日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

インターナショナルセッション(口頭発表)

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS02] Interdisciplinary studies on pre-earthquake processes

2015年5月26日(火) 09:00 〜 10:45 201A (2F)

コンビーナ:*服部 克巳(千葉大学大学院理学研究科)、Dimitar Ouzonov(Chapman大学)、劉 正彦(台湾国立中央大学)、黄 清華(北京大学)、座長:Qinghua Huang(Department of Geophysics, Peking University)、Dimitar Ouzounov(Center of Excellence in Earth Systems Modeling & Observations (CEESMO) , Schmid College of Science & Technology Chapman University, Orange, California, USA)

10:00 〜 10:15

[MIS02-05] 日本付近における地震に先行する電離圏擾乱の統計解析に関する研究

*本間 彩乃1Peng Han2服部 克巳2劉 正彦3 (1.千葉大学理学部、2.千葉大学大学院理学研究科、3.台湾国立中央大学)

キーワード:統計解析, 地磁気嵐, 電離圏擾乱, 地震, SEA解析, モルチャンエラーダイアグラム

近年,地震活動に先行する様々な電磁気現象が報告されており, 地震の短期予測の可能性が指摘されている.先行研究によって,中磁気緯度地域の日本において,地震の前に正のTEC異常が有意に出現することが明らかとなっている.先行研究では地磁気嵐に起因するTEC異常を除去するために,統計的に定めた地磁気擾乱期間を解析除外期間としていた.しかしより正確な期間を取り除くためには,地磁気嵐期間ではなくそれに基づく電離圏擾乱期間を除去する必要がある.そこで本研究では地磁気嵐に起因する電離圏擾乱期間を定め解析除外期間とし,地震とTEC異常の関連性を統計的に調査して先行研究と比較した.
地磁気嵐に起因する電離圏擾乱期間を解析データから除外するために,まず1998~2013年に発生した294個の地磁気嵐をその大きさ(較差)とローカルタイムで分類をした.この分類クラスごとに地磁気嵐に起因する電離圏擾乱の平均的な変動を調査するために,GIM-TEC*時系列データを用いて地磁気嵐発生日の2日前から5日後のデータを抽出した.ブートストラップ法(復元抽出回数10000回)を用いて同 時刻のTEC*値の平均値を算出し,閾値(+2σ)を超える期間を除去期間として定めた.
次に地震に先行するTEC異常の統計解析を,SEAを用いて行った.本研究では,1998/05~2013/12の期間に発生した,M ≧ 6.0 ,D ≦ 40 kmの地震(87個)をSEA解析の対象とした.この解析結果から,地震発生の1~5日前に統計的に有意な正のTEC異常が発生することがわかった.しかし地震の発生後にも閾値を超える正のTEC異常が見られた.この異常は余震の影響である可能性があるので,前後30日間地震が起こっていない独立した地震(25個)についても解析した結果,地震発生後のTEC異常が取り除かれ,地震に先行するもののみが顕著に表れた.
さらに地震に対するTEC異常の前兆性を調査するため,Molchan’s Error Diagram (MED)を行った.これは解析対象期間内のTEC*の異常があった1~5日後を予測日として,予測に成功した割合を縦軸(Detection rate),解析期間に対し予測を行った割合を横軸(Alarm rate)としたもので,ランダムに予測をした場合の結果を表す直線から上に凸の曲線であるほど予測の精度がよいことを表す.MED解析の結果,先行研究で用いられてきた地磁気擾乱期間を除去するよりも,本研究で定めた電離圏擾乱期間を除去したほうがより前兆性が高まったことが分かった.