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[PPS22-24] Divnoe 隕石中のカンラン石結晶方位定向配列と化学組成に基づく形成過程に関する研究
Brachinite は主にカンラン石から構成されるエコンドライトの1グループであるが,まだあまり形成過程についての理解は進んでいない.brachinite に属する隕石は現在 30 個ほど見つかっているが,それ以外に “brachinite-like” と呼ばれる ungrouped の隕石がいくつか存在している (Day et al. 2012; Keil 2014).これらは岩石学的特徴や酸素同位体比,微量元素組成などに brachinite との関連性が見られるが,完全には一致せずに ungrouped となっているものである.これらの隕石を詳細に研究し,brachinite と比較していくことで brachinite の形成過程を含めた惑星分化過程へ理解が得られることが期待される.Divnoe は 1981 年にロシアで発見された隕石で,brachinite との関連性が指摘されているが,現在 ungrouped に分類されている (Graham 1983; Petaev et al. 1994).Divnoe は大部分がカンラン石で構成されて いるが,薄片試料を観察するとカンラン石の各粒子が特定の方位性を持つ様子が見られる.近年,diogenite 中のカン ラン石粒子の結晶方位性に着目した研究によって,その隕石が母天体において固体状態にあった時に塑性変形を受けたことが指摘されている (Tkalcec et al. 2013).このように,隕石中の鉱物結晶方位を研究することは,その隕石母 天体における火成活動,形成過程に強い制約を与えることが期待される.そこで本研究では,Divnoe 隕石のカンラン石の結晶方位定向配列 (crystallographic preferred orientation: CPO) に着目した.鉱物の CPO は鉱物が転位クリープによって変形する過程で発達する岩石組織のひとつである (大内 2013).転位クリープ は地球の下部地殻や上部マントルにおけるカンラン石の最も一般的な変形メカニズムであるため,隕石中の CPO を地球岩石中のものと比較することは,隕石母天体での形成過程を考えていく上で非常に重要である (Karato et al. 1986).本研究では,電子線後方散乱回折法 (EBSD) を用いて薄片試料の分析を行い,カンラン石の結晶方位の配列を 調べた.それと同時に ICP-MS を用いた全岩の微量元素測定を行った.以上の鉱物学と全岩化学組成,そしてカ ンラン石の結晶方位定向配列を組み合わせることで Divnoe の形成過程についての考察を行った.
Divnoe の薄片試料は同じ岩石チップから 2 枚用意した (#11 と #16).まず光学顕微鏡によって観察を行った後, 鉱物組成や元素マップのために EPMA (electron probe micro analyzer, JEOL JXA-8800) を用いた.その後,#11 の 薄片を EBSD の付いた FEG-SEM (JEOL JSM-5900LV) を用いて観察,カンラン石の結晶方位測定を行った.Divnoeの全岩化学組成は首都大学東京の ICP-MS を用いて測定した.分析条件は Shirai & Ebihara (2004) に準ずる. 観察を行った Divnoe の薄片は主にカンラン石から構成されている他,輝石も少量見られた.カンラン石はおおむね 1 × 0.5 mm で輝石はこれよりも大きく,1 × 2 mm であった.カンラン石は波状消光を示していた.EPMA による分析から,カンラン石の組成は Fo72?80 であり,ほぼ均質であった.EBSD でカンラン石の結晶方位を調べると,特に [001] (c 軸) が良い配向性をもつことが 明らかとなった.これはカンラン石の伸長方向と一致しており,先行研究でも議論されているようにマグマ中で集積した際に配向性が形成されたと考えられる (Ando et al. 2003).さらに詳細に分析,解析を行い,地球の岩石からわかっているすべり場などと比較をしていく予定 である.全岩化学組成分析から Divnoe は軽希土類元素が CI コンドライトの 100 分の 1 程度と激しく枯渇していることがわかった.親鉄元素は CI コンドライトの半分程度とわずかしか枯渇が見られなかった.鉱物粒子内の元素均一性や結晶配向性などから Divnoe は集積岩と考えられるが,集積岩としては親鉄元素に富みすぎている.このように親鉄元素に富んだ集積岩を作るには,鉄隕石をインパクトなどにより付加することが考えられるために,金属鉄組織の観察やさらなるカンラン石結晶方位解析を行っていく必要がある.
Divnoe の薄片試料は同じ岩石チップから 2 枚用意した (#11 と #16).まず光学顕微鏡によって観察を行った後, 鉱物組成や元素マップのために EPMA (electron probe micro analyzer, JEOL JXA-8800) を用いた.その後,#11 の 薄片を EBSD の付いた FEG-SEM (JEOL JSM-5900LV) を用いて観察,カンラン石の結晶方位測定を行った.Divnoeの全岩化学組成は首都大学東京の ICP-MS を用いて測定した.分析条件は Shirai & Ebihara (2004) に準ずる. 観察を行った Divnoe の薄片は主にカンラン石から構成されている他,輝石も少量見られた.カンラン石はおおむね 1 × 0.5 mm で輝石はこれよりも大きく,1 × 2 mm であった.カンラン石は波状消光を示していた.EPMA による分析から,カンラン石の組成は Fo72?80 であり,ほぼ均質であった.EBSD でカンラン石の結晶方位を調べると,特に [001] (c 軸) が良い配向性をもつことが 明らかとなった.これはカンラン石の伸長方向と一致しており,先行研究でも議論されているようにマグマ中で集積した際に配向性が形成されたと考えられる (Ando et al. 2003).さらに詳細に分析,解析を行い,地球の岩石からわかっているすべり場などと比較をしていく予定 である.全岩化学組成分析から Divnoe は軽希土類元素が CI コンドライトの 100 分の 1 程度と激しく枯渇していることがわかった.親鉄元素は CI コンドライトの半分程度とわずかしか枯渇が見られなかった.鉱物粒子内の元素均一性や結晶配向性などから Divnoe は集積岩と考えられるが,集積岩としては親鉄元素に富みすぎている.このように親鉄元素に富んだ集積岩を作るには,鉄隕石をインパクトなどにより付加することが考えられるために,金属鉄組織の観察やさらなるカンラン石結晶方位解析を行っていく必要がある.