18:15 〜 19:30
[HTT30-P06] 小型無人機を用いた立入不可の火山地域における調査手法開発に向けて
キーワード:小型無人機, 桜島, 火山
国内の火山活動が活発化して噴火の危険性が高まるか,あるいは噴火が発生すると,その火口から半径数km以内は人の立ち入りが制限される.しかし,火山が活発化・噴火すると通常,地殻変動や噴出物によって原地形が変化することが知られており,その地形変化の程度は噴出物が噴出した火口周辺で特に大きいことが予想される.一方,火口からの噴出物が採取できればその噴火様式や,地下のマグマの情報を得ることができるほか,火山灰の質を検証することで土石流などの二次災害の可能性を精査することができるかもしれない.こうした背景のもと,筆者らは火山地域の立入制限区域内の調査を実現するロボットシステムの研究開発を進めてきた.特に平成26年度からは,主に土石流の予測精度向上を目的に,小型無人機(UAV)と各種デバイスを用いた,火口周辺の映像取得,静止画像からの三次元地形データの復元,火山灰のサンプリング等の実験を行ってきた.本発表では,昨年12月に桜島火山にて行われた実証実験結果を中心に,その調査手法と試験結果,今後の課題について報告する.
本試験で用いたUAVは,エンルート社製のZionQC730で,18インチプロペラを4枚搭載している.桜島で実施された現場検証において,このUAVは黒神川の下流域から,予め指定した経路に沿って昭和火口上空まで飛行し,離陸地点まで帰還した.昭和火口上空へのフライトは合計3 回行い,いずれのフライトにおいても,UAVは4K 画像を取得して帰還することができた.なお,離陸地点から昭和火口までは並進距離3,700m,標高差1,200mであるが,一回のフライトにおける飛行距離は8,000m,飛行速度は10m/s で,飛行時間は約20 分であった.また,地表の風速が5m程度のときのフライトにおいて,バッテリの残量はおよそ56%であった.また,飛行中,1.2GHz 帯のX-Link 通信により,飛行中の全ての地点において,解像度は低いが,UAVが取得した映像をリアルタイムに確認することができた.以上より,現在,筆者らが有するUAVにより,立入制限区域内における高解像度の動画を取得することが可能であり,例えば,浅間山の警戒レベル3 の噴火の際にも,半径4km に設定される立入制限区域内の調査を行うことが可能となると期待できる.
また,筆者らは黒神川上流域を対象にUAVで撮影した静止画約300枚に対して,各写真の特徴点の位置とカメラ座標を同時に推定する「Structure from Motion(SfM)」を用いて三次元地形モデル(DSM)を生成した.この際,複数種のSfMを用いて各ソフトの生成時間と時間当たりのDSM点群密度,精度等についても比較を行った.また,既存の航空レーザ測量データ(LP)と比較し,どの程度の差異があるか検証を行った.その結果,各ソフト間では精度に大きな差は見られないものの,稼働時間当たりの発生点群密度数にはかなりの違いが見られた.ただし,ソフトによって操作性が異なるなど,緊急時の汎用性を考慮すると一概に時間当たり点群密度が多いソフトが最も優れているとは結論しがたい.切迫状況に応じてソフトを使い分けることも重要と考えられる.また,LPとの比較においては,絶対位置の基準となる対空標識を用いるか用いないかで鉛直方向で数m程度の差異が生じた.緊急時は対空標識を設置する猶予はない場合が多いため,この標高の差異をどう縮めるかは今後の課題と言える.ただし,えん堤などの不動点と考えられる人工構造物に標高を合わせると,SfMで発生させたDSMは概ねどのソフトでも現存地形を再現できていることがわかっている.
