14:30 〜 14:45
[MIS23-02] 山陰海岸ジオパークにおける磯(海岸線)の地生態学的研究(地形地質)
キーワード:地生態学, 磯, 海岸地形
1 目的
本研究の目的は、海岸線(磯)において、そこに生息している生物(磯の生き物)が、どのような生息空間を利用しているのかを調査し、地形地質の多様性が生き物の多様性に関係していることを明らかにすることです。
2 地質概要
調査地域は、京丹後市の海岸線を主体として、京都府京丹後市網野町掛津(第三紀北但層群堆積岩類)、同市丹後町竹野(第三紀北但層群安山岩)、および兵庫県豊岡市竹野町切浜(花崗岩)です。
3 調査方法
1)地形地質調査(生物生息空間の形状把握)
地表地質踏査により、岩場における風化浸食による表面形態の特徴を地質別に整理し、地質的な要因を明らかにする。次に地質別(凝灰角礫岩、砂岩・礫岩、凝灰岩泥岩互層、安山岩、花崗岩)に測線を設定し、測線上の露岩の表面形態をトレースし、微地形断面を作成し、露頭表面の凹凸形状と地質との関係を整理する。
2)生物生息調査(磯の生物分布)
岩場に生息する生物(固着動物、付着藻類、甲殻類など)の分布を明らかにする。磯(海岸部)に生息する生物の分布をコドラート調査(40×40cm)により定量的、定性的に把握する。調査区画ごとに生息種、個体数を整理する。なお、岩場での生息分布の調査対象範囲は、潮間帯に対応する部分とする。
4 風化浸食による海岸地形と地質
(1)凝灰角礫岩
①海食台(波食台)状の平坦面(凝灰角礫岩)、②タフォニ状の風化浸食面(凝灰岩)、③溝状の窪み(断層、亀裂面に起因)、④ポットホール状の窪み(凝灰角礫岩の海食台上に形成)
(2)砂岩・礫岩
礫岩は硬質な岩盤であるため、浸食に強く、浸食面は凸状の表面形態を示す。一方、砂岩は礫岩に比べ軟質であることから、層理面に沿った滑らかな平面状の浸食形態となる。
(3)凝灰岩泥岩互層
泥岩あるいは凝灰岩の層理面に沿った平面状の浸食面を形成する。地形面(浸食面)の傾斜方向は、層理面の傾斜に規制される。また、互層部の断面では凝灰岩と泥岩の差別浸食が認められ、泥岩がより浸食される傾向にある。
(4)安山岩
山陰海岸に分布する火山岩類(安山岩や流紋岩など)は、柱状節理に代表される節理の発達がよく見られる。したがって、これらの火山岩類は節理面に規制された浸食地形が発達する。その代表的なものが「立岩」で、鉛直方向に発達した柱状節理によって、海面から屹立した急崖を形成する。
(5)花崗岩
3方向の節理が発達する(方状節理)。また、花崗岩特有のマサ状の風化が発達する。このため、節理に規制され起伏に富んだ複雑な浸食地形となり、3方向の節理に囲まれた角張った窪地を形成する。また、マサ状風化の影響を受け、角がやや丸みを帯びることがある。
5 地形地質の特徴
地質の違いによる風化浸食形態と、それを生息空間として利用している生物との関連性を考察した。それによると凝灰角礫岩や花崗岩では、多様な窪みが形成され、多くの固着生物、遊泳生物などがその空間を利用している。一方、礫岩は凸状の表面形態のため、生物生息空間として適さないものと考えられる。砂岩泥岩、安山岩では平面的な表面形態を示し、限定された生物のみの利用空間となっていることがわかった。
本研究を進めるにあたり、「山陰海岸ジオパーク学術研究奨励事業(平成24、25年度)」の補助金を使用した。
本研究の目的は、海岸線(磯)において、そこに生息している生物(磯の生き物)が、どのような生息空間を利用しているのかを調査し、地形地質の多様性が生き物の多様性に関係していることを明らかにすることです。
2 地質概要
調査地域は、京丹後市の海岸線を主体として、京都府京丹後市網野町掛津(第三紀北但層群堆積岩類)、同市丹後町竹野(第三紀北但層群安山岩)、および兵庫県豊岡市竹野町切浜(花崗岩)です。
3 調査方法
1)地形地質調査(生物生息空間の形状把握)
地表地質踏査により、岩場における風化浸食による表面形態の特徴を地質別に整理し、地質的な要因を明らかにする。次に地質別(凝灰角礫岩、砂岩・礫岩、凝灰岩泥岩互層、安山岩、花崗岩)に測線を設定し、測線上の露岩の表面形態をトレースし、微地形断面を作成し、露頭表面の凹凸形状と地質との関係を整理する。
2)生物生息調査(磯の生物分布)
岩場に生息する生物(固着動物、付着藻類、甲殻類など)の分布を明らかにする。磯(海岸部)に生息する生物の分布をコドラート調査(40×40cm)により定量的、定性的に把握する。調査区画ごとに生息種、個体数を整理する。なお、岩場での生息分布の調査対象範囲は、潮間帯に対応する部分とする。
4 風化浸食による海岸地形と地質
(1)凝灰角礫岩
①海食台(波食台)状の平坦面(凝灰角礫岩)、②タフォニ状の風化浸食面(凝灰岩)、③溝状の窪み(断層、亀裂面に起因)、④ポットホール状の窪み(凝灰角礫岩の海食台上に形成)
(2)砂岩・礫岩
礫岩は硬質な岩盤であるため、浸食に強く、浸食面は凸状の表面形態を示す。一方、砂岩は礫岩に比べ軟質であることから、層理面に沿った滑らかな平面状の浸食形態となる。
(3)凝灰岩泥岩互層
泥岩あるいは凝灰岩の層理面に沿った平面状の浸食面を形成する。地形面(浸食面)の傾斜方向は、層理面の傾斜に規制される。また、互層部の断面では凝灰岩と泥岩の差別浸食が認められ、泥岩がより浸食される傾向にある。
(4)安山岩
山陰海岸に分布する火山岩類(安山岩や流紋岩など)は、柱状節理に代表される節理の発達がよく見られる。したがって、これらの火山岩類は節理面に規制された浸食地形が発達する。その代表的なものが「立岩」で、鉛直方向に発達した柱状節理によって、海面から屹立した急崖を形成する。
(5)花崗岩
3方向の節理が発達する(方状節理)。また、花崗岩特有のマサ状の風化が発達する。このため、節理に規制され起伏に富んだ複雑な浸食地形となり、3方向の節理に囲まれた角張った窪地を形成する。また、マサ状風化の影響を受け、角がやや丸みを帯びることがある。
5 地形地質の特徴
地質の違いによる風化浸食形態と、それを生息空間として利用している生物との関連性を考察した。それによると凝灰角礫岩や花崗岩では、多様な窪みが形成され、多くの固着生物、遊泳生物などがその空間を利用している。一方、礫岩は凸状の表面形態のため、生物生息空間として適さないものと考えられる。砂岩泥岩、安山岩では平面的な表面形態を示し、限定された生物のみの利用空間となっていることがわかった。
本研究を進めるにあたり、「山陰海岸ジオパーク学術研究奨励事業(平成24、25年度)」の補助金を使用した。