日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS23] ジオパーク

2015年5月25日(月) 14:15 〜 16:00 101B (1F)

コンビーナ:*尾方 隆幸(琉球大学教育学部)、渡辺 真人(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、有馬 貴之(帝京大学 経済学部 観光経営学科)、平松 良浩(金沢大学理工研究域自然システム学系)、大野 希一(島原半島ジオパーク協議会)、藁谷 哲也(日本大学大学院理工学研究科)、植木 岳雪(千葉科学大学危機管理学部)、座長:尾方 隆幸(琉球大学教育学部)、平松 良浩(金沢大学理工研究域自然システム学系)

14:45 〜 15:00

[MIS23-03] 山陰海岸ジオパークにおける磯(海岸線)の地生態学的研究(生物多様性)

*森野 善広1田村 友紀夫1北村 格一2 (1.パシフィックコンサルタンツ株式会社、2.株式会社 地域環境計画)

キーワード:地生態学, 磯, 海岸地形, 生物多様性

1 目的
山陰海岸ジオパークは、日本海形成から現在に至る様々な地形や地質が存在し、それらを背景とした生き物や人々の暮らし、文化・歴史に触れることができる地域です。
海岸線では、約2500万年前にさかのぼる日本海形成に関わる火成岩類や堆積岩類、日本海の海面変動や地殻変動によって形成されたリアス式海岸や砂丘をはじめとする多彩な海岸地形など、貴重な地形・地質遺産を数多く見ることができます。
本研究の目的は、地形地質の露出条件がよい海岸線(磯)において、そこに生息している生物(磯の生き物)が、どのような生息空間を利用しているのかを調査し、地形地質の多様性が生き物の多様性に関係していることを明らかにすることです。

2 地質概要
調査地域は、京丹後市の海岸線を主体として、京都府京丹後市網野町掛津(第三紀北但層群堆積岩類)、同市丹後町竹野(第三紀北但層群安山岩)、および兵庫県豊岡市竹野町切浜(花崗岩)です。

3 地質別風化浸食地形と生息生物
地質や岩相の違いにより、表面の風化浸食の形状が異なることがわかる。生物が生息する空間としては、“窪み”状の形状があることが重要であり、凝灰岩や花崗岩はそのような生息空間を作り出し、さらに多様な"窪み“の形態をそれぞれ選択して、多種多様な生物の生息場所となっている。また、火成岩特有の節理や堆積岩の層理面などの直線的な割れ目は、幅の狭い溝状の裂罅部を形成し、狭い空間を利用する生き物の生息空間として重要である。
地質別の生物分布状況については、凝灰角礫岩がもっとも生物多様性が高く、花崗岩は比較的高い。平面的な形状を示す堆積岩(砂岩、礫岩、泥岩)や火山岩類(安山岩、流紋岩)は多様性が低いことがわかる。また、火成岩類特有の節理の発達は、その割れ目の狭い空間を利用する固着性の生物(カメノテやイガイなど)にとっては、重要な生息空間となっている。
代表的な地質と生息生物
凝灰角礫岩類:イソギンチャク、イガイ、ウニ、カニ、ヤドカリ、タマキビなど巻貝、付着藻類
安山岩:カメノテ、カサガイ、イガイ、タマキビ

4 まとめと今後の展望
 山陰海岸ジオパークの海岸域に分布する代表的な地質について地形地質、生息生物の調査を行った。その中で地質の成因による硬さの違いや面構造の発達の程度により、多様な生物生息空間をつくり出していることがわかった。その空間を生態的な特性や行動様式に応じて(移動形態、固着性、摂食形態、避難など)生き物が利用していることがわかった。
 今後は、海岸線の地質分布を明らかにし、磯の利用(水産業としての)との関係から、ジオパークとしての観点で、地質と生物多様性について評価し、環境教育教材として、あるいはツーリズムメニューとしての可能性を検討していく予定である。
本研究を進めるにあたり、「山陰海岸ジオパーク学術研究奨励事業(平成24、25年度)」の補助金を使用した。