10:30 〜 10:45
[BPT23-07] 流体包有物年代による地球史を通じた熱水活動年代の制約の試み
キーワード:冥王代, ジルコン, Ar-Ar年代, 包有物, レーザー熔融
海底での鉱床形成過程を、地球史を通じた物質分化メカニズムに位置づけることは、鉱床形成を成因から理解し、現在の賦存状況を予測、効率的に探査する上で必要不可欠である。このためには、地球初期地殻の岩石学的特徴とその形成時期、プレートテクトニクスの開始時期、熱水系の活動様式など、その後の地球史を決定付けた初期進化イベントの年代や化学的特徴を得ることが重要である。しかし、地球には、形成後5億年間の地質体が残されていないため、これらの探求は残存性の高い鉱物であるジルコンの産出年代分布や、化学・同位体組成、ジルコン粒子に含まれる鉱物包有物に基づいて議論されてきた。特に、石英、白雲母、モナズ石やアパタイトなどの包有物の存在はホストの冥王代ジルコン(40~44億年前)の母岩が花崗岩質地殻であった証拠とされてきた。
近年、火成作用では生じえない低温で形成される鉄水酸化鉱物や若い年代を持つモナズ石包有物が見いだされ、包有物の起源そのものに疑問が呈されている。この解決には、重要なインデックス鉱物である雲母や長石類の包有物について、局所Ar-Ar年代測定を行い、熱履歴情報を解析するとともに、信頼できる年代値を獲得し、包有物形成の時期を定量解析する必要がある。この目的で、段階加熱希ガス分析装置を利用してAr-Ar年代測定を行う。
冥王代ジルコン粒子の保存状態や雲母類などの包有物の存在に基づきジルコン粒子を抽出・選別し、京都大学原子炉実験所・研究用原子炉にて中性子照射後、充分冷却されたため、岡山理科大学自然科学研究所の質量分析装置にてAr-Ar年代の測定を行った。測定の手順設定には困難を極めたが、現世大気同位体組成に比較しても有意に過剰なAr-40の放出がみられている。
Ar-Ar年代値のスペクトラムには、1)約44億年というジルコン粒子形成の年代を示すスペクトラムに加えて、2)深部地球起源のいわゆる過剰アルゴンや、および、3)包有物形成後の放射起源Ar-40が含まれる。2)は、高温フラクション(1000℃以上)において、Kの核変換によるAr-39抽出量がきわめて微量にもかかわらず多量のAr-40が抽出されるため、数十億年というあり得ない年代が求められてしまう。3)では、年代スペクトルは比較的乱されておらず年代値自体の信頼性は高いが、ジルコンの形成年代ではなく包有物をもたらした変質年代と考えられる。しかも、得られた年代中央値は地質状況から推定される変質年代より古い可能性もある。また、ジルコンのU-Pb年代が、しばしばPb損失により若返って下限年代として見積もられることや、例は少ないが、ジルコン内の不十分なPbの拡散による濃集で見かけ上古い年代が与えられることとの検討も必要であろう。今後は、追試を行い形成年代となる地質的な条件とも合わせ引き続き検証していく。
近年、火成作用では生じえない低温で形成される鉄水酸化鉱物や若い年代を持つモナズ石包有物が見いだされ、包有物の起源そのものに疑問が呈されている。この解決には、重要なインデックス鉱物である雲母や長石類の包有物について、局所Ar-Ar年代測定を行い、熱履歴情報を解析するとともに、信頼できる年代値を獲得し、包有物形成の時期を定量解析する必要がある。この目的で、段階加熱希ガス分析装置を利用してAr-Ar年代測定を行う。
冥王代ジルコン粒子の保存状態や雲母類などの包有物の存在に基づきジルコン粒子を抽出・選別し、京都大学原子炉実験所・研究用原子炉にて中性子照射後、充分冷却されたため、岡山理科大学自然科学研究所の質量分析装置にてAr-Ar年代の測定を行った。測定の手順設定には困難を極めたが、現世大気同位体組成に比較しても有意に過剰なAr-40の放出がみられている。
Ar-Ar年代値のスペクトラムには、1)約44億年というジルコン粒子形成の年代を示すスペクトラムに加えて、2)深部地球起源のいわゆる過剰アルゴンや、および、3)包有物形成後の放射起源Ar-40が含まれる。2)は、高温フラクション(1000℃以上)において、Kの核変換によるAr-39抽出量がきわめて微量にもかかわらず多量のAr-40が抽出されるため、数十億年というあり得ない年代が求められてしまう。3)では、年代スペクトルは比較的乱されておらず年代値自体の信頼性は高いが、ジルコンの形成年代ではなく包有物をもたらした変質年代と考えられる。しかも、得られた年代中央値は地質状況から推定される変質年代より古い可能性もある。また、ジルコンのU-Pb年代が、しばしばPb損失により若返って下限年代として見積もられることや、例は少ないが、ジルコン内の不十分なPbの拡散による濃集で見かけ上古い年代が与えられることとの検討も必要であろう。今後は、追試を行い形成年代となる地質的な条件とも合わせ引き続き検証していく。