18:15 〜 19:30
[AAS22-P06] 多波長分光検出器を用いた回転ラマンライダーによる気温計測
キーワード:気温ライダー, 多波長分光検出器
大気境界層の気温鉛直分布の情報は、水蒸気や風と並び気象予報の向上やヒートアイランド現象や大気汚染の要因となる大気の安定度の理解のための必須の情報となる。本研究グループでは、空気分子による回転ラマン散乱光の検出から気温鉛直分布を計測するラマンライダーの開発を行ってきた。従来の気温を測定するライダーは、スペクトル幅が狭い回転ラマン散乱光を使用するため、高精度の狭帯域干渉フィルタと発振波長の安定したレーザーが必要であり、その分光系は複雑でシステム全体のサイズも大型になりがちであった。本研究では、回転ラマン散乱成分の検出に多波長分光検出器を取り入れることで、小型でより汎用性の高い気温ライダーの構築を目指す。多波長分光検出器は、光を波長ごとに分解する分光器、光から電流への変換を行うアレイ型光電子増倍管、および電流のパルス数を計測するパルスカウンタの3つの装置から構成される。従来の干渉フィルタを用いる気温ライダーは、特定の温度依存を示す2波長の回転ラマン散乱光強度を、各々の波長に対して干渉フィルタと検出器を設けて検出し、それら強度の比から気温を推定する。一方、多波長検出器を用いる気温ライダーでは、分光器と一体化された複数波長を同時に計測する光子検出器により、回転ラマン散乱スペクトルの形状を取得することができる。そのため、観測値を良く説明する回転ラマン散乱スペクトルを理論的に計算することで、スペクトル形状を決定する温度の推定が可能となる。
新たに構築したライダーの光源には波長355 nmを用いて、口径35 cmの望遠鏡により大気分子からの散乱光を受光した。散乱光は、多波長分光検出器により波長分解能0.34 nmごとに光子数を計測され、スペクトルの形状を求めた。散乱光に含まれる弾性散乱成分を取り除くために、弾性散乱・ラマン散乱の偏光特性の違いを利用した除去方法と、弾性散乱光が入射するアレイ型光電子増倍管の特定チャネルを遮蔽する方法を組み合わせた。京都大学生存圏研究所・信楽MU観測所にて、2015年1~2月にかけてライダーとラジオゾンデとの同期観測を実施し、開発したライダーの検証および性能評価観測を実施した。本稿では、数値シミュレーションならびにラジオゾンデ観測より算出した校正係数の検証、計測精度および気温推定精度の評価など、初期解析結果を基とした気温ライダーシステムの性能評価について述べる。
新たに構築したライダーの光源には波長355 nmを用いて、口径35 cmの望遠鏡により大気分子からの散乱光を受光した。散乱光は、多波長分光検出器により波長分解能0.34 nmごとに光子数を計測され、スペクトルの形状を求めた。散乱光に含まれる弾性散乱成分を取り除くために、弾性散乱・ラマン散乱の偏光特性の違いを利用した除去方法と、弾性散乱光が入射するアレイ型光電子増倍管の特定チャネルを遮蔽する方法を組み合わせた。京都大学生存圏研究所・信楽MU観測所にて、2015年1~2月にかけてライダーとラジオゾンデとの同期観測を実施し、開発したライダーの検証および性能評価観測を実施した。本稿では、数値シミュレーションならびにラジオゾンデ観測より算出した校正係数の検証、計測精度および気温推定精度の評価など、初期解析結果を基とした気温ライダーシステムの性能評価について述べる。