日本地球惑星科学連合2015年大会

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ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS29] 断層のレオロジーと地震の発生過程

2015年5月24日(日) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*谷川 亘(独立行政法人海洋研究開発機構高知コア研究所)、飯沼 卓史(東北大学災害科学国際研究所)、三井 雄太(静岡大学大学院理学研究科地球科学専攻)、向吉 秀樹(島根大学大学院総合理工学研究科地球資源環境学領域)

18:15 〜 19:30

[SSS29-P10] 窒素雰囲気下におけるドレライトの摩擦強度の温度依存性

*田中 伸明1和田 純一2金川 久一1 (1.千葉大学大学院理学研究科、2.応用地質)

キーワード:ドレライト, 窒素雰囲気, 回転剪断試験, 温度依存性, 非晶質物質含有量, 摩耗物質被覆率

1990年代半ば以後、地震発生時に匹敵する高変位速度(≤数m/s)における様々な岩石試料の摩擦実験が行われ、高速域(≥10 cm/s)では変位速度の増加に伴って摩擦強度が著しく低下することが明らかとなっている。しかし、従来の高速摩擦実験では摩擦発熱による温度上昇を制御できておらず、高速域における摩擦強度の低下が温度上昇の影響である可能性を排除できない。実際、背景温度を制御したドレライト試料の大気中の摩擦実験(垂直応力1 MPa、変位速度1 cm/s、室温~1000℃)では、高速域における摩擦強度の低下が温度上昇の影響によって説明し得ることが示されている(Noda et al., 2011, JGR)。この実験では、ドレライトの摩擦強度の温度変化が摩耗物質中の非晶質物質含有量と負の相関、含鉄鉱物の高温酸化による酸化鉄鉱物含有量と正の相関を示すことが示されているが、地下の断層は酸素に乏しい環境下にあるため、実験で観察されたような含鉄鉱物の高温酸化は現実的ではない。
そこで、酸素に乏しい窒素雰囲気下(酸素濃度0.1%程度)で室温~600℃の温度範囲でNoda et al. (2011) と同様の実験を行い、定常摩擦強度と非晶質物質含有量およびすべり面の摩耗物質被覆率との相関を調べ、大気中のNoda et al. (2011) の実験結果と比較した。その結果、定常摩擦係数は室温で約0.52であり、100~500℃では約0.70でほぼ一定、600℃では約0.76であった。非晶質物質含有量は室温~500℃で60 ±6 wt%の範囲内であったのに対し、600℃では約38 wt%であった。また、摩耗物質被覆率は室温で約0.78であったのに対し、100~600℃では約0.9とほぼ一定であった。窒素雰囲気下のドレライトの定常摩擦係数は、室温では大気中(約0.77)と比べてかなり小さく、逆に100~600℃では大気中(約0.61 ±0.03)より大きくなっている。また、100~600℃の温度範囲では非晶質物質含有量との間に大気中で認められたような負の相関関係が認められるが、一方、室温~500℃の温度範囲では摩耗物質被覆率との間に正の相関関係が認められる。しかしながら、このような相関関係は、前者の場合室温~100℃、後者の場合500~600℃の温度範囲で、それぞれ不明瞭になっている。
窒素雰囲気下のドレライトの室温の定常摩擦強度が大気中と比べて小さいのは摩耗物質に水分吸着の影響がないためと考えられるが、100~600℃の定常摩擦強度が大気中と比べて大きくなる理由は現時点では不明である。また、定常摩擦強度と非晶質物質含有量およびすべり面の摩耗物質被覆率との相関・非相関が何に起因しているのかも、現時点では明らかになっていない。これらについて、今後検討を進めていく予定である。