日本地球惑星科学連合2015年大会

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口頭発表

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[U-06] 宇宙・太陽から地球表層までのシームレスな科学の新展開

2015年5月24日(日) 11:00 〜 12:45 105 (1F)

コンビーナ:*松見 豊(名古屋大学太陽地球環境研究所)、草野 完也(名古屋大学太陽地球環境研究所)、石坂 丞二(名古屋大学地球水循環研究センター)、坪木 和久(名古屋大学・地球水循環研究センター)、榎並 正樹(名古屋大学 年代測定総合研究センター)、座長:水野 亮(名古屋大学太陽地球環境研究所)、塩川 和夫(名古屋大学太陽地球環境研究所)

11:40 〜 12:00

[U06-09] ルミネッセンス年代測定の可能性

*長友 恒人1 (1.奈良教育大学)

キーワード:ルミネッセンス, 年代測定, 放射線, 石英, 人類期, 人為的イベント

年代測定が利用する自然現象は、原子核の崩壊(壊変)や分裂、固体物理的現象、分子レベルの現象など多岐に亘る。ルミネッセンス年代測定法は、熱励起または光励起による鉱物(主として石英)の発光現象を利用する方法であり、固体物性的な現象を利用する方法に分類される。測定試料の安定性の観点からは、CHIME法やC-14法など原子核現象を利用する方法は試料が置かれた環境変化の影響をほとんど受けないが、ルミネッセンス法や電子スピン共鳴法など物性的な現象、ラセミ化法など化学変化を利用する方法は温度や含水率変化などの影響を受けやすい。石英を試料とするルミネッセンス法は常温常圧に近い環境であれば、数10年前から数10万年前までの年代をカバーし、条件がよければ100万年前までの年代を測定することができる。
 石英のルミネッセンスは、宇宙線などの自然放射線が結晶の変位や不純物元素によって生じた格子欠陥に作用することによって発光する現象である。放射線またはFe, Al, Ti, Mn等の不純物によって生じた石英中の格子欠陥によって準安定状態のホールセンターとエレクトロンセンターが形成され、そこに捕捉されたホールとエレクトロンが外部エネルギーで励起されて再結合することによって発光する。天然石英の放射線による格子欠陥の形成は自然の放射性核種からの放射線と宇宙線に起因する。従って、準安定状態のホールとエレクトロンセンターは結晶化後の経過時間とともに増え、それに起因する発光量も多くなる。不純物によって形成された準安定なセンターにも放射線によってホールとエレクトロンが捕捉され、同様に発光する。
 石英の結晶化後に捕捉されたホールとエレクトロンは火山噴火や人為的な加熱または自然堆積時の露光によるエネルギーによって再結合して発光し、ホールとエレクトロンの数は初期状態に戻る(ゼロイング)。このゼロイングによってルミネッセンスを利用した年代測定が可能となる。この方法がカバーする年代は地球表層に関連する人類紀の後半期である。この方法では、火山噴火、津波、砂丘形成など人類に影響を与えた自然現象や焚き火、土器の焼成などの人為的イベントの年代を推定することができる。
 当日の発表では、旧石器時代遺跡の年代測定例やデータに基いた他の年代測定結果との整合性を示す。