日本地球惑星科学連合2015年大会

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口頭発表

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[U-07] 連合は環境・災害にどう向き合っていくのか?

2015年5月28日(木) 09:00 〜 10:45 103 (1F)

コンビーナ:*田中 賢治(京都大学防災研究所)、作野 裕司(広島大学大学院工学研究院)、後藤 真太郎(立正大学地球環境科学部環境システム学科)、座長:田中 賢治(京都大学防災研究所)、作野 裕司(広島大学大学院工学研究院)、後藤 真太郎(立正大学地球環境科学部環境システム学科)

10:00 〜 10:15

[U07-05] 環境・災害問題における第四紀学の役割

*卜部 厚志1 (1.新潟大学災害・復興科学研究所)

キーワード:環境・災害問題, 第四紀学, 第四紀学会

日本第四紀学会は,第四紀(約260万年前から現在)の自然,環境,人類の研究を通して,現在と近未来の環境を理解するべく,それに関わる地質学,地理学,考古学,古生物学,植物学,土壌学,地球物理学,地球化学,工学,人類学,動物学などの専門家で構成されている学会である.特に,本会の特色は,一定の学問分野ではなく第四紀という時代を対象としていることから,多元的,学際的な会員各自の研究と協同研究が実施されていることであり,その成果は機関誌「第四紀研究」として公表している.
 環境・災害問題に対しては,本会の会員構成(研究分野の多様性)から会員各自の取り組みを基本としているが,ここでは,機関誌を通じて公表してきた論文を中心に本会の環境・災害問題に対する取り組みや第四紀学の果たす役割について紹介する.
 機関誌で公表された論文から環境・災害に関連したものをまとめると,地震や津波災害についての報告はわずかであり,多くの論文は環境・災害問題を検討する上での基礎となる事象について論じられている.例えば,環境汚染や地震時の地盤災害(強震動や液状化)を検討する上では沖積層の層相や形成過程の理解が基礎となり,地形変動を評価するためには地形面の形成やテフラを用いた対比と編年が基礎となるように,直接的な環境・災害問題の要因を論じるのではなく,環境や災害に関するさまざまな課題に対応あるいは予測・軽減を行うための基礎的かつ学際的な指標となる事象・テーマを論じたものが多い.近年では,各地の津波堆積物に関する報告も多い.これは,環境・災害問題に取り組むための基礎的なデータを査読論文として公表するという本会の重要な役割とも言える.また,特集として「災害とその予測-第四紀研究の果たす役割-(1993)」,「第四紀学と地震防災(1996)」,「活構造と都市地盤・災害-阪神大震災から5年目の発信(2000)」,「津波堆積物と地震性タービダイト:防災・減災のための堆積物記録の理解(2007)」,「大都市圏の地盤-私たちの生活とのかかわり(2008)」などを公表してきた.
今後も,さまざまな研究者や学会の環境・災害問題への取り組みに対して,要因解明や問題の軽減,評価などを考える上での基礎的な知見を機関誌などによって広く公表していくことが,第四紀学に関わる本会の役割であると考えられる.