日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-ZZ その他

[M-ZZ45] 地球科学の科学史・科学哲学・科学技術社会論

2015年5月24日(日) 14:15 〜 15:00 203 (2F)

コンビーナ:*矢島 道子(東京医科歯科大学教養部)、青木 滋之(会津大学文化研究センター)、山田 俊弘(千葉県立船橋高等学校)、吉田 茂生(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、座長:青木 滋之(会津大学文化研究センター)、吉田 茂生(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)

14:51 〜 14:54

[MZZ45-P03] 地学的観点から取り組む理系進路選択へのアプローチ ―理科教室「宝石の不思議」が、女子理系選択に与える影響―

ポスター講演3分口頭発表枠

*藤井 麻緒1 (1.愛媛大学 理学部 地球科学科)

キーワード:地学, 理科教室, 鉱物, 女子理系選択, 愛媛大学, サイエンスひめこ

【研究の目的】愛媛大学では平成22年「女性未来育成センター」が設立され、平成23年に第1回目となる「愛媛大学女子中高生の理工系進路選択支援事業」が開催された。自分自身が、このセンター主催の中高生イベントに参加し理系進学する意思を固めたことから、愛媛大入学後は理農工学部女子の集まり「サイエンスひめこ」にスタッフとして参加、活動を行ってきた。この経験をもとに「女子の理系選択への動機」は、いつ、どこで起こるのか調査・検証し、女性理系選択者を増やす、より有効な手段を見出すために本研究を行った。
【はじめに】様々な環境や教育において理系へ進学するきっかけとなる場は異なる。自分自身が理科に興味を持ったきっかけは、小学校5年生の1年間「科学教育センター」で三崎の海での実習や、昆虫・植物の観察が行えたこと、中学・高校でも海・実習林・天文観察の場が得られたことだった。子ども時代にどのような環境・教育・経験の場が提供されると、女子が将来理系選択をする動機となるのか? 自身の経験から1) 自然科学の「情報」2) 子ども時代からの経験や保護者の協力など「環境」3) 伝わりやすい観点での「メディア」が効果的であると考え調査することとした。調査では理系科目の中でも触れる機会が少ない地学分野を選び、鉱物の講義と鉱物を使用した作品を作る、小学生女子と保護者対象の理科教室を企画・開催し、アンケート形式によるデータを収集した。本研究は、愛媛大学における「学生による調査・研究プロジェクト(プロジェクトE)」に採択され、研究予算をいただくことで実現した。
【調査の方法】小学校低学年の女子にも地学の楽しさを広める取り組みを試みた。3回の理科教室実施で、鉱物への興味を促す。また、親子それぞれのアンケートから、女子の理系選択のきっかけを検証する方法をとった。
 理科教室開催において工夫した点は以下の点である。
1.地学の情報・興味として、愛媛大学のヒメダイヤなどの説明、また鉱物と身近にあるものと成分の比較、女子の好きなものとして、アクセサリーとも関連付ける。
2.夏休みや休日を使い、親子が一緒に参加できるよう、親子参加を条件にする。
3.工作するメモスタンドの材料は水晶・ホタル石など天然石と地元産の宇和海真珠を使った。またアクリル粘土を台座にし、小学校低学年でも容易に工作可能な柔らかいワイヤーを用い、自由な形にできる工夫をした。
4.持ち帰りにはラッピング袋を用意、作ったオリジナルの作品を持ち帰り、家で使える機会を提供する。
5.告知ポスター、動画などの媒体にパステルカラーを用い、イメージキャラクターを作成、
低学年でも親しみやすい教室であることをアピールする。

教室の実施は、2014年8月と、10月、および2015年2月の3回に分けて行った(以下)。
□愛媛大学ミュージアム1画を借り、「夏休み理科教室‐宝石の不思議」を開催。
鉱物の講義、鉱物の展示コーナー、宝石のメモスタンド作り、夏休みの自由研究相談コーナーなどを企画した(2014.8月)。
□「SENSE × SCIENCE 不思議なものづくりワークショップ」企画に理科教室で参加。
鉱物の講義、宝石のメモスタンド作りを行った(2014.10月・2015.2月)。
【結果】いずれの理科教室でも、身近なものを取り入れた鉱物の講義は、低学年の子どもも親も集中して受講し、質疑も多かった。また宝石のメモスタンド作りでは、子どもだけでなく、保護者も石選びに興味を持ち取り組んでいた。これは母親に限らず数名参加していた父親も同様であった。アンケート(親子31名ずつ回答)によれば、参加した保護者は理科教室・理科番組を子どもと楽しむことが多い73%。子どもは、自然科学への興味が多いものの、自由記述で好きなこと・なりたい姿に理科系や医学を答えたのは全体の29%、先生・デザインなどが10%、パティシェ6%であった。残りは、職業が明確でないものが55%だった。
【考察】理科教室告知には児童館・図書館・夏休みのプールなど子どもの集まる場所に広くチラシを配布したが、親子参加という条件からか、大学ホームページの告知と愛媛大学関連の他イベントから情報を得て訪れたという家族が主であった。このことからも保護者自身がまず「理科への興味・情報」を持ち、子どもに働きかける環境がなければ、子どもが学外で理科の学びの機会を得ることが難しいという事実が伺えた。
地学的に鉱物からのアプローチは、子どもだけでなく保護者の興味もひくことがわかった。
また職業が明確に決まっていない回答に「テレビや町で多く目に触れる」対象をなりたいものに述べる傾向があることからも、子どもの理系進路選択には、理科分野でメディアも含め広く活躍する女性研究者の存在が重要であることが分かった。

本研究実施は、愛媛大学で活躍する「サイエンスひめこ」の多大な協力を得て行われた。