日本地球惑星科学連合2015年大会

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ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS21] 惑星科学

2015年5月25日(月) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*黒澤 耕介(千葉工業大学 惑星探査研究センター)、濱野 景子(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)

18:15 〜 19:30

[PPS21-P12] 初期地球における海洋潮汐の半解析的検討

*元山 舞1綱川 秀夫1高橋 太2 (1.東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻、2.九州大学大学院理学研究院)

キーワード:海洋潮汐, 地球月系の力学的進化, 初期地球, 固有振動数, 固有関数, 潮汐力

海洋潮汐は、地球表層環境のみならず生命誕生・進化に大きな影響を与えてきた。地球に作用する潮汐力は両者の距離の3乗に逆比例するため、月の軌道進化により大きく変化したと考えられる。特に、初期地球(46〜25億年前)では、地球・月間の距離は3Re〜40Reと考えられ(Goldreich, 1966)、平衡潮汐を考えれば現在と桁違いの振幅をもつ海洋潮汐になる。しかし、Abe et al. (1997)、Abe & Ooe (2001)は、一様深度(1000m, 2600m, 4200m)の海洋を仮定して次数2の潮汐力(半日潮)について数値シミュレーションを行った結果、潮汐の振幅は0.1m程度と小さいことを示した。これは、海洋の自由振動の固有周期が地球自転周期と異なるため、強制振動としての海洋潮汐が抑えられるからである。
海洋の自由振動については、海洋深度と大陸の分布が大きく影響する。大陸成長については多くのモデルが提唱されているが、有力なモデルでは、地球形成後5〜20億年間は大陸がほとんどなかったと考えられている。一方、地質学的・地球化学的記録から約40億年前には海が存在していたと考えられているが、海洋深度の正確な推定は確立しておらず、現在の数倍程度であったという説もある。そこで、本研究では、地球全表面を一様深度の海洋が覆っていたと仮定し、海洋深度を連続変数のパラメータとして潮汐共振を半解析的に検討した。また、従来は次数2のみの潮汐力を扱っていたが、共振があれば次数3のモードが相対的に大きくなりうることも考え、両方のモードを検討対象とした。

海洋の自由振動における固有振動数は深度と固有振動モードに依存し、ラプラスの潮汐方程式で表される。Longuet-Higgins (1968)は、粘性を考慮しないラプラスの潮汐方程式を数値的に解き、流体の各モードに対する固有振動数をラムのパラメータの関数として求めた。この解を海洋の自由振動に適用すると、海洋深度と地球自転角速度を連続的なパラメーターとして取り扱った固有振動数を表示できる。次数2のモードとしてP22、次数3のモードとしてP31及びP33 を仮定し、地球自転角速度が現在値の1〜4.8倍の範囲をとりうるとして、共振が起きうる海洋深度hの範囲を求めた。検討の結果、P22ではh = 17〜420 km、P31ではh = 0.5〜13 km、P33ではh = 18〜480 kmとなった。P22、P33のモードが共鳴を起こして卓越する海洋深度は、現在の深度の6倍以上になる。一方、P31のモードは現在の海洋深度でも、月軌道進化の過程で共振した可能性がある。ただし、P31モードがP22モードよりも大きくなる可能性については、粘性を考慮した共振を検討する必要がある。