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[MIS29-11] フェーズドアレイレーダネットワークにおける降雨減衰を考慮した合成手法の検討
キーワード:フェーズドアレレイレーダ, 降雨減衰, 降雨減衰補正, レーダネットワーク
ゲリラ豪雨や竜巻等のシビア現象を含む一般的な降水観測において,リモートセンシング技術は有効である.従来型の気象レーダの多くは,パラボラタイプのアンテナを用いてビーム幅1 [deg]程度の電波を放射し,仰角・方位角方向ともに機械走査を行っている.この走査方法は,低仰角の観測に1~5分程度,未観測域を含む立体的な観測に5~10分程度を要する.また従来型のレーダは距離分解能が500 [m]程度である.しかし,シビア現象の多くは数分のうちに局地的に発生するため,従来型レーダはシビア現象の捕捉には不十分である.さらに従来型レーダは半径数百 [km]という広範囲の観測を行うため,レーダ遠方で地球の曲率に伴い低高度の未観測域が発生するという問題も存在する.一方,大阪大学吹田キャンパスと神戸市西区に設置されているX帯フェーズドアレイレーダ(以下,PAR)は,距離分解能100 [m],時間分解能30 [sec]という従来型レーダに比し非常に高分解能であり,仰角方向に電子走査,方位角方向に機械走査を行っている.また観測範囲は60 [km]であるため,従来型レーダと比し地球の曲率の影響はあまりない.しかし,PARはX帯を使用しているためC帯等のレーダよりも大きな降雨減衰が発生する.この問題に対処するには,レーダを複数配置したネットワーク観測が有効である.なぜならば,複数レーダの観測により単体レーダでは降雨減衰の影響により捕捉が不十分であった雨雲でも,他方のレーダから相補的に観測し,減衰補正の精度向上が期待されるからである.また、降雨減衰の補正手法の一つとして,Hitschfeld-Bordan法(以下,HB法)が用いられている.しかし,減衰量の大きいX帯のレーダにHB法を適用すると,補正値が発散してしまい降水量を過大推定してしまうという問題もある.本研究では,これらの問題に対処するため,2台のPARを用いたネットワーク観測領域における降雨減衰を考慮した合成手法を提案する.