日本地球惑星科学連合2015年大会

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[U-06] 宇宙・太陽から地球表層までのシームレスな科学の新展開

2015年5月24日(日) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*松見 豊(名古屋大学太陽地球環境研究所)、草野 完也(名古屋大学太陽地球環境研究所)、石坂 丞二(名古屋大学地球水循環研究センター)、坪木 和久(名古屋大学・地球水循環研究センター)、榎並 正樹(名古屋大学 年代測定総合研究センター)

18:15 〜 19:30

[U06-P22] 宇宙の観測による海洋生態系と大気・陸域のシームレスな研究

*石坂 丞二1 (1.名古屋大学地球水循環研究センター)

キーワード:海色リモートセンシング, 植物プランクトン, 河川, エアロゾル, 台風, 海洋生態系

海洋の一次生産者である植物プランクトンは、魚類等の生産量に影響を与えているだけではなく、炭素を初めとする物質の循環にも重要な役割を果たしている。太陽から放射された可視光は大気を通して、海中に透過し、海水中の植物プランクトンや他の物質によって吸収・散乱される。そして、その一部は海面から射出して宇宙に戻る。海面から射出された波長別の光(海色)を人工衛星から測定することによって、植物プランクトンなどの海水中の物質の質や量を推定できるようになってきている。この海色リモートセンシングデータによると、東シナ海では長江の流入量の変動によって植物プランクトン量が変動し、流入量の多い年には日本近くまで植物プランクトンの多い水が流れてきている。これは、中国から流入する長江の水に、人為的な影響で栄養塩が多く含まれているからと考えられる。また、黄海では植物プランクトン量が徐々に増加しており、またそのプランクトンの種類も変化してきている。極端に植物プランクトン濃度が高い場合は赤潮と呼ばれ、養殖などの人間生活に影響を与えることもあり、この状況も衛星で観測できるようになりつつある。2017年に日本で打ち上げ予定のGCOM-Cは、250mの高解像度でほぼ毎日観測でき、赤潮被害の軽減に利用されることが期待されている。また、韓国の静止衛星海色センサーGOCIは、毎昼間1時間ごとのデータを取得することが可能であり、台風の直後に植物プランクトン濃度が激変する様子なども観測されている。一方で、大気を通しても栄養塩が供給されて植物プランクトン濃度が増加することが知られているが、エアロゾル自体が衛星観測の誤差にもなり、さらに精度を高めるための研究も必要である。このように、宇宙からの海色リモートセンシングデータによる、海洋生態系と大気や陸域とシームレスにつなげた研究が期待される。