日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT54] 合成開口レーダー

2015年5月25日(月) 09:00 〜 10:45 201A (2F)

コンビーナ:*山之口 勤(一般財団法人 リモート・センシング技術センター)、小林 知勝(国土交通省国土地理院)、宮城 洋介(防災科学技術研究所)、座長:山之口 勤(一般財団法人 リモート・センシング技術センター)、小林 知勝(国土交通省国土地理院)

10:36 〜 10:39

[STT54-P03] 合成開口レーダーによる火山噴火活動の長期的モニタリングの有用性

ポスター講演3分口頭発表枠

*本田 健1鵜殿 俊昭1下村 博之1野崎 高義1中田 節也2金子 隆之2前野 深2 (1.株式会社パスコ、2.東京大学地震研究所)

キーワード:合成開口レーダー, 火山モニタリング

【はじめに】
西之島は東京の南約1000kmに位置する無人島である。2013年11月20日に西之島南東約500mの地点で新たな噴火が確認され、同年12月26日には西之島と一体化、2014年10月には西之島の大半が溶岩に覆われるなど、溶岩流出を伴う活発な噴火が現在も継続している。しかしながら、一番近い有人の島である小笠原諸島から約130km離れていることから、目視や観測機器による常時観測は困難である。航空機によって上空から監視することは可能であるが、噴火による航空障害も懸念される。
著者らは、火山島の発達形態を限りなく精緻に記録することを目的として、安全且つ定期的に観測が可能な合成開口レーダー衛星を用いた長期的観測を実施した。
【観測の概要】
今回観測に用いたTerraSAR-XはXバンド合成開口レーダーを搭載した、回帰日数11日の衛星である。観測は「撮影モード:高分解能SpotLight300MHz(空間分解能1.1-1.8 m)、偏波:HH、衛星軌道:Descending」で実施し、噴火2日後の2013年11月22日から2015年2月4日までに計30回撮影している。また画像分析には地図投影した後方散乱強度値を用いた。
【モニタリング結果】
島の形状変化をみると、新島は噴火直後から溶岩の流出方向を変えながら拡大し、噴火開始の約1ヶ月半後には西之島と陸続きとなった。2014年5月17日まではほぼ同心円状に拡大したが、同年6月8日には東側への溶岩の流出が確認され同年9月4日まで島は東側に拡大した。さらに同年9月26日には北側への溶岩の流出が確認され、西之島をほぼ覆い尽くす形で現在に至っている。撮影時点の島の面積は、2014年1月5日は約0.25km2(0.54×104 m2/day)、同年5月17日は約0.9km2(0.49×104 m2/day)、同年9月4日は約1.3km2(0.36×104 m2/day)、同年9月26日は約1.7km2(1.80×104 m2/day)、2015年2月4は約2.5km2(0.61×104 m2/day)となった。
次に火山活動の状況をみると、火口や火口内の溶岩ドーム状の地形、溶岩ローブ、溶岩の流下方向がはっきり確認できた。溶岩ローブは火口から一直線に海岸に向かっているのではなく、左右に蛇行しながら流下している様子が確認できることから、地形の微妙な凹凸の上を流下したものと考えられる。また溶岩ローブが固定された後もその先端から島が拡大していることから、溶岩ローブ内を通じて溶岩が海岸線に供給されたと推測できる。
一方中央火口をみると、2014年11月9日以降火口が水平方向に東に約40m移動していることが確認された。水平位置が変わっていないとすれば中央火口は衛星に近づいていることを示唆しており、水平移動量とレーダーの入射角より中央火口丘は約50m高くなったと推測できる。
【考察】
今回SAR衛星によって火山活動を長期的にモニタリングした結果、火山活動の詳細な変化をとらえることが出来た。このような成果が得られたのは、空間解像度が高いXバンド衛星を用いたこと、高頻度で撮影を繰り返したこと、観測に影響を与える植生が存在しないことがあげられる。
ただし、今回の観測ではレーダーの照射方向に対して直交方向(南北方向)に流下する溶岩流は明瞭に判別できたが、照射方向(東西方向)の場合は不明瞭であることが確認されている。SAR画像を解析する際には、レーダーの照射方向を考慮する必要がある。
【さいごに】
SARによる火山活動の監視は、衛星の周回性により観測日時が限定されるものの、天候や無人島などの地理的条件に左右されずに監視が可能であることが確認された。また衛星に搭載されたレーダーの特性によって空間解像度や透過性が異なることから、例えば地表面の観測にはXバンドのSAR衛星、山体膨張にはLバンドのSAR衛星を用いるなど、目的に応じて衛星を使い分けることも考えられる。
今後は火山噴火の前兆となる山体膨張の監視等の技術開発を推進し、火山災害の軽減に向けてSAR衛星を利用した継続的な火山監視の実現を目指すことが望まれる。