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[PPS22-02] NWA1232 CO3隕石に含まれる水質変成の痕跡を示すクラスト
キーワード:CO隕石, クラスト, 角礫岩化, 水質変成, TEM, SR-XRD
これまで,水質変成や角礫岩化の痕跡を示すCO隕石はほとんど報告されていないことから,CO母天体はドライで静的な天体であると考えられてきた。しかし,Northwest Africa 1232(NWA1232)は,熱変成度の異なる3つの岩相(A, B, C)からなる角礫岩組織を示す珍しいCO3隕石である[1, 2]。さらに最近,我々は,NWA1232隕石の岩相A内に,熱変成度の異なる多数の小さな(直径 100-1800 μm)クラストが存在することを見出した[3, 4]。これらのクラストの多くは,非常に熱変成度が低く,含水鉱物を含んでいる。NWA1232隕石が示すこれらの特徴は,CO母天体の形成過程に関する新たな情報を含んでいると考えられる。本研究では,これらの含水鉱物を含むクラストについて,形成過程の解明を目的に岩石・鉱物学的な特徴を詳しく調べた。隕石薄片の組織観察・組成分析にはSEM-EDS,TEM-EDS,EPMA-WDSを,微小鉱物の結晶相同定にはSPring-8のSR-XRDを用いた。
クラストは岩相A内の広い範囲に分布しており,それらのうち含水鉱物を含むものが大部分であり,岩相Aの約2 vol. %を占めている。クラストの多くは,単一のコンドリュールとその周りをリムのように囲む細粒なマトリックス物質からなるが,比較的大きく複数のコンドリュールやCAIを含むものも少数存在する。
クラスト中のコンドリュールは,ほとんどがType Iであり,オリビン斑晶はFe-Mgゾーニングを示さず,均質(~Fa1)である。このような特徴は,熱変成度の低いCO3.0隕石に類似している。また,コンドリュール中のエンスタタイト斑晶やメソスタシスの一部は,微小な(10-20 nm)層状ケイ酸塩鉱物と少量のFe,Si,Mgに富む非晶質物質に交代している。これらの非晶質物質中には,ごく少量の細粒な(<100 nm)オリビン粒子が含まれている。TEM観察の結果,層状ケイ酸塩のほとんどは,~0.7 nmの層間隔を示すことから,サーペンティンであると考えられる。ただし,1.0-1.1 nmの層間隔をもつスメクタイトも少量存在する。これらの層状ケイ酸塩は,組成的には非晶質物質と区別できない。
一方,クラストのコンドリュールを囲むリム状のマトリックスは,主にFe,Si,Mgに富む非晶質物質からなり,比較的粗粒な(1-2 μm)マグネタイト,Mgに富むオリビン,エンスタタイト,細粒な(100-500 nm)オリビン,トロイライト,微小な(10-20 nm)サーペンティンを含んでいる。サーペンティンは,組成的には非晶質物質と区別できない。この非晶質物質は,鉱物学的特徴・化学組成がコンドリュール中の非晶質物質に類似している。
以上の結果から,クラストは弱い水質変成を経験していると考えられる。一方,水質変成の影響はクラストの外部には及んでいないことから,クラストは,母天体中の,隕石が最終的に固化した場所とは異なる場所で水質変成を経験した後,角礫岩化作用によって細かく破砕し,岩相A内に混合したと考えられる。また,クラスト中のコンドリュール,マトリックスの鉱物学的特徴・化学組成は,極めて始原的とされるALHA77307 CO3.0隕石[5]に類似しており,成因的な関連が示唆される。
References: [1] Kiriishi and Tomeoka (2008), JMPS, 103, 161-165. [2] Umehara et al. (2009), JAMS Annual Meeting (abstract). [3] Kiriishi et al. (2009), JAMS Annual Meeting (abstract). [4] Matsumoto et al. (2014), JpGU Meeting (abstract). [5] Brearley (1993), GCA, 57, 1521-1550.
クラストは岩相A内の広い範囲に分布しており,それらのうち含水鉱物を含むものが大部分であり,岩相Aの約2 vol. %を占めている。クラストの多くは,単一のコンドリュールとその周りをリムのように囲む細粒なマトリックス物質からなるが,比較的大きく複数のコンドリュールやCAIを含むものも少数存在する。
クラスト中のコンドリュールは,ほとんどがType Iであり,オリビン斑晶はFe-Mgゾーニングを示さず,均質(~Fa1)である。このような特徴は,熱変成度の低いCO3.0隕石に類似している。また,コンドリュール中のエンスタタイト斑晶やメソスタシスの一部は,微小な(10-20 nm)層状ケイ酸塩鉱物と少量のFe,Si,Mgに富む非晶質物質に交代している。これらの非晶質物質中には,ごく少量の細粒な(<100 nm)オリビン粒子が含まれている。TEM観察の結果,層状ケイ酸塩のほとんどは,~0.7 nmの層間隔を示すことから,サーペンティンであると考えられる。ただし,1.0-1.1 nmの層間隔をもつスメクタイトも少量存在する。これらの層状ケイ酸塩は,組成的には非晶質物質と区別できない。
一方,クラストのコンドリュールを囲むリム状のマトリックスは,主にFe,Si,Mgに富む非晶質物質からなり,比較的粗粒な(1-2 μm)マグネタイト,Mgに富むオリビン,エンスタタイト,細粒な(100-500 nm)オリビン,トロイライト,微小な(10-20 nm)サーペンティンを含んでいる。サーペンティンは,組成的には非晶質物質と区別できない。この非晶質物質は,鉱物学的特徴・化学組成がコンドリュール中の非晶質物質に類似している。
以上の結果から,クラストは弱い水質変成を経験していると考えられる。一方,水質変成の影響はクラストの外部には及んでいないことから,クラストは,母天体中の,隕石が最終的に固化した場所とは異なる場所で水質変成を経験した後,角礫岩化作用によって細かく破砕し,岩相A内に混合したと考えられる。また,クラスト中のコンドリュール,マトリックスの鉱物学的特徴・化学組成は,極めて始原的とされるALHA77307 CO3.0隕石[5]に類似しており,成因的な関連が示唆される。
References: [1] Kiriishi and Tomeoka (2008), JMPS, 103, 161-165. [2] Umehara et al. (2009), JAMS Annual Meeting (abstract). [3] Kiriishi et al. (2009), JAMS Annual Meeting (abstract). [4] Matsumoto et al. (2014), JpGU Meeting (abstract). [5] Brearley (1993), GCA, 57, 1521-1550.