14:50 〜 14:53
★ [PPS05-P01] SVM法を用いた火星表面の磁気異常マッピング
ポスター講演3分口頭発表枠
キーワード:火星, 磁気異常, 火星表面
火星にはグローバルなダイナモ起源の磁場は存在していないが、磁気異常として地殻起源の強い磁気異常が人工衛星の観測において検出されてきた(Acuňa et al., 1998)。現在までの火星磁気異常マップは全て比較的高い高度に規格化されていて、例えば磁力計データを用いたAcuňa et al. (2001)やConnerney et al. (2005)では高度400km、電子反射率計を用いたLillis et al. (2008)では高度185kmに規格化されている。これらの磁気異常からは、磁気縞模様のような系統的なパターンが見られることがある。Connerney et al. (2005)はMeridiani地域で約25°の波長を持つ線形磁気異常が見られることを報告し、ここから火星初期にはプレートテクトニクスが存在していた可能性を示唆した。このように磁気異常は、磁化獲得に関連した過去の火星の地質活動の情報を持っている可能性が考えられる。それゆえ火星磁気異常と、地形・地質等の表面の特徴を比較することは火星進化の理解において重要である。このような比較する目的においては、高い高度に規格化された先行研究での磁気異常マップは空間分解能が低いために適さない。高度400kmにて観測される磁気異常は、実際上直径約800km(火星の約13°に相当)の地域の地殻起源の磁場の畳み込みである。加えて、高度に依存して短波長成分は急激に減衰するので、高い高度では地殻磁気異常の細かい構造を見ることは難しい。この問題に対処するために、我々はTsunakawa et al. (2014)において月磁気異常の表面マッピングのために開発されたsurface vector mapping (SVM)法を、火星の磁気異常に適応した。火星磁気異常の観測に対する適用可能性を確認するために、火星南半球にあるTerra Sirrenum地域にてSVM法をテストした。本研究ではSVM法から推定された表面磁場半径成分に基づき、先行研究(Purucker et al., 2000)との一致を確認するために、高度200kmでの磁場を再現した。SVMマップの半径方向成分は幅の大きさが約3°の磁気縞模様を見せ、これは先行研究(Connerney et al., 2005)のマップに比べて非常に小さい。我々は、Connerney et al. (2005)においてプレートテクトニクスの証拠があると示唆された赤道近くのMeridiani Planum地域にもSVM法を適応した。SVMマップの半径方向成分においてもいくつかの細長い磁気異常は見られたが、全体的な磁気異常の構造は非常に複雑であり、プレートテクトニクスを支持する構造を確認することは難しいと考えられる。