18:15 〜 19:30
[SCG57-P27] 三重県松阪市飯高町月出における中央構造線に沿う断層岩の解析
キーワード:中央構造線, 断層岩, カタクレーサイト
西南日本において東西方向に800km以上延長される中央構造線は,西南日本外帯の三波川帯と内帯の領家帯の境界を限る日本で最大規模の断層である.地下の地層や岩盤に応力が加わり,蓄積された歪が岩石の強度を超えると裂け目ができ,その裂け目に沿って地層がずれることを断層運動と呼び,地震の原因となると考えられる.しかし,現在活動している地下の断層の動きにより岩石が破壊していく様子を直接確認するのは困難である.そのために過去に活動していた断層の露頭を観察することは,断層に沿う破壊の進展を理解する上で非常に重要である.本研究では,三重県松阪市飯高町月出に分布する中央構造線の周辺の地質図を作成し,岩石の記載を行うことで,中央構造線の断層運動による脆性破壊と断層運動に関係する地質構造の発展を明らかにする.
本研究では三重県松阪市飯高町月出の中央構造線に直交する,南北方向の5つの沢(東西方向に約900m間に存在する)で150m程度のルートマップを,50m巻尺を用いて正確に作成した. フィールド調査の結果,この地域の中央構造線は北に急傾斜しており,周辺の岩石は構造的下位から三波川変成岩類のチャートを含まない泥質片岩(50m+)と三波川変成岩類に属するチャートラミナイトを起源とする泥質片岩(90m),領家花崗岩類起源のカタクレーサイト(80m)と領家花崗岩類起源のプロトマイロナイト(15m+)の4種類の岩石が重なっていることが明らかとなった.カタクレーサイトおよびプロトマイロナイトの薄片を作成し,鏡下観察を行ったところ,脆性破壊に伴う流体の流入による段階的な斜長石の白雲母化や割れ目への緑泥石の沈殿が観察できた.また,カタクレーサイト化の程度を調べるために割れ目密度(本/cm)に基づいて,試料を未破砕,弱破砕,中破砕,強破砕に分類した.調査地域での三波川変成岩類の片理は東西走向であり,また,三波川変成岩類と領家花崗岩類起源のカタクレーサイトの境界も東西方向に追跡される.したがって,三波川変成岩類および中央構造線はともに東西方向の一般走向を持つことが明らかとなった.三波川変成岩類の小断層は北東方向で北に中程度傾斜しているが,これは中央構造線の東西方向への大規模左横ずれの剪断に伴って形成されたリーデルシェアと解釈される.一方,本地域においてルートマップのデータに地質図学を適用し,中央構造線の走向, 位置が正確に決定することができたが,本地域中央部において中央構造線が約70m南北・水平方向に隔離していることが明らかになった.ここには断層ジョグ(ステップ)が存在すると推測される.断層は屈曲,雁行,分岐,などの非単調な構造(断層ジョグ)を伴い,破壊の終息域や一時停止域となる断層ジョグの手前にほかよりも大きくすべる領域,即ちアスペリティが存在する可能性があるという(杉山ほか, 2003).今後の研究で,本地域における断層ジョグの構造についてさらに詳しく調査する必要がある.また,割れ目密度測定によって,中央構造線に近いほど岩石の破砕が強く,遠い所では破砕が弱くなっていることが明らかとなった.斜長石の変質の程度もこれに対応している.これらのことから,中央構造線の断層運動による破砕作用が中央構造線に沿った岩石からより離れた岩石へと伝播し,時間の経過とともにカタクレーサイト帯の幅が広くなっていったのではないかと考えられる.
本研究では三重県松阪市飯高町月出の中央構造線に直交する,南北方向の5つの沢(東西方向に約900m間に存在する)で150m程度のルートマップを,50m巻尺を用いて正確に作成した. フィールド調査の結果,この地域の中央構造線は北に急傾斜しており,周辺の岩石は構造的下位から三波川変成岩類のチャートを含まない泥質片岩(50m+)と三波川変成岩類に属するチャートラミナイトを起源とする泥質片岩(90m),領家花崗岩類起源のカタクレーサイト(80m)と領家花崗岩類起源のプロトマイロナイト(15m+)の4種類の岩石が重なっていることが明らかとなった.カタクレーサイトおよびプロトマイロナイトの薄片を作成し,鏡下観察を行ったところ,脆性破壊に伴う流体の流入による段階的な斜長石の白雲母化や割れ目への緑泥石の沈殿が観察できた.また,カタクレーサイト化の程度を調べるために割れ目密度(本/cm)に基づいて,試料を未破砕,弱破砕,中破砕,強破砕に分類した.調査地域での三波川変成岩類の片理は東西走向であり,また,三波川変成岩類と領家花崗岩類起源のカタクレーサイトの境界も東西方向に追跡される.したがって,三波川変成岩類および中央構造線はともに東西方向の一般走向を持つことが明らかとなった.三波川変成岩類の小断層は北東方向で北に中程度傾斜しているが,これは中央構造線の東西方向への大規模左横ずれの剪断に伴って形成されたリーデルシェアと解釈される.一方,本地域においてルートマップのデータに地質図学を適用し,中央構造線の走向, 位置が正確に決定することができたが,本地域中央部において中央構造線が約70m南北・水平方向に隔離していることが明らかになった.ここには断層ジョグ(ステップ)が存在すると推測される.断層は屈曲,雁行,分岐,などの非単調な構造(断層ジョグ)を伴い,破壊の終息域や一時停止域となる断層ジョグの手前にほかよりも大きくすべる領域,即ちアスペリティが存在する可能性があるという(杉山ほか, 2003).今後の研究で,本地域における断層ジョグの構造についてさらに詳しく調査する必要がある.また,割れ目密度測定によって,中央構造線に近いほど岩石の破砕が強く,遠い所では破砕が弱くなっていることが明らかとなった.斜長石の変質の程度もこれに対応している.これらのことから,中央構造線の断層運動による破砕作用が中央構造線に沿った岩石からより離れた岩石へと伝播し,時間の経過とともにカタクレーサイト帯の幅が広くなっていったのではないかと考えられる.