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[SSS26-16] 東北地方太平洋沖で発生した地震からの近地sP波の振幅分布
キーワード:sP波, 反射, 振幅, 震源メカニズム
sP変換波の走時が,近地においても震源深さの決定精度の向上に有効であることはよく知られているが,sP波の振幅に関する研究はあまり行われていない.そこで本研究では,波動の特徴を利用してsP 波を効率よく抽出する手法の開発を行い,それを東北地方太平洋沖で発生した地震に適用してsP 波の振幅分布の特徴を把握し,振幅分布に影響する要因の検討を行った.抽出のための解析では, polarization 解析によって求めた振動の長軸方位・傾斜角・直線性がP波としての条件を満たす時間ウィンドウにおいて,エンベロープ振幅の最大値を sP 波振幅として読み取った.sP 波の卓越周波数は1-2 Hzであるので,解析は中心周波数 1 Hzの帯域フィルターを通した波形を用いて行った.この方法によれば,目視では困難な場合も含めて,極めて効率よくsP波を検出できる.sP波の振幅は一般的に日本海側で大きく,方位依存性を示唆するような分布を示す.振幅分布に影響する要因として,距離減衰,震源からの放射特性,海底での反射係数の空間的不均質を考えて検討した.距離減衰についてはP波とほぼ同様であることがわかったので,震央距離に対して線形近似をすることによって除いた.震源からの放射特性は,距離減衰補正後の振幅を震源球上にプロットしてF-netのCMT解と比較することで検討した.その結果,振幅分布が放射特性を反映しているような例もあったが,震源球上で近接する観測点において振幅が大きく異なる場合は,放射特性では説明することができない.そこで,振幅を反射点位置にプロットして海底地形と対応を調べたが,明瞭な対応は見られなかった.以上のことから,sP波振幅は距離減衰と震源からの放射特性を反映していると考えられるが,反射に対する地形や地下構造の局所的な不均質性が影響している可能性も否定できない.それが,sP波が観測される観測点の割合が震源位置によって大きく異なる原因となっているのかもしれない.