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[SVC47-15] 北海道中央部大雪火山群,旭岳火山の形成史とマグマ変遷
キーワード:旭岳, 形成史, マグマ変遷, 地質学, 岩石学, 大雪火山群
大雪火山群は北海道中央部,北東‐南西方向に延長80kmに達する大雪-十勝火山列の北方に位置する第四紀火山である.その噴火活動は複数の活動期に分けられ,100万年前から現在に至るまで安山岩・デイサイトからなる約20以上の成層火山や溶岩ドームを形成した(勝井ほか, 1979).約3万年前に大雪火山群の中央に直径2kmのお鉢平カルデラを形成して以降,主な火山活動はカルデラ南西部で始まり,熊ケ岳・後旭岳・旭岳の山体を形成した(勝井ほか, 1979).このうち活火山である旭岳は,形成史やマグマ供給系の研究(例えば,佐藤・和田, 2007)が活発に行われてきた.しかしながら,これらの研究では熊ケ岳や後旭岳など周辺火山との層位関係は不明であり、地質情報に基づいた岩石学的研究は十分に行われてはない.筆者らは熊ヶ岳・後旭岳を含む旭岳火山の地質学的・岩石学的研究を行い,本火山の形成史及びマグマの時空変遷の再検討を進めている.
旭岳(標高2,291m)は御鉢平カルデラの南西に位置する成層火山で,西側に多数の溶岩流を流出しているほか標高1600mからは火砕丘(比高700m,直径3km)を形成している.火砕丘の西側には地獄谷火口と呼ばれる馬蹄形の爆裂火口があり,現在でも活発な噴気活動がおこっている.旭岳山頂部から東に1kmには熊ヶ岳(2,210m)の火砕丘と後旭岳(2,216m)の溶岩円頂丘があり,いずれも旭岳の噴出物に覆われている.旭岳火山の活動は,山体の違いによって熊ヶ岳活動期,後旭岳活動期,旭岳活動期の3つに大別される.熊ヶ岳活動期は,直径600mの複合火口をもつ火砕丘を形成した時期で,溶岩及び降下スコリアからなる噴出物は,火口の違いによって3つのユニットに細分される.噴出量は0.35km3と見積もられる.後旭岳活動期は南麓に溶岩流を流下させた後,山体上部に分厚い溶岩円頂丘を形成した時期である.噴出量は0.33km3と見積もられる.
旭岳活動期は主にマグマ噴火を行った前期と主に水蒸気爆発を行った後期に区分される.前期噴出物は被覆関係とマグマタイプを基に上部ユニットと下部ユニットに細分される.各ユニットの噴出物は被覆関係および全岩化学組成の差から,下部ユニットはL-1~L3噴出物,上部ユニットはU1~U5噴出物に細分される.下部ユニットは旭岳山体の下部を構成し,南麓から西麓にかけて多数の安山岩質~デイサイト質な溶岩を流出した後に火砕流を発生させた.上部ユニットは旭岳山体の上部を構成し,溶岩流を西麓に流出した後に火砕噴火が卓越する噴火に移行した.旭岳の最新のマグマ噴火は約5000年前と考えられている(奥野, 2005).噴出量は下部ユニットが4.50km3,上部ユニットが0.99km3と見積もられる.旭岳活動期の後期は本質物質をほとんど噴出しない水蒸気爆発を主とした活動期で,地獄谷火口が形成した時期である.最新の噴火は250年前以降に発生した水蒸気爆発と考えられている(和田, 2003).
旭岳及び熊ケ岳,後旭岳を構成する岩石は,斑晶として斜長石,単斜輝石,斜方輝石および鉄チタン酸化物を含み,一部の岩石では少量のカンラン石,角閃石斑晶を含む安山岩~デイサイトであり,しばしば苦鉄質包有物を含む.旭岳火山の岩石のSiO2量は母岩で54.7-65.4wt.%,苦鉄質包有物で54.0-59.0wt.%であり,中カリウム系列のカルクアルカリ系列に分類できる.デイサイトは旭岳火山全活動期を通して記載岩石学的特徴及び全岩化学組成にほとんど変化が見られなかった.しかしながら、これらの岩石は特に苦鉄質側岩石の組成で、山体および活動期間で区別できる。熊ヶ岳活動期の岩石は苦鉄質側で高いNi含有量かつ低いCr含有量を持つことで,他の活動期の岩石と明瞭に区別できる.後旭岳活動期と旭岳前期の下部ユニットの岩石の全岩化学組成は類似したトレンドを示し,苦鉄質側の低Ni・Cr含有量で特徴付けられる.旭岳前期上部ユニットは苦鉄質側の岩石は多様である。U-4火砕岩類の岩石は全活動期を通して特徴的に高いTiO2含有量及びFeO*/MgO値を示す.また,U-5火砕岩類の岩石は玄武岩質安山岩が母岩として出現し,層序的上位になるにつれて苦鉄質側でNi・Cr含有量が増加していく特徴がある.
