18:15 〜 19:30
[SGL40-P09] 福井県大野市長野地域に分布する手取層群における層序
キーワード:手取層群, 九頭竜亜層群, 石徹白亜層群, 層序, 礫岩, 長野地域
手取層群は,浅海成~非海成の中部ジュラ系~下部白亜系であり,その分布は神通区と白山区の2つに大別される.同層群は,一般に下位から九頭竜亜層群,石徹白亜層群,赤岩亜層群の3つに細分される(前田, 1961).福井県の九頭竜川上流域には白山区の手取層群が分布する.
九頭竜川上流域における長野地域には,九頭竜亜層群貝皿層から赤岩亜層群におよぶ一連の層序が分布するとされている(たとえば,山田ほか, 1989;Fujita, 2002;Matsukawa et al., 2006など).また,同地域は,古来より知られているアンモノイド産地である.長野のアンモノイド産出層は,Bathonian~Callovianの貝皿層あるいは九頭竜亜層群中部層として地質図に表現されてきた.しかし,この最下部の頁岩層からは,Oxfordianを示すアンモノイドが産出することから(Sato and Westermann, 1991),模式地である石徹白地域の貝皿層よりも若いことが知られている.
本研究では,石徹白地域と,その東方に位置する長野地域の2ヶ所で地質調査を行い,層序対比の再検討を行った.
長野地域の手取層群は,下位よりA層,B層,C層に区分される.A層は泥岩主体,B層は砂岩泥岩互層主体,C層は礫岩砂岩シルト岩互層主体である.A層は,海生軟体動物化石を産出し,生痕化石を豊富に含む.層厚は360m以上である.B層は,下部では生痕化石に富み,中部から上部にかけて植物化石が産出する.とくに,上部では木根化石が観察される.層厚は280~380mである.C層は,下位のB層を大規模に削剥しており,基底部では大礫が多く観察される.また,シルト岩部分からは植物化石が産出する.層厚は190m以上である.A層からC層は,ほぼ東西走向高角北傾斜の同斜構造を示す.
長野地域の岩相層序を,模式地である石徹白地域の岩相層序と比較した結果,大局的に見て,A層からC層は,貝皿層から山原層に類似した岩相層序を示すが,両地域は,礫種構成および産出化石をはじめ,いくつかの相違が見られる.B層は生痕化石と木根化石が見られることから,上位へ向かって海成層から陸成層に変遷していることが分かった.また,B層およびC層の礫種を観察した結果,どちらも花崗岩が主体ではあるものの,上位のC層に向かってチャート礫の量が増加するような傾向が見られた.これは,Fujita(2002)が示した岩相変化と同様である.ただし,Fujita(2002)は,葦谷層上部から上半原層・大淵層にかけての変化であり,これは岩相的に調和的でない.
本研究の結論として,長野地域の手取層群は,石徹白地域の手取層群と岩相の細かな差異や年代のずれがあることから,類似した堆積場で形成したと考えられるが,長野地域における手取層群の形成史を解明するためには,上半原地域など,さらに東方の地域の調査が必要である.
九頭竜川上流域における長野地域には,九頭竜亜層群貝皿層から赤岩亜層群におよぶ一連の層序が分布するとされている(たとえば,山田ほか, 1989;Fujita, 2002;Matsukawa et al., 2006など).また,同地域は,古来より知られているアンモノイド産地である.長野のアンモノイド産出層は,Bathonian~Callovianの貝皿層あるいは九頭竜亜層群中部層として地質図に表現されてきた.しかし,この最下部の頁岩層からは,Oxfordianを示すアンモノイドが産出することから(Sato and Westermann, 1991),模式地である石徹白地域の貝皿層よりも若いことが知られている.
本研究では,石徹白地域と,その東方に位置する長野地域の2ヶ所で地質調査を行い,層序対比の再検討を行った.
長野地域の手取層群は,下位よりA層,B層,C層に区分される.A層は泥岩主体,B層は砂岩泥岩互層主体,C層は礫岩砂岩シルト岩互層主体である.A層は,海生軟体動物化石を産出し,生痕化石を豊富に含む.層厚は360m以上である.B層は,下部では生痕化石に富み,中部から上部にかけて植物化石が産出する.とくに,上部では木根化石が観察される.層厚は280~380mである.C層は,下位のB層を大規模に削剥しており,基底部では大礫が多く観察される.また,シルト岩部分からは植物化石が産出する.層厚は190m以上である.A層からC層は,ほぼ東西走向高角北傾斜の同斜構造を示す.
長野地域の岩相層序を,模式地である石徹白地域の岩相層序と比較した結果,大局的に見て,A層からC層は,貝皿層から山原層に類似した岩相層序を示すが,両地域は,礫種構成および産出化石をはじめ,いくつかの相違が見られる.B層は生痕化石と木根化石が見られることから,上位へ向かって海成層から陸成層に変遷していることが分かった.また,B層およびC層の礫種を観察した結果,どちらも花崗岩が主体ではあるものの,上位のC層に向かってチャート礫の量が増加するような傾向が見られた.これは,Fujita(2002)が示した岩相変化と同様である.ただし,Fujita(2002)は,葦谷層上部から上半原層・大淵層にかけての変化であり,これは岩相的に調和的でない.
本研究の結論として,長野地域の手取層群は,石徹白地域の手取層群と岩相の細かな差異や年代のずれがあることから,類似した堆積場で形成したと考えられるが,長野地域における手取層群の形成史を解明するためには,上半原地域など,さらに東方の地域の調査が必要である.