また,本試験では,UAVから専用のデバイスを取り付け,地表の火山灰をサンプリングする実験も実施した.開発を進めている土砂サンプリングデバイスは,隣り合った二つのローラーを,モータを使ってそれぞれ内側に回転させることで土砂をデバイス内に巻き込む方式であり,この機構により,細かい粒子から最大で6cm 程度までの火山噴出物が取得可能である.ローラーの動作は,デバイスが地面に着地すると同時に開始され,10 秒ほどで50g 程度の砂または,30g 程度の砂利を取得することが可能であり,フィールド試験においても採取実績がある.今回,上記のデバイスを用いて黒神川の堆砂域において同様の試験を実施し,サンプリングにも成功したが,試験前日の降雨により地表が締め固まっていたため,十分な量をサンプリングできない状況も発生した.今後は,土壌の状況に応じてデバイスの構成を変更できるようにする必要があると考えられる.
本研究は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務の成果を活用しています。
本試験で用いたUAVは,エンルート社製のZionQC730で,18インチプロペラを4枚搭載している.桜島で実施された現場検証において,このUAVは黒神川の下流域から,予め指定した経路に沿って昭和火口上空まで飛行し,離陸地点まで帰還した.昭和火口上空へのフライトは合計3 回行い,いずれのフライトにおいても,UAVは4K 画像を取得して帰還することができた.なお,離陸地点から昭和火口までは並進距離3,700m,標高差1,200mであるが,一回のフライトにおける飛行距離は8,000m,飛行速度は10m/s で,飛行時間は約20 分であった.また,地表の風速が5m程度のときのフライトにおいて,バッテリの残量はおよそ56%であった.また,飛行中,1.2GHz 帯のX-Link 通信により,飛行中の全ての地点において,解像度は低いが,UAVが取得した映像をリアルタイムに確認することができた.以上より,現在,筆者らが有するUAVにより,立入制限区域内における高解像度の動画を取得することが可能であり,例えば,浅間山の警戒レベル3 の噴火の際にも,半径4km に設定される立入制限区域内の調査を行うことが可能となると期待できる.
また,筆者らは黒神川上流域を対象にUAVで撮影した静止画約300枚に対して,各写真の特徴点の位置とカメラ座標を同時に推定する「Structure from Motion(SfM)」を用いて三次元地形モデル(DSM)を生成した.この際,複数種のSfMを用いて各ソフトの生成時間と時間当たりのDSM点群密度,精度等についても比較を行った.また,既存の航空レーザ測量データ(LP)と比較し,どの程度の差異があるか検証を行った.その結果,各ソフト間では精度に大きな差は見られないものの,稼働時間当たりの発生点群密度数にはかなりの違いが見られた.ただし,ソフトによって操作性が異なるなど,緊急時の汎用性を考慮すると一概に時間当たり点群密度が多いソフトが最も優れているとは結論しがたい.切迫状況に応じてソフトを使い分けることも重要と考えられる.また,LPとの比較においては,絶対位置の基準となる対空標識を用いるか用いないかで鉛直方向で数m程度の差異が生じた.緊急時は対空標識を設置する猶予はない場合が多いため,この標高の差異をどう縮めるかは今後の課題と言える.ただし,えん堤などの不動点と考えられる人工構造物に標高を合わせると,SfMで発生させたDSMは概ねどのソフトでも現存地形を再現できていることがわかっている.
また,本試験では,UAVから専用のデバイスを取り付け,地表の火山灰をサンプリングする実験も実施した.開発を進めている土砂サンプリングデバイスは,隣り合った二つのローラーを,モータを使ってそれぞれ内側に回転させることで土砂をデバイス内に巻き込む方式であり,この機構により,細かい粒子から最大で6cm 程度までの火山噴出物が取得可能である.ローラーの動作は,デバイスが地面に着地すると同時に開始され,10 秒ほどで50g 程度の砂または,30g 程度の砂利を取得することが可能であり,フィールド試験においても採取実績がある.今回,上記のデバイスを用いて黒神川の堆砂域において同様の試験を実施し,サンプリングにも成功したが,試験前日の降雨により地表が締め固まっていたため,十分な量をサンプリングできない状況も発生した.今後は,土壌の状況に応じてデバイスの構成を変更できるようにする必要があると考えられる.
本研究は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務の成果を活用しています。