旭岳の活動では,従来の研究で指摘されているようにマグマ混合が支配的プロセスである。今回の検討によって、山体(火口)および山体での活動期毎に、特に苦鉄質端成分が変化していることが明らかになった。
旭岳(標高2,291m)は御鉢平カルデラの南西に位置する成層火山で,西側に多数の溶岩流を流出しているほか標高1600mからは火砕丘(比高700m,直径3km)を形成している.火砕丘の西側には地獄谷火口と呼ばれる馬蹄形の爆裂火口があり,現在でも活発な噴気活動がおこっている.旭岳山頂部から東に1kmには熊ヶ岳(2,210m)の火砕丘と後旭岳(2,216m)の溶岩円頂丘があり,いずれも旭岳の噴出物に覆われている.旭岳火山の活動は,山体の違いによって熊ヶ岳活動期,後旭岳活動期,旭岳活動期の3つに大別される.熊ヶ岳活動期は,直径600mの複合火口をもつ火砕丘を形成した時期で,溶岩及び降下スコリアからなる噴出物は,火口の違いによって3つのユニットに細分される.噴出量は0.35km3と見積もられる.後旭岳活動期は南麓に溶岩流を流下させた後,山体上部に分厚い溶岩円頂丘を形成した時期である.噴出量は0.33km3と見積もられる.
旭岳活動期は主にマグマ噴火を行った前期と主に水蒸気爆発を行った後期に区分される.前期噴出物は被覆関係とマグマタイプを基に上部ユニットと下部ユニットに細分される.各ユニットの噴出物は被覆関係および全岩化学組成の差から,下部ユニットはL-1~L3噴出物,上部ユニットはU1~U5噴出物に細分される.下部ユニットは旭岳山体の下部を構成し,南麓から西麓にかけて多数の安山岩質~デイサイト質な溶岩を流出した後に火砕流を発生させた.上部ユニットは旭岳山体の上部を構成し,溶岩流を西麓に流出した後に火砕噴火が卓越する噴火に移行した.旭岳の最新のマグマ噴火は約5000年前と考えられている(奥野, 2005).噴出量は下部ユニットが4.50km3,上部ユニットが0.99km3と見積もられる.旭岳活動期の後期は本質物質をほとんど噴出しない水蒸気爆発を主とした活動期で,地獄谷火口が形成した時期である.最新の噴火は250年前以降に発生した水蒸気爆発と考えられている(和田, 2003).
旭岳及び熊ケ岳,後旭岳を構成する岩石は,斑晶として斜長石,単斜輝石,斜方輝石および鉄チタン酸化物を含み,一部の岩石では少量のカンラン石,角閃石斑晶を含む安山岩~デイサイトであり,しばしば苦鉄質包有物を含む.旭岳火山の岩石のSiO2量は母岩で54.7-65.4wt.%,苦鉄質包有物で54.0-59.0wt.%であり,中カリウム系列のカルクアルカリ系列に分類できる.デイサイトは旭岳火山全活動期を通して記載岩石学的特徴及び全岩化学組成にほとんど変化が見られなかった.しかしながら、これらの岩石は特に苦鉄質側岩石の組成で、山体および活動期間で区別できる。熊ヶ岳活動期の岩石は苦鉄質側で高いNi含有量かつ低いCr含有量を持つことで,他の活動期の岩石と明瞭に区別できる.後旭岳活動期と旭岳前期の下部ユニットの岩石の全岩化学組成は類似したトレンドを示し,苦鉄質側の低Ni・Cr含有量で特徴付けられる.旭岳前期上部ユニットは苦鉄質側の岩石は多様である。U-4火砕岩類の岩石は全活動期を通して特徴的に高いTiO2含有量及びFeO*/MgO値を示す.また,U-5火砕岩類の岩石は玄武岩質安山岩が母岩として出現し,層序的上位になるにつれて苦鉄質側でNi・Cr含有量が増加していく特徴がある.
旭岳の活動では,従来の研究で指摘されているようにマグマ混合が支配的プロセスである。今回の検討によって、山体(火口)および山体での活動期毎に、特に苦鉄質端成分が変化していることが明らかになった。