日本地球惑星科学連合2015年大会

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セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG65] 兵庫県南部地震から20年:活断層と強震動に関する研究の進展

2015年5月26日(火) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*中原 恒(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻固体地球物理学講座)、堀川 晴央(産業技術総合研究所 活断層・地震研究センター)、丸山 正(文部科学省研究開発局地震・防災研究課)

18:15 〜 19:30

[SCG65-P02] 経験的グリーン関数を用いたインバージョン手法による2014年長野県北部の地震(Mj 6.7)の震源モデル

*芝 良昭1 (1.電力中央研究所)

キーワード:2014年長野県北部地震, 震源モデル, 活断層, インバージョン解析

2014年11月22日22時8分に発生した長野県北部地震 (M6.7) では,震源近傍の長野県小谷村をはじめとする複数の地点で震度6弱が観測された.震源は,糸魚川―静岡構造線の北端に相当する神城断層と推定され,明瞭な地表地震断層の出現が報告されている.一方で,本震発生に伴う余震の分布をみると,既存の活断層である神城断層の地表トレースを大きく超えて北側に拡大しており,地中の破壊領域(震源断層)と地表活断層は必ずしも一意に対応していない.また,気象庁一元化震源要素によれば,本震発生直後の余震活動は本震震央よりも北側の方が相対的に活発で,かつ走向に直交する方向に幅広く分布している.このような,活断層の分布と,地中の震源断層の破壊様式との関係を明らかにすることは強震動予測において重要と考えられる.
本震の震源モデル推定には,経験的グリーン関数法と焼きなまし法を組み合わせた波形インバージョン手法(Shiba and Irikura, 2005)を用いた.本震断層面は,F-netのメカニズム解に従い,東傾斜の逆断層を仮定するとともに,断層上端が神城断層の地表トレースにおおむね一致するように位置を調整した.断層の広がりは,余震分布から長さ24㎞,幅10㎞とした.このときの断層上端深さは2.3㎞,下端深さは10㎞である.経験的グリーン関数には,11月23日12時46分に発生したMj4.4の余震を用いた.ただしこの余震はF-netによるメカニズム解が大きく異なるため,Boore and Boatwight (1984)に従い放射特性の補正を行っている.
解析の結果得られた断層面上のすべり分布モデルからは,モーメント解放量の大きいアスペリティが破壊開始点付近および南部の浅い領域と,断層北部の浅部から深部にかけて同定された.このうち,破壊開始点付近の浅部は,地表地震断層が集中的に確認された地域の直下にほぼ一致する.一方,推定された断層すべり分布を初期条件とした実効応力のインバージョン解析からは,断層北部のアスペリティで相対的に高い実効応力が推定された.このことは,既存の活断層が発達していない領域において,断層破壊の進展に伴う応力降下が相対的に大きくなっていることを示唆するものと考えられる.一方で,このような断層北部のアスペリティが,地表地震断層が認められないにもかかわらず断層の浅い領域まで広がっている点については,今後さらに検討を進める必要がある.