14:45 〜 15:15
★ [G02-03] 内陸地震の謎と防災教育
キーワード:地震, 地震災害, 震災, 内陸地震, 学校教育
これまでに比べて地震観測点の数を桁違いに増やすことにより,地下の様子や状態を詳しく推定し,内陸地震の謎を解明して発生予測に結びつけようとする計画,いわゆる「満点計画」を開始した.プレート境界に起こる地震とは違って,内陸地震については,断層の歪みエネルギーがどのように貯まっていくのかなど,未解明の問題が非常に多いのである.
内陸地震に限らず,室外でデータを取る研究においては,計測システムの様々な制約のために,これまで十分なデータを得ることが出来ないことが多かった.近年,省電力技術など最新のテクノロジーを駆使することにより,次世代型稠密地震観測システム(通称,満点システム)が開発され,『万点規模』のオフライン地震観測が可能となった.これを用いた研究が,日本各地や海外で行われている.そして,そのための基地として,京都大学防災研究所の阿武山観測所を活用している.
満点計画を進める上での問題の一つは観測点の選定とメンテナンスである.この問題に関しては,学校や地元の方々と連携し土地交渉やメンテナンスを共同で行う可能性を探っており,小学生が地震計の設置・メンテナンスを行う試み(満点計画を活用した防災教育プログラム)を開始した.最先端の研究に参画することで,児童・生徒や一般の方々は,防災に関しても能動的になるとともに,科学一般に対する関心を持つようになる.将来的には,この共同参画の仕組みを,防災や自然科学に関するクラブ(地域の拠点)のようなものに発展させたい.
平行して,阿武山観測所では,人と防災未来センターの協力を得て,歴史的地震計群と満点計画を活用し,新たなアウトリート活動を開始した(サイエンス・ミュージアム構想プロジェクト).地震観測所を単に公開するだけではなく,先端研究が行われている現場で,色々なプログラムを通して専門家とそうでない人々が触れあうことにより,地震や防災について理解を深めるとともに,減災に結びつけるというものである.地震計のメンテを行っている小学生も阿武山観測所を訪問し,地震観測の歴史等を学んだ.満点システムを用いた観測実習も行っている.また,当初来訪者として観測所を訪れた一般の方(希望者)を組織化して,観測所のアウトリーチ活動を支援するサポータースタッフとして再編する試みも開始した.満点計画において,阿武山は単なるハード的,物的な基地に留まらず,ソフト的,上記の共同参画の仕組みのセンター的な機能をも担うことが出来ると期待される.
防災のための知識や技術の高度化に伴って,近年,防災といえば専門家や行政の実務者が担うもので,非専門家(一般の人々)はそれに従っていればよいとの考えが拡大してきた.こうした考え方のもとでは,防災教育の中心テーマは,専門家が獲得ないし開発した正しい知識・高度な技術を非専門家に指導・伝達すること,および,そのための教材の開発が中心であった.しかし,そのような防災教育では,かえって,防災専門家と非専門家の間の障壁を高め,例えば,行政・専門家依存(「防災は行政や専門家がやること」意識の増大)や,情報待ち(災害情報が質量ともに向上するにつれて,逆に,人びとが情報を待って迅速に避難を行わない)といった問題を引き起こす恐れがある.よって,非専門家が,防災を,自分たちも専門家と共に担うことができる,あるいは共に担うべき活動だと実感する取り組みが重要となると考えている.
内陸地震に限らず,室外でデータを取る研究においては,計測システムの様々な制約のために,これまで十分なデータを得ることが出来ないことが多かった.近年,省電力技術など最新のテクノロジーを駆使することにより,次世代型稠密地震観測システム(通称,満点システム)が開発され,『万点規模』のオフライン地震観測が可能となった.これを用いた研究が,日本各地や海外で行われている.そして,そのための基地として,京都大学防災研究所の阿武山観測所を活用している.
満点計画を進める上での問題の一つは観測点の選定とメンテナンスである.この問題に関しては,学校や地元の方々と連携し土地交渉やメンテナンスを共同で行う可能性を探っており,小学生が地震計の設置・メンテナンスを行う試み(満点計画を活用した防災教育プログラム)を開始した.最先端の研究に参画することで,児童・生徒や一般の方々は,防災に関しても能動的になるとともに,科学一般に対する関心を持つようになる.将来的には,この共同参画の仕組みを,防災や自然科学に関するクラブ(地域の拠点)のようなものに発展させたい.
平行して,阿武山観測所では,人と防災未来センターの協力を得て,歴史的地震計群と満点計画を活用し,新たなアウトリート活動を開始した(サイエンス・ミュージアム構想プロジェクト).地震観測所を単に公開するだけではなく,先端研究が行われている現場で,色々なプログラムを通して専門家とそうでない人々が触れあうことにより,地震や防災について理解を深めるとともに,減災に結びつけるというものである.地震計のメンテを行っている小学生も阿武山観測所を訪問し,地震観測の歴史等を学んだ.満点システムを用いた観測実習も行っている.また,当初来訪者として観測所を訪れた一般の方(希望者)を組織化して,観測所のアウトリーチ活動を支援するサポータースタッフとして再編する試みも開始した.満点計画において,阿武山は単なるハード的,物的な基地に留まらず,ソフト的,上記の共同参画の仕組みのセンター的な機能をも担うことが出来ると期待される.
防災のための知識や技術の高度化に伴って,近年,防災といえば専門家や行政の実務者が担うもので,非専門家(一般の人々)はそれに従っていればよいとの考えが拡大してきた.こうした考え方のもとでは,防災教育の中心テーマは,専門家が獲得ないし開発した正しい知識・高度な技術を非専門家に指導・伝達すること,および,そのための教材の開発が中心であった.しかし,そのような防災教育では,かえって,防災専門家と非専門家の間の障壁を高め,例えば,行政・専門家依存(「防災は行政や専門家がやること」意識の増大)や,情報待ち(災害情報が質量ともに向上するにつれて,逆に,人びとが情報を待って迅速に避難を行わない)といった問題を引き起こす恐れがある.よって,非専門家が,防災を,自分たちも専門家と共に担うことができる,あるいは共に担うべき活動だと実感する取り組みが重要となると考えている.