日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD21] 測地学一般

2015年5月27日(水) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*風間 卓仁(京都大学理学研究科)、松尾 功二(国土地理院)

18:15 〜 19:30

[SGD21-P02] キネマティックPPP解析における対流圏遅延パラメータと座標推定値の分離精度についての検証

平田 雄一朗1、*太田 雄策1 (1.東北大学大学院理学研究科付属地震・噴火予知研究観測センター)

キーワード:GPS, キネマティックPPP解析, 対流圏遅延, 測位精度

短い時定数の地殻変動場を捉えるための手法として近年一般的になりつつあるキネマティックGNSS解析では座標値パラメータと対流圏遅延パラメータ等,未知パラメータ間の相関が高く,両者の分離精度が低い.そのため,座標値推定精度が日座標値を推定する際のスタティックGNSS解析と比較して低いという問題点があった.そのため本研究では,湿潤大気遅延量に着目し,座標値との分離精度に関して検討を行ったのでその結果を報告する.
用いたデータは2011年3月10日におけるGEONET 1,221点のGPSデータである.解析ソフトウェアにはGIPSY OASIS II Ver. 6.3を用いた.解析においてヨーロッパ中期予報センター(ECMWF)が生成する全球数値気象モデルから期待される6時間毎の天頂湿潤大気遅延量(WZTD)を先験情報とした場合と,用いない場合のそれぞれについてキネマティックGNSS解析を多数観測点において実施し,その効果を検証した.解析の際には30秒毎のWZTDと座標値を推定した.WZTDに対してはランダムウォークの確率過程を,座標値についてはホワイトノイズの確率過程をそれぞれ仮定して推定を行った.さらにWZTD推定時のプロセスノイズの値を様々な値(1×10-8,1×10-7,1×10-6(単位はkm/sqrt(sec)))に変え,その影響を評価した.WZTDの初期値を考慮したモデルをAと表し,モデルAの中でWZTD推定時のプロセスノイズを1×10-8,1×10-7,1×10-6(単位はkm/sqrt(sec))としたモデルをそれぞれA1,A2,A3と表し,WZTDの初期値を用いない場合はモデルNとし,プロセスノイズの値によってN1,N2,N3とする.これら6種類のパラメータを用いてそれぞれ解析を行った結果,以下のような結果を得た.まずWZTDの初期値を仮定した場合と仮定しない場合のWZTD推定値にオフセットが生じるということがわかった.これはWZTDの初期値の導入によって,推定される座標値の絶対値もオフセットを持ちうることを示唆する.また,推定された座標値の3成分それぞれの標準偏差はWZTDの初期値の有無に因らず,プロセスノイズを小さくすると標準偏差も小さくなることが明らかになった.たとえば,0430(今治)観測点では,東西成分の標準偏差がA1,A2,A3,N1,N2,N3モデルでそれぞれ8.4,8.4,8.7,8.4,8.4,8.7(単位はmm)となり,上下成分の標準偏差がそれぞれ20.9,26.0,44.2,20.8,26.0,44.2(単位はmm)となった.発表では確度・精度の高いキネマティックPPP解析時系列を得るための,より最適なプロセスノイズ値の提案を,より多数のデータセットから行う予定である.