18:15 〜 19:30
[SMP43-P09] 幌満かんらん岩中の巨晶かんらん石の産状
キーワード:巨晶かんらん石, 幌満かんらん岩, CPO
上部マントルの結晶の粒径は、温度、圧力、応力で決まると考えられており、通常は1 cmを超えるような結晶は形成されない(Ave Lallemant et al., 1980; 唐戸, 2011など)。しかし、実際の天然のかんらん岩には数cmを超える粒径をもつ結晶 (以下、巨晶とよぶ) が世界中で少なからず存在している (北海道の幌満かんらん岩、アメリカのSan Carlosのかんらん岩捕獲岩、ノルウェーWGRのかんらん岩など) 。予想を超える大きさの巨晶を含むかんらん岩が世界中で存在していることから、かんらん岩の中に巨晶を形成する過程があるのではないかと考えられる。もし、巨晶を形成するメカニズムが上部マントル条件下で存在するならば、マントル物質の流動や結晶境界が関与する物質移動、地震波速度構造に影響を及ぼしている可能性がある。1 cmを超える巨晶形成を実験室で再現するのは難しく、天然試料の解析に頼るしかない。このことから、天然の巨晶かんらん石を研究し、その特徴を明らかにすることは、上部マントルでの巨晶形成の可能性について検討する上で重要である。
そこで本研究では、北海道の幌満かんらん岩体に産する巨晶かんらん石に注目し、巨晶かんらん石の特徴と普通の粒径の部分との違いを明らかにし、その前後関係を検討することを目的とした。
本研究で用いた試料は、北海道の幌満かんらん岩体のかんらん岩で、Lower ZoneのMHL系列 (Takahashi, 1991) で採取したものである。巨晶かんらん石は面構造にほぼ平行で、肉眼で観察すると、普通の粒径のかんらん石よりも濁って見える。普通の粒径の層(細粒部)はポーフィロクラスティック組織である。巨晶かんらん石とかんらん石ポーフィロクラストには亜粒界が発達している。巨晶かんらん石の縁に見られる亜粒界は、かんらん石ポーフィロクラストと同じ(100)に平行である。巨晶かんらん石中にはラメラが形成されており、スピネル、単斜輝石、角閃石で構成されている。
U-stageで測定した結晶方位と亜粒界の方位を元に、巨晶かんらん石の中央部と縁にそれぞれ[001](100)と[100](001)のすべり系が確認された。細粒部では、[100](010)のすべり系が卓越するA-typeファブリックが見られる(Jung et al., 2006)。また、巨晶かんらん石に接する細粒かんらん石の結晶方位は、巨晶かんらん石と細粒かんらん石の中間的なファブリックである。
巨晶かんらん石と細粒かんらん石についてEPMAによる定量分析を行ったが、FoとNi含有量には顕著な差は見られなかった。また、FT-IRによる水含有量の測定も試みたが、OH基のピークは検出されなかった。
巨晶かんらん石に角閃石、単斜輝石、スピネルのラメラが見られることから、水の多い条件下でこれらの成分を固溶していたと考えられる。巨晶かんらん石の縁のすべり系と、縁に接する細粒かんらん石のCPOから、巨晶かんらん石はA-typeファブリックを形成する塑性変形を受ける前から存在していたと推定できる。A-typeファブリックが見られる幌満かんらん岩は、試料を採取した周辺で報告されており、幌満かんらん岩体が上部マントルから上昇する過程で形成されたものと解釈されている(Sawaguchi, 2004)。これより、巨晶かんらん石と細粒部は、上部マントル内を上昇する間にA-typeファブリックを形成したと考えられる。
以上のことから、巨晶かんらん石は上部マントル内に既に存在しており、水の多い条件下でラメラ成分はもともと固溶しており、幌満かんらん岩体が上部マントルから上昇する過程で、A-typeファブリックを形成する条件下で塑性変形を受けたと考えられる。
そこで本研究では、北海道の幌満かんらん岩体に産する巨晶かんらん石に注目し、巨晶かんらん石の特徴と普通の粒径の部分との違いを明らかにし、その前後関係を検討することを目的とした。
本研究で用いた試料は、北海道の幌満かんらん岩体のかんらん岩で、Lower ZoneのMHL系列 (Takahashi, 1991) で採取したものである。巨晶かんらん石は面構造にほぼ平行で、肉眼で観察すると、普通の粒径のかんらん石よりも濁って見える。普通の粒径の層(細粒部)はポーフィロクラスティック組織である。巨晶かんらん石とかんらん石ポーフィロクラストには亜粒界が発達している。巨晶かんらん石の縁に見られる亜粒界は、かんらん石ポーフィロクラストと同じ(100)に平行である。巨晶かんらん石中にはラメラが形成されており、スピネル、単斜輝石、角閃石で構成されている。
U-stageで測定した結晶方位と亜粒界の方位を元に、巨晶かんらん石の中央部と縁にそれぞれ[001](100)と[100](001)のすべり系が確認された。細粒部では、[100](010)のすべり系が卓越するA-typeファブリックが見られる(Jung et al., 2006)。また、巨晶かんらん石に接する細粒かんらん石の結晶方位は、巨晶かんらん石と細粒かんらん石の中間的なファブリックである。
巨晶かんらん石と細粒かんらん石についてEPMAによる定量分析を行ったが、FoとNi含有量には顕著な差は見られなかった。また、FT-IRによる水含有量の測定も試みたが、OH基のピークは検出されなかった。
巨晶かんらん石に角閃石、単斜輝石、スピネルのラメラが見られることから、水の多い条件下でこれらの成分を固溶していたと考えられる。巨晶かんらん石の縁のすべり系と、縁に接する細粒かんらん石のCPOから、巨晶かんらん石はA-typeファブリックを形成する塑性変形を受ける前から存在していたと推定できる。A-typeファブリックが見られる幌満かんらん岩は、試料を採取した周辺で報告されており、幌満かんらん岩体が上部マントルから上昇する過程で形成されたものと解釈されている(Sawaguchi, 2004)。これより、巨晶かんらん石と細粒部は、上部マントル内を上昇する間にA-typeファブリックを形成したと考えられる。
以上のことから、巨晶かんらん石は上部マントル内に既に存在しており、水の多い条件下でラメラ成分はもともと固溶しており、幌満かんらん岩体が上部マントルから上昇する過程で、A-typeファブリックを形成する条件下で塑性変形を受けたと考えられる。