日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD23] 重力・ジオイド

2015年5月28日(木) 09:00 〜 10:45 102A (1F)

コンビーナ:*西島 潤(九州大学大学院 工学研究院 地球資源システム工学部門)、青山 雄一(国立極地研究所)、座長:名和 一成(産業技術総合研究所)、田中 俊行(公益財団法人地震予知総合研究振興会東濃地震科学研究所)

09:15 〜 09:30

[SGD23-08] A10絶対重力計を用いたインドネシア グンディガス田における二酸化炭素地下貯留モニタリング

*西島 潤1福田 洋一2yayan sofyan1板倉 統2Eko WAHYUDI3松岡 俊文4 (1.九州大学大学院工学研究院、2.京都大学大学院理学研究科、3.バンドン工科大学、4.京都大学大学院工学研究科)

キーワード:二酸化炭素地下貯留, 精密重力モニタリング, 絶対重力測定

インドネシアでは2020年までにCO2を2005年比で26%削減することを計画している。インドネシアでのCO2排出源の一つであるガス田ではCO2の直接的な削減法として、ガス生産の際に出たCO2を回収して地中に封じ込めるCCS (Carbon Dioxide Capture and Storage)技術の研究がJICA-JST 地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS) の一環として,グンディガス田において行われている。このプロジェクトではCCSの適用に不可欠なガス田の深部地層の地質評価技術の開発および地下に貯留したCO2の分布や挙動を知るためのモニタリング技術の研究開発を行うことを目的としている。
CCSの地下貯留後周辺地層への浸出の有無をモニタリングする手法の一つとして重力変化をモニターする方法が挙げられる。
 グンディ地区でのA10による絶対重力測定は、2013年に6観測点で開始した。2014年9月には2回目の重力測定を実施し、CO2注入井候補であるJepon地区に新たに3観測点を増設した。なお、2013年に設置した観測点のうちRBT01およびKDL01については、生産井の整備に伴い測定点が失われており、2014年は測定を実施することはできなかった。また、生産井の近傍に位置しているKTB01およびRBT02については、RBT02は生産に向けた準備中、KTB01では既に生産が開始されている。
測定に使用したMicro-g LaCoste社製A10絶対重力計は、2012年10月にルビジウムクロックを、2013年3月にはレーザーを新品に交換した。また、これまでデータ収録・制御用のノートPCの熱暴走によると考えられる不調が見られたため、発熱を抑えるためノートPC内のハードディスクをSSDに換装した。この結果グンディ地区のような高温な地域においても問題無く良好な測定を行うことが可能となった。
2013年と2014年の測定結果を比較したところ、これらの測定点での重力変化については、KTB01で有意な重力の減少、それ以外の点では、測定誤差を考慮すると有意な変化は認められなかった。KTB01での重力変化の原因については、生産井の稼働開始による可能性の他、2014年に比べ2013年の同時期の降雨が明らかに多かったことから、地下水位変化の影響も考えられる。KTB01点では、これらのことも考慮し、2013年にテスト的に土壌水分計を設置した。この観測については、通年のデータを得ることはできなかったが、約2ヵ月程度の良好なデータは取得できている。本講演ではこのデータを用いた降雨や地下水の影響についての検討を報告する。
 2014年に設置したJeponおよびITB-1,ITB-2の3点は、CO2注入井候補地周辺の重力のベースライン値を得る目的で、今年度新たに設置した重力点である。また、同時期にバンドン工科大学のグループは、これらの点は重力基準点として、CG-5重力計を用いた約400点のグリッドサーベイを実施している。本データは今後の重力変化の基準となるほか、地下密度構造の精密な決定も行った。
 以上の観測・測定研究に加え、今年度は、CO2注入開始に伴う重力変化のモデリングについても着手した。モデリングについてはJeponを対象に行われているCO2注入シミュレーション結果(密度変化)に基づき、重力フォワード計算を行った。計算方法はCO2注入シミュレーションと同様に地下をブロックの集合体で表現し、各ブロック内での密度変化による重力変化を角柱の厳密解であるOkabe(1979)の方法で計算し、これらの総和を地表での観測点における重力変化としている。また、注入量の条件としては予定されているものに加えていくつかのパターンについても試算を行う予定である。