16:45 〜 17:00
[MIS34-03] 石筍中の流体包有物の水の酸素同位体分析による最終氷期の気温推定
キーワード:石筍, 鍾乳石, 流体包有物, 酸素同位体比, キャビティーリングダウン
古気候復元の研究に多く利用されている鍾乳石には、絶対年代を決定できるという長所がある。一方で、気候変動の指標として広く用いられるCaCO3の酸素同位体比(δ18Oc)は定量的解釈が困難なことが多い。この点を解決する有望なプロキシとして鍾乳石の流体包有物が注目されている。高湿度の洞窟内では、流体包有物の水は、滴下水の酸素同位体比(δ18Ow)を反映していると考えられる。本研究では、流体包有物中の水の水素・酸素安定同位体比を測定する手法を開発し、沖縄県の鍾乳石に適用した。同一サンプルのδ18Ocとδ18Owを両方測定することで、石筍生成時の気温復元を試みた。
沖縄県玉泉洞において採取した3個の石筍を用いた。同一層を切り出し、扇形に分割することで、同一層から複数試料を測定することで再現性を評価した。試料の年代はU-Th法により決定した。流体包有物の水は、真空下で鍾乳石を破砕し、抽出した水をキャビティーリングダウン式分光計 (L2130-i Picarro) で測定した。
石筍試料による繰り返し精度(1σ, n = 33)はδ18Oで±0.24‰、δDで±1.8‰であった。開発した装置の測定可能レンジは液体の水で20 - 260 nano L、CaCO3量としては20-300mg程度で測定可能である。71-133年前に成長した石筍の流体包有物の同位体組成は、現在の沖縄の降水と予測される変動範囲内であった。この石筍の酸素同位体分別係数から気温を推定したところ、22.0 ± 1.6 ℃であり、気象観測値と整合的であった。最終氷期(25.5-26.5 kyr BP)の試料については、最終氷期の推定気温は14.6 ± 2.5 ℃であった。最終氷期の試料のうち2つについては、Hendy Testの結果、動的同位体効果を受けていることが示唆された。これらの層では推定気温が4 ℃近く低くなっており、動的効果によって気温の見積もりが大きな影響を受けることが示された。
沖縄県玉泉洞において採取した3個の石筍を用いた。同一層を切り出し、扇形に分割することで、同一層から複数試料を測定することで再現性を評価した。試料の年代はU-Th法により決定した。流体包有物の水は、真空下で鍾乳石を破砕し、抽出した水をキャビティーリングダウン式分光計 (L2130-i Picarro) で測定した。
石筍試料による繰り返し精度(1σ, n = 33)はδ18Oで±0.24‰、δDで±1.8‰であった。開発した装置の測定可能レンジは液体の水で20 - 260 nano L、CaCO3量としては20-300mg程度で測定可能である。71-133年前に成長した石筍の流体包有物の同位体組成は、現在の沖縄の降水と予測される変動範囲内であった。この石筍の酸素同位体分別係数から気温を推定したところ、22.0 ± 1.6 ℃であり、気象観測値と整合的であった。最終氷期(25.5-26.5 kyr BP)の試料については、最終氷期の推定気温は14.6 ± 2.5 ℃であった。最終氷期の試料のうち2つについては、Hendy Testの結果、動的同位体効果を受けていることが示唆された。これらの層では推定気温が4 ℃近く低くなっており、動的効果によって気温の見積もりが大きな影響を受けることが示された。