18:15 〜 19:30
[ACG31-P07] 北東シベリアタイガ‐ツンドラ境界域湿地土壌のメタン酸化 -培養実験と現場観測との比較-
キーワード:メタン酸化, 培養実験, フラックス観測, CH2F2, ツンドラ
北極域の湿地帯は大気メタンの重要なソースであり、気候変動にともなう温暖化と永久凍土の融解は北極域湿地帯のメタン放出を促進すると考えられる。メタン酸化は湿地から大気へのメタン放出を制御する鍵となるプロセスであり、本研究では北東シベリアのタイガ-ツンドラ移行帯における湿地土壌のメタン酸化活性を室内培養実験と阻害剤を用いたフラックス観測により測定した。2012年、2013年夏期にミズゴケ、スゲの泥炭から採取した表層土壌(0-10cm)を一定濃度のメタン(0.5-0.8%[v/v])とともにガスクロバイアル中で培養すると、遅滞期を伴わない活発なメタン酸化(培養温度15℃のとき190-270 nmol h-1 g-1乾土)が観察された。層位別のメタン酸化活性を測定したところ、水飽和層の土壌でも活発なメタン酸化が認められた。一方、2014年夏期にミズゴケおよびスゲ植生からのメタンフラックスをチャンバー法により測定するとともにメタン酸化の阻害剤(CH2F2)をチャンバー内に注入しメタンフラックスの変化を観察したが、阻害剤の影響は認められず、ミズゴケ、スゲとも植物体周辺におけるメタン酸化は低いと推察された。以上のことから、培養実験で観察された泥炭土壌の活発なメタン酸化の原因として、実際にはメタン酸化が起こらない条件の泥炭土壌でメタン酸化細菌が速やかにメタン酸化を示すような潜在的活性を有したまま生残している、あるいは大気や植物体からの拡散輸送以外にメタン酸化細菌の活性を維持する酸素の供給がある、などの可能性が示唆された。