プレート間カップリングを保っている。このため、500年に1回程度の割合で、巨大津波地震を引き起こすと考えられる。上記のカップリング状態を説明するには、固着域の幅は30km程度と狭いものと推定される。