日本地球惑星科学連合2015年大会

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ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG57] 変動帯の構造・進化とダイナミクス

2015年5月27日(水) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*竹下 徹(北海道大学大学院理学院自然史科学専攻)、佐藤 比呂志(東京大学地震研究所地震予知研究センター)、尾鼻 浩一郎(海洋研究開発機構 地震津波海域観測研究開発センター)、西村 卓也(京都大学防災研究所)、深畑 幸俊(京都大学防災研究所)、加藤 愛太郎(名古屋大学大学院環境学研究科)、武藤 潤(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、佐藤 活志(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)、小平 秀一(海洋研究開発機構 地球内部ダイナミクス領域)、鷺谷 威(名古屋大学減災連携研究センター)、石山 達也(東京大学地震研究所)、松原 誠(防災科学技術研究所)、池田 安隆(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)

18:15 〜 19:30

[SCG57-P30] 北部三陸海岸の完新世垂直変動史-巨大地震サイクルに関連して-

菊池 諒一1、*宮内 崇裕2 (1.千葉大学理学部地球科学科、2.千葉大学大学院理学研究科地球科学コース)

キーワード:完新世, 離水海岸地形, 垂直変動史, 余効変動, 北部三陸海岸, 巨大地震

2011年東北地方太平洋沖地震時には,震源域の下限(深さ約50km)のほぼ直上に位置する海岸線(南部三陸海岸~銚子)は,地震前のプレート固着に伴う広い範囲の沈降に加えてさらに大きく沈降した(Ozawa et al., 2011)。とくに大きく沈降した南部三陸海岸はその後余効変動によって隆起に転じ,地震時沈降の約4分の1が戻りつつある(国土地理院,2014)。このペースで余効変動(深部のすべりや粘性緩和による地殻変動)が継続すれば,比較的短時間で地震時沈降は回復するとともに,次の巨大地震へ向けてプレートの固着が増強し,海岸部の沈降が始まると推定されている(Ikeda, 2014)。このようなプレート間巨大地震サイクルシナリオに従えば,2011年の震源域ではなかった北部三陸海岸においても,同様の巨大地震サイクルによって海岸の垂直変動が支配されている可能性がある。このような考え方を検証するために,本研究では,北部三陸海岸において完新世の離水海岸地形の高度分布と離水年代に基づいて垂直変動史を明らかにし,測地学的変動速度を考慮した北部三陸海岸沖の巨大地震サイクルについて検討した。
 火山灰編年学的に年代決定のなされたMIS5e期海成段丘の旧汀線は高度30mほどにあることから,10万年スケールでの平均隆起速度は0.2mm/yrを示す。完新世における離水現象の情報は3地点(北から川尻,戸類家,有家)から得られ,どの地点でも最高位の離水海岸地形(いずれも形成層準は当時の潮間帯付近で0m)の高度は4~5mにあるが,離水年代が大きく異なり,川尻では約1,000年前(10世紀前半のB-Tm火山灰降灰直前),戸類家では3,300年前(C14年代)以前,有家では4,800年前(C14年代)以前である。それらより低位の離水地形は不明である。気象庁設置の八戸験潮記録によれば,過去60年間の平均沈降速度は2mm/yrである。これらを統一的に説明できる海岸部の垂直変動ダイアグラムを作成した。
 海岸地形の離水現象は大きな隆起イベントによるもの(古いものからE1,E2,E3とする),イベント間ではプレート間固着による引きずり沈降(地震間沈降)が2mm/yrで継続していたとすると,1,000年前の隆起イベントE3直後には離水海岸地形は6~7mに存在し,同時にその値がE3イベント時の隆起量を示すことになる。各イベント直後の到達高度を連ねた直線の傾きが,10万年スケールの平均隆起速度0.2mm/yrを満たすようにすると,E2は約3,800年前に5~6mの隆起,E1は約6,200年前ごろに4~5mの隆起を伴ったと推定される。短時間に起こったこのような大きな隆起は沖合いの海底活断層運動による可能性(宮内,2012)もあるが,現時点では断層情報に乏しい。そのような隆起が南部三陸海岸で現在進行中である余効変動と同質なものであったとすると,各隆起イベントの直前に顕著な海岸沈降を伴うプレート境界型の巨大地震が北部三陸沖の日本海溝から千島海溝において発生した可能性がある。その頻度は完新世に少なくとも3回である。