日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC45] 活動的火山

2015年5月27日(水) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*青木 陽介(東京大学地震研究所)

18:15 〜 19:30

[SVC45-P32] 2014年阿蘇火山噴火に伴う電磁気観測の結果について

*宇津木 充1大倉 敬宏1横尾 亮彦1鍵山 恒臣1 (1.京都大学)

キーワード:地磁気観測, 消磁, 比抵抗モニタリング

阿蘇中岳火口では、2014年11月に21年ぶりに本格的なマグマ噴火が始まった。我々は阿蘇中岳火口周辺で地磁気連続観測及び繰り返し比抵抗観測といった電磁気観測を行ってきたが、この噴火に関連して地下の熱的状態の急激な変化を示唆するデータが得られた。本発表ではこれらのデータ及びプレリミナリーな解析結果について紹介する。
 京都大学火山研究センターでは、阿蘇中岳第一火口周辺で1991年から地磁気全磁力連続観測を行ってきた。この観測から得られるデータについて、火山研究センター内に設置されている磁力計データをリファレンスとして全磁力の単純差を求め、火山活動に関連する地磁気変化、即ち地中温度により地殻岩石の磁化が変化することで生じる磁場時間変化をモニタリングしてきた。この観測の結果、2014年11月の噴火の1カ月ほど前から急激な磁場変化が観測された。この磁場変化のセンスは地中温度が急激に上昇した場合のものであり、解析(グリッドサーチ)の結果、磁場変化源は火口縁から地下約150m、第一火口・火口底から約50m深度に求まった。これは噴火活動に伴いマグマが浅部まで上昇し、地中温度を急激に上昇させた事を示唆するものである。
 また、京都大学火山研究センターでは、阿蘇中岳第一火口周辺で人工ソースを用いた繰り返し電磁探査(ACTIVE観測)を実施し、地下比抵抗のモニタリングを行ってきた。これまでの観測の結果、第一火口の地下は表層付近で相対的に低抵抗、その下位で高抵抗、さらにその下位の地下200~300m以深で低抵抗の、低・高・低の構造を示す事が分かっている。これはKanda et al.(2008)の高密度AMT探査で求められた第一火口地下の比抵抗構造と調和的である。特にKanda et al.(2008)では第一火口直下に低抵抗域が局在する事が明らかになっており、その実体として地下から供給される火山性流体の一部がトラップされて形成された熱水だまりであるとするモデルが提案されている。ACTIVE観測で得られた第一火口地下の構造について、最下層(地下200~300m以深)の低抵抗層がこの熱水だまりに、その上の比較的高抵抗な層が熱水をトラップする不透水層に対応し、浅部の低比抵抗層が表層付近の低抵抗な水の層(中岳第一火口の湯だまり)に相当すると考えられる。これまでの観測の結果、2011年の小規模噴火などに際し、熱水だまりに対応すると考えられる低抵抗な最下層で比抵抗変化が観測された。
 2014年11月の噴火に際しては、噴火前の9月の結果と、噴火直後の11月(26日)の結果を比べると、火口縁から地下100~150mの領域で比抵抗が増加した事が観測された。比抵抗変化が見られた深さと地磁気変化源の深さは非常に調和的である。これらの結果を総合すると、マグマが浅部まで上昇し、地中温度を急激に上昇させ地殻岩石が消磁され地磁気変化が生じた。また高温のマグマが上昇してきた事で地下水が押しのけられ比抵抗が相対的に高くなった、といった解釈が可能であると考えられる。