日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS34] 古気候・古海洋変動

2015年5月28日(木) 14:15 〜 16:00 301A (3F)

コンビーナ:*山田 和芳(静岡県 文化・観光部 文化学術局 ふじのくに地球環境史ミュージアム整備課)、池原 実(高知大学海洋コア総合研究センター)、入野 智久(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)、岡 顕(東京大学大気海洋研究所)、岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、北場 育子(立命館大学古気候学研究センター)、北村 晃寿(静岡大学理学部地球科学教室)、佐野 雅規(総合地球環境学研究所)、中川 毅(立命館大学)、林田 明(同志社大学理工学部環境システム学科)、座長:北場 育子(立命館大学古気候学研究センター)

15:15 〜 15:30

[MIS34-14] ヤクスギ年輪の酸素同位体比による過去1500年間の夏季モンスーンの復元

*佐野 雅規1木村 勝彦2安江 恒3中塚 武1 (1.総合地球環境学研究所、2.福島大学、3.信州大学)

キーワード:樹木年輪, 酸素同位体比, 屋久島, モンスーン

近年、日本を含むアジアの温暖・湿潤地において、樹木年輪セルロースの酸素同位体比が過去の降水量や相対湿度の変動を精確に記録しているという知見が続々と報告されている。しかし、先行研究の大部分は、分析に多大な時間を要するため、遡及期間が過去数百年にとどまっているのが現状である。そこで本研究では、屋久島産の長樹齢のスギ(以下、ヤクスギ)を用いて、過去1500年間にわたって年輪の酸素同位体比を測定し、夏季のモンスーンを1年単位の解像度で復元した。
本研究では、ヤクスギの現生木や土埋木から採取したコアや円盤サンプルを使用し、まず年輪幅の変動パターンを個体間で比較することにより、年輪が形成された年代を決定した。次いで、14個体を選別して、個体毎に多数の年輪を含む1mm厚の薄板を調整し、化学処理によって薄板の形状を維持したままセルロースを抽出した。その後、顕微鏡下で1年輪毎に切り分け、TCEA-IRMSを用いて酸素同位体比を測定した。
酸素同位体比の変動は、個体間で良く同調しており、周辺の測候所データとの対比から、夏季の相対湿度を反映していることが明らかとなった。また、日本産のヒノキを用いた先行研究では、加齢に伴う酸素同位体比の長期減少トレンド(樹齢効果)が観察されており、長周期の変動成分を取得することが困難であったが、本研究で使用したスギには樹齢効果が認められなかった。過去1500年間にわたる酸素同位体比時系列の長周期変動に着目すると、中世温暖期は乾燥し、小氷期は湿潤であったほか、20世紀に入ってからは乾燥化が進んでいることが明らかとなった。