日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS31] 結晶の成長と溶解における界面・ナノ現象

2015年5月27日(水) 09:00 〜 10:45 102A (1F)

コンビーナ:*木村 勇気(北海道大学低温科学研究所)、三浦 均(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)、塚本 勝男(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、佐藤 久夫(三菱マテリアル株式会社エネルギー事業センター那珂エネルギー開発研究所)、座長:田中 今日子(北海道大学低温科学研究所)

09:45 〜 10:00

[MIS31-03] 圧密されたスメクタイト粘土の溶解挙動

*佐藤 久夫1 (1.三菱マテリアル㈱)

キーワード:スメクタイト, 溶解, 圧密, AFM, VSI

天然ベントナイトを構成する粘土鉱物であるスメクタイトは、隕石から堆積岩まで広く存在するミクロン―ナノ結晶である。スメクタイトはその成長後の{001}積層状態から膨潤後のランダム積層状態まで様々な形態を持つことができるため、溶解挙動については不明な点が多い。例えば、コロイドとして分散状態にあるスメクタイトはpHと未飽和ΔG、温度に駆動されて(Sato et al., 2005)速く溶解するが、圧縮した場合の溶解速度は極めて遅くなり(Nakayama et al., 2013),一種の安定状態になると思われる。
スメクタイトの溶解挙動について、単分散状態の粒子を観察するAFM測定は有効な手法であるが、高密度の圧密粒子における直接的な測定ができない。そこで垂直走査干渉計(VSI)と自動圧縮セルを駆使したその場観察手法と、原子間力顕微鏡(AFM)による粒子解析を融合した手法を開発した。この手法によって、アルカリ溶液(0.3M NaOH)を通水しながら、70℃の高温で様々な密度に圧縮したスメクタイト(Na-montmorillonite)の圧密体を再現して、その場における物質体積の減少を連続測定した。また測定後の粒子はセルから回収してAFMによって単分子粒子の形状測定を行い、溶解過程の粒子のステップエッジ表面積の解析を行った。
AFM-VSI測定の結果、スメクタイトの溶解は、単分散の低密度ゲル(0.001 g/cm3)から高密度状態(1.64 g/cm3)において、2.9E-11から2.6E-13 mol/m2/sまでの2桁減速していることがわかった。この原因としては、ナノ積層体であるスメクタイト粒子がお互いのステップエッジをマスクし合う自己マスキング効果が考えられる(溶解速度の減速)。しかしながら、ランダム積層状態での圧縮は、刃状転位の生成を促進し新たな溶解フロントを作り出すため、粒子の分割、すなわちステップエッジ面積の増大(溶解速度の加速)も圧縮初期には起きていることもわかった。
このように高密度の粘土などのナノ積層体粒子には、圧縮によって初期には溶解の加速が起こるが、すぐに減速する負のフィードバック機構も備わっている。このような複雑な挙動を解明・理解するにはモンテカルロ計算などのモデリング手法が今後必要である。