日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-AG 応用地球科学

[M-AG38] 福島原発事故により放出された放射性核種の環境動態

2015年5月26日(火) 09:00 〜 10:45 301B (3F)

コンビーナ:*北 和之(茨城大学理学部)、恩田 裕一(筑波大学アイソトープ環境動態研究センター)、中島 映至(東京大学大気海洋研究所)、五十嵐 康人(気象研究所 環境・応用気象研究部)、山田 正俊(弘前大学被ばく医療総合研究所)、竹中 千里(名古屋大学大学院生命農学研究科)、山本 政儀(金沢大学環低レベル放射能実験施設)、篠原 厚(大阪大学理学系研究科)、座長:五十嵐 康人(気象研究所 環境・応用気象研究部)

10:00 〜 10:15

[MAG38-05] 地域気候特性が放射性物質の輸送に与える影響

*吉兼 隆生1芳村 圭1佐谷 茜1 (1.東京大学大気海洋研究所)

キーワード:放射性物質輸送, 地域気候, 領域モデル

2011年3月の福島第一原子力発電所事故によって大気中に放出された放射性物質が関東や東北へ輸送された。多くの研究から放射性物質の輸送過程が明らかになりつつあるが、地域気候特性との関係を含めた調査は必ずしも十分ではない。本研究では3月の地域気候の特性を考慮しながら、関東への放射性物質輸送のメカニズムについて領域モデルを用いて調査した。モデル結果より、21日から23日に観測された関東への放射性物質の輸送は、福島から都心にかけて顕著であった北~北東気流によることが分かった。北東気流は、関東南岸に形成する低気圧や停滞前線に対応して出現し、南からの暖気移流とともに温暖前線を形成する。北東気流に伴う寒気は、東北太平洋側で北西気流に伴う寒気の吹き出し(コールドサージ)によって形成され、下層の南北温度傾度に対応して南下していることから、重力流の特性を持つと推測される。強い寒気の吹き出しは福島沖でもみられ、局地的な温度分布が風系に大きく影響する可能性もある。以上を踏まえて、過去の複数の事例についてモデルによる実験を行い、詳細な輸送プロセスについての調査結果を報告する予定である。