日本地球惑星科学連合2015年大会

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口頭発表

セッション記号 U (ユニオン) » ユニオン

[U-05] Future Earth - 持続可能な地球へ向けた統合的研究

2015年5月25日(月) 14:15 〜 16:00 103 (1F)

コンビーナ:*氷見山 幸夫(北海道教育大学教育学部)、中島 映至(東京大学大気海洋研究所)、谷口 真人(総合地球環境学研究所)、大谷 栄治(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、座長:山形 与志樹(独立行政法人国立環境研究所)

15:25 〜 15:40

[U05-13] 「存在の大いなる連鎖」のサステイナビリティ

*秋山 知宏1 (1.東京大学大学院新領域創成科学研究科)

近現代,科学は主体と客体を明確に分離するデカルト的二元論,ニュートン力学といった機械論的唯物論や要素還元主義が主流となり,学問分野の細分化の一途をたどってきた.しかしこのような形で学問の細分化が進むと,本来は一体であった自然を構成する各要素間のつながりや,自然の全体性への関心が希薄になり,学問分野の内部に閉じこもった研究,言い換えれば「科学のための科学」という弊害が生まれてくる」.一方,多くの社会科学者や(人文学者ではなく)人文科学者も,自分たちの研究が科学でありたいと,自然科学の方法にならった.それらは「学」というよりも「イデオロギー」による「解釈」であった部分が多い.
 世界の科学界・思想界の潮流は,産業革命以降のモダーニティ(近代性)への懐疑を超えて,ポスト近代にふさわしい新しい知(ポスト近代知)の創成へと向かっている.近代科学の弊害を除くために,学際的アプローチ(interdisciplinary approach)という考えが提唱されるようになった.そして,「社会のための科学」の必要性が説かれるようになった.近年,国際科学会議の主導するFuture Earthという新しい枠組みが動き始めている.これは,科学と社会の共創という超学際的アプローチ(transdisciplinary approach)が柱になっている.このような科学者は,社会が真実を知っていると考えているのだろうか.「社会のための科学」を実践することが,実は社会のためにならないことがあるのではないか.「ポスト近代にふさわしい学」は何に価値を見いだすべきなのか.
 本稿は,これまでの人類の叡智を踏まえて,「ポスト近代にふさわしい学」とは何かを明らかにするものである.要点は,大別して次の四つである.第一に,人類の叡智としての「存在の大いなる連鎖」の伝統的な枠組みに近代およびポスト近代の知見を統合することによって,「存在の大いなる連鎖」の統合的な枠組みを構築する.第二に,それを以て,サステイナビリティを考える学問分野の代表としての地球環境研究ないしはサステイナビリティ学(Sustainability Science)の問題点を取り上げる.第三に,統合的な枠組みに基づいて,学術界および思想界が「存在の大いなる連鎖」をそれぞれどのように捉えてきたかを明らかにする.とくに,近年になって思想界から次々に発表されている新しい哲学に共通してみられる特徴として,「降りてゆく生き方」という統合的な世界観があることを明らかにする.第四に,「存在の大いなる連鎖」の統合的な理解を深めることは個人の幸福(ウェルビーイング)や幸せ(ハピネス)だけでなく人類や地球の存続にも重要であることを明らかにして,さらにサステイナビリティ学の方法論に対して提言をおこなう.