日本地球惑星科学連合2015年大会

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ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM34] 地磁気・古地磁気・岩石磁気

2015年5月24日(日) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*望月 伸竜(熊本大学大学院先導機構)、松島 政貴(東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻)

18:15 〜 19:30

[SEM34-P04] 松本市高畑遺跡と和田太子堂遺跡の考古地磁気学的研究

*邊見 涼1齋藤 武士1 (1.信州大学理学部地質科学科)

キーワード:考古地磁気学, 地磁気永年変化, 非双極子成分, 熱残留磁化, 堆積残留磁化, 遺跡

本発表で筆者らは, 長野県松本市の高畑遺跡と和田太子堂遺跡の4サイト(それぞれTK2~4, W1)で発見された被熱痕跡を示す土壌(焼土)の考古地磁気方位を報告する。被熱の影響を評価するため,現地で携帯型の帯磁率計を用いて地表面の帯磁率測定を行い,被熱痕跡が認められない箇所(非被熱部)からも試料を採取して残留磁化測定を行った。得られた結果を基に,被熱と帯磁率・NRM強度の関係,残留磁化の起源,遺跡の年代,松本市における地磁気変動の地域差について議論を行う。
携帯型の帯磁率計を用いて現地で地表面の帯磁率を測定した結果, 土壌の種類が異なる一部の箇所を除き, 同質の土壌から採取した試料については, 被熱度が高くなるにつれて帯磁率値も大きくなった(平均8~11(SI), 最大値25(SI))。また, 実験室での測定結果から, 消磁前のNRM強度と帯磁率も同様に, 被熱度が高くなるにつれて値が大きくなることがわかった。NRM強度だけでなく帯磁率の値も変化したことから, 被熱の結果TRMが獲得されたことに加えて,磁性鉱物の量が増加したことが考えられる。
段階交流消磁実験の結果, 焼土から採取した試料だけでなく非被熱部から採取した試料からも, 原点に向かう直線性の良い磁化成分が得られた。産状からそれぞれTRM起源, DRM起源の磁化成分だと考えられる。TRM起源と考えられる磁化成分はNRM強度, 帯磁率ともに高くなる。そのため今回はNRM強度, 帯磁率が低いものはDRM起源と考え, 考古地磁気方位を求める際には除外した。得られた方位はそれぞれTK2(偏角=-0.6°,伏角=51.9°,α95=2.3°,k=678.2), TK3(偏角=-4.3°,伏角=52.1°,α95=1.6°,k=1234.6), TK4(偏角=-1.7,伏角=56.1,α95=2.2°,k=500), W1(偏角=-11.7°,伏角=49.5°,α95=1.8°,k=950.1)となり, 集中度の良い考古地磁気方位が得られた。得られた方位をHatakeyama et al. (in prep.)の永年変化曲線と比較して年代を推定したところ, 土器編年による年代と調和的な年代が得られたが, 考古地磁気による年代のほうが50年ほど古い年代値を示した。また, 得られた方位は, Hatakeyama et al. (in prep.)の永年変化曲線より東側に偏っており, 松本市内において西偏の影響が弱かったことが考えられる。現在の偏角の磁気図(国土地理院,2010年度値)によると非双極子成分の影響で甲府を中心に偏角が数度ほど小さい範囲が見られ, 松本市も同緯度地域と比べて1度程度偏角が小さい。このため過去においても非双極子成分の影響を受けて,偏角の値が小さかった可能性が考えられる。