日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM27] 大気圏・電離圏

2015年5月26日(火) 11:00 〜 12:45 A01 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*大塚 雄一(名古屋大学太陽地球環境研究所)、津川 卓也(情報通信研究機構)、川村 誠治(独立行政法人 情報通信研究機構)、座長:冨川 喜弘(国立極地研究所)、柿並 義宏(高知工科大学システム工学群)

11:00 〜 11:15

[PEM27-11] 小型大気光カメラによる極冠パッチの撮像

*細川 敬祐1小川 泰信2田口 聡3 (1.電気通信大学、2.国立極地研究所、3.京都大学大学院理学研究科)

キーワード:極冠域, ポーラーパッチ, 大気光観測

90 年代後半以降の冷却 CCD/EMCCD カメラの普及に伴い, 630.0 nm 大気光を用いた電離圏現象のイメージング観測が広く行われるようになった. 中低緯度域においては, 地上全天大気光イメージャによって, プラズマバブルや MSTID などの空間構造が 2 次元的に観測されている. 近年は, 緯度が 80 度を超える極冠域において, ポーラーパッチと呼ばれるプラズマ密度が上昇した島状の領域が撮像されるようになり, 太陽風の擾乱に応答してダイナミックに変動するその空間構造が明らかにされている. ただし, 冷却 CCD カメラを搭載した全天大気光イメージャは, 観測システムが比較的大きく, 導入のためのコストも安くはないため, 多点展開による広域撮像を実現することは簡単ではない.

本研究では, 近年極域でのオーロラ観測において広く用いられるようになった簡易で廉価な小型 CCD カメラ(Watec 社: WAT-910HX)を用いて, 630.0 nm 大気光の撮像を行い, 得られるデータのクオリティを検証した. 特に, 極冠域で観測されるポーラーパッチについて, 大型の大気光イメージャで得られた画像との直接比較を行うことを目的としている. 2 台の WAT-910HX に, 全天観測用の魚眼レンズと, 視野 50 度程度の広視野レンズをそれぞれ取り付け, 中心波長 632.0 nm, 半値全幅 10 nm, 最小透過率 85% のバンドバスフィルターを組み合わせることで, 2 セットの小型大気光カメラを製作した. この 2 台のカメラを, ノルウェーのロングイヤービエン(78.1N, 15.5E)に設置し, 2013/2014 の冬季に露出時間約 4 秒の連続観測を行った. ロングイヤービエンにおいては, 大型の全天イメージャによる 630.0 nm 大気光の観測や, オーロラスペクトログラフ(ASG)による大気光のスペクトル観測も同時に行われており, 小型大気光カメラのパフォーマンスを定量的に吟味するために必要となる情報を得ることができる.

2013 年 12 月 4 日の 20-24 UT の時間帯において, 大型全天大気光イメージャによって 10 個のポーラーパッチが観測された. 大気光の発光強度は 500 R 程度であった. 同時に観測を行っていた小型大気光カメラにおいても同様の大気光増大領域が伝搬して行く様子が見て取れ, その 2 次元的な空間構造を視認することができた. 小型大気光カメラによってポーラーパッチが撮像できるであろうことは, 積分球を用いたキャリブレーションを行った段階で予想されていたが, 実際に観測を行うことで, サイエンスに用いることができるクオリティの画像が得られることが示された. 但し, 小型大気光カメラによって得られたパッチの発光強度は, 大型イメージャで得られたものよりも平均 1.5 倍程度大きいことが分かり, これは, 用いている干渉フィルターの半値幅の違いによるものであると考えている. 発表では, ASG による大気光スペクトルのデータを用いて二つのカメラの発光強度の違いについて考察した結果を述べる.