日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-CG 宇宙惑星科学複合領域・一般

[P-CG31] 宇宙科学・探査の将来計画と関連する機器・技術の現状と展望

2015年5月28日(木) 16:15 〜 18:00 202 (2F)

コンビーナ:*平原 聖文(名古屋大学太陽地球環境研究所)、小嶋 浩嗣(京都大学生存圏研究所)、高橋 幸弘(北海道大学・大学院理学院・宇宙理学専攻)、鈴木 睦(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究本部)、座長:小嶋 浩嗣(京都大学生存圏研究所)、高橋 幸弘(北海道大学・大学院理学院・宇宙理学専攻)

17:15 〜 17:30

[PCG31-21] プラズマ波動の多点同時計測を実現する小型プローブ

*頭師 孝拓1小嶋 浩嗣2大西 啓介1尾崎 光紀3八木谷 聡3清水 聡4 (1.京都大学 工学研究科、2.京都大学 生存圏研究所、3.金沢大学 理工研究域、4.沖電気工業 株式会社)

キーワード:プラズマ波動受信器, 多点観測, ASIC

近年、従来の一点観測による問題を克服するため、複数衛星による宇宙プラズマの多点観測を目的としたミッションが行われるようになってきている。しかし、複数衛星による多点観測は、質量・重量の大きい衛星を同時に打ち上げる必要があることから、観測点数や衛星配置において制限が生まれてしまう。そこで、そのような複数衛星による観測に代わる新たなシステムとして、我々は宇宙電磁環境モニターシステム(MSEE : Monitor System for space Electromagnetic Environments)と呼ぶプラズマ波動の多点観測システムを提案している。このシステムは、プラズマ波動観測器および無線通信機を搭載した小型のセンサープローブを複数配置することにより、多点観測を行うシステムである。
MSEEに用いるセンサープローブの実現には、従来非常に大型となっていたプラズマ波動受信器の小型化が重要となる。我々は、特定用途向け集積回路(ASIC : Application Specific Integrated Circuit)を利用することで波形捕捉型プラズマ波動受信器を小型化し、MSEEに用いるセンサープローブの開発に成功した。開発したセンサープローブは、小型プラズマ波動受信器、電磁界センサー、無線通信機、バッテリー、制御用マイクロコントローラーに加え、電界用センサーとして用いるダイポールアンテナの展開用アクチュエーターを搭載している。電磁界センサーおよびアクチュエーター以外のコンポーネントは75 mm立方の筐体に収まっており、質量は692 gである。このようなセンサープローブについて、これまでに動作試験を行ってきており、電磁界データが正しく無線により伝送できていること、宇宙で強いプラズマ波動を測定するのに十分な電界感度を有することが確認できている。
現在のMSEEにおいては、波形捕捉型のプラズマ波動受信器を搭載しているが、波形捕捉型受信器は位相を含んだデータが得られる反面、データ量が多すぎるために連続観測が不可能であるという欠点を持っている。そこで我々は、データ量が少なく連続観測に適しているスペクトル型プラズマ波動受信器についてその小型化を行い、将来的にセンサープローブに両方を搭載することを計画している。小型スペクトル型プラズマ波動受信器の開発に当たり、ASICを利用することによる小型化のみならず、ASICの利点を活かすことにより従来のスペクトル受信器が抱えていた時間・周波数分解能のトレードオフを解消する、新型スペクトル受信器を提案する。新型スペクトル受信器はアナログ回路による処理とディジタル信号処理を組み合わせた形となっており、アナログ回路をASICにより開発し、ディジタル信号処理をCPUまたはFPGAで行うことを想定している。現在までに、所望の動作を実現するアナログ回路チップの設計・開発に成功している。
本発表においては、開発を行ったセンサープローブの詳細な仕様・性能に加え、新型スペクトル受信器について発表を行